マドレーヌ文化(読み)マドレーヌブンカ

デジタル大辞泉 「マドレーヌ文化」の意味・読み・例文・類語

マドレーヌ‐ぶんか〔‐ブンクワ〕【マドレーヌ文化】

ヨーロッパ後期旧石器時代最後の文化。フランス、ドルドーニュ地方のマドレーヌMadeleine岩陰遺跡にちなんで命名。主としてフランス・スペインに分布し、ラスコーアルタミラなどの洞窟壁画が有名。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「マドレーヌ文化」の意味・わかりやすい解説

マドレーヌ文化 (マドレーヌぶんか)

フランス,ドルドーニュ地方のマドレーヌMadeleine岩陰を標準遺跡とする後期旧石器時代最後の文化。マグダレニアン文化ともいう。プラカールPlacard洞窟,マドレーヌ岩陰,ビルパンVillepin岩陰の層位をもとに定義されている。全期にわたる遺物が存在したのは,シャンスラード人を伴出したレイモンドン洞窟だけであるが,19世紀末の発掘は層位を把握しきっていないからである。1万7000年前ころから1万2000年前ころまで存在した。主としてフランス,スペインに分布をみるが,イギリス(クレスウェルCreswell文化),ベルギー(チョンゲルTjonger文化),南西ドイツおよびポーランドにも同系統の文化が知られる。6期に細分され,各期を定義する遺物は骨角器である。Ⅰ期~Ⅲ期は骨製尖頭器,Ⅳ期~Ⅵ期は骨製銛の形態変化に特徴がある。石器ではⅠ期とⅡ期の差が大きく,Ⅰ期はバドゥグールBadegoule文化の名で区別されることもある。Ⅱ期以後は石器組成の差を同じ文化の変異ととらえている。彫器が搔器に比して多く,背付細石刃がⅡ期以後常に存在する。美術品も多く知られ,Ⅲ期~Ⅳ期に写実性の強い美術様式が確立され,V期にはその写実性が後退し始める。フォン・ド・ゴーム,コンバレルCombarelles,ニオーアルタミラの諸洞窟の壁画はとくに有名である。トナカイの骨が圧倒的に多く出土するが,壁画に多くみられるバイソンの骨が発掘されることはまれである。セーヌ河畔のパンスバン,エティオル両遺跡は住居址群で知られる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「マドレーヌ文化」の意味・わかりやすい解説

マドレーヌ文化【マドレーヌぶんか】

ヨーロッパ後期旧石器時代の最終期で,フランス南西部ドルドーニュ県のマドレーヌMadeleine岩陰を標準遺跡とする。ウルム氷期の末期にあたり,酷寒のためおもに洞窟住居が営まれた。遺跡は,ヨーロッパ西部,特にフランス南西部に多い。生活は狩猟採集が主で,骨角器の発達が著しく,石器は石刃系のものが中心。フランス南西部,スペイン北部の遺跡にはこの期の洞窟美術が多く残っている。
→関連項目アジール文化フォン・ド・ゴーム

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マドレーヌ文化」の意味・わかりやすい解説

マドレーヌ文化
まどれーぬぶんか
Magdalénien

フランス、ドルドーニュ地方のマドレーヌMadeleine岩陰(いわかげ)を標準遺跡とする後期旧石器時代最後の文化。全期にわたって遺物が存在したのはシャンスラード人を伴出したレイモンドン洞窟(どうくつ)であるが、19世紀末に行われた発掘は、層位を把握しきっていないので、前期はプラカール洞窟の遺物をもとに定義されている。1万7000年前ごろから1万2000年前ごろに存在し、主としてフランス、スペインに分布するが、イギリス、南西ドイツ、ポーランドにも同系統の文化があることが知られている。6期に細分され、I~Ⅲ期は骨製尖頭器(せんとうき)の、Ⅳ~Ⅵ期は骨製銛(もり)の形態変化に特色がある。石器ではI期とⅡ期の差が大きく、I期はバドゥグール文化の名で区別されることもある。美術品にも顕著なものが多く、リアリズムの様相が濃い美術様式が確立され、V期にはその写実性が後退し始めている。トナカイが狩猟の対象になったことが多く、パリ南東郊のパンスバン遺跡はことに有名である。

[山中一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 世界史小辞典 改訂新版 「マドレーヌ文化」の解説

マドレーヌ文化(マドレーヌぶんか)
Madeleine

氷河時代最後のヴュルム氷期の第2期後半の旧石器時代末期の文化。フランス,ドルドーニュ県マドレーヌ岩陰遺跡にちなむ。この文化の中心はフランスであるが,他にスペイン,イギリス,ベルギー,ドイツ,オーストリア,チェコ,スロヴァキア,ハンガリー,イタリア,スイス,ポーランドにも及ぶ。ビュラン(刻刀)などフリント製石刃(せきじん)石器文化。骨角器には多くの種類があり,幾何学文や動物文をつけたものがある。フランコ・カンタブリア芸術といわれる南西フランスから北スペイン洞窟絵画は主としてこの文化に属し,クロマニョン人が担い手であった。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マドレーヌ文化」の意味・わかりやすい解説

マドレーヌ文化
マドレーヌぶんか
Madeleine culture

西ヨーロッパ,特にフランスを中心に広がっている後期旧石器時代末の文化。標準遺跡はドルドーニュ地方のラ・マドレーヌ。この時期には,地方色豊かな文化が各地に生れたが,これもその一つ。同時代のヨーロッパの文化と同じく,石刃を主体にした文化であるが,多くの特色ある骨角器もあり,特に銛は精巧な作りのものが多く,時期によって多様な変化をとげている。生活はこれらの道具を使っての狩猟,漁労が中心になっていたものと考えられる。また西ヨーロッパに残されている洞窟芸術は,その多くがこの文化期に作られた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「マドレーヌ文化」の解説

マドレーヌ文化
マドレーヌぶんか
Madeleine

ヨーロッパ旧石器時代末期の文化。マグダレニアン文化ともいう
1万7000年前〜1万2000年前ころ。クロマニョン人によって形成され,骨角器の発達が著しく,トナカイ・野牛などを描いたすぐれた洞窟 (どうくつ) 絵画を残している。遺跡はフランス南西部に特に多いが,ヨーロッパ全域に及んでいる。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

今日のキーワード

大臣政務官

各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...

大臣政務官の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android