改訂新版 世界大百科事典 「ミセバヤ」の意味・わかりやすい解説
ミセバヤ
October daphne
October plant
Sedum sieboldii Sweet
ベンケイソウ科マンネングサ属Sedumの多年生多肉植物で,同属中最も均整のとれた美しい種類である。野生品は小豆島のみで知られる。茎は十分大きくなると,しだれて長さ10~40cmになる。葉は3輪生し,やや扇形で長さ約2.5cm,数個の鋸歯をもつ。山草類では珍しく花期が遅く,10~11月に咲く。茎の先端に赤桃色の花を球状に密生する。近縁種には青森,秋田の山地に生え,大型で葉がやや薄く,花が白色のツガルミセバヤS.tsugaruense Hara,北海道の日高・十勝地方に分布し,葉が対生で,地下に走出枝を持ち,9月に開花して,花序がやや半球状で赤桃色のヒダカミセバヤS.cauticolum Praeger,同じく赤桃色の花を咲かせ,北海道とサハリンに産し,冬も地上茎が残り,葉は披針形~卵円形で鋸歯のないカラフトミセバヤS.pluricaule Kudoがある。外国のミセバヤには数種あり,ヒマラヤミセバヤS.ewersii Ledeb.はヒマラヤからアルタイ山脈に分布し,茎が木化,葉は対生し,卵形~倒卵円形で,花は赤桃色。ヨーロッパには葉が互生し,根茎がほとんどなく地上をはうヨーロッパミセバヤS.anacampseros L.がある。陽光下に鉢植えで栽培する。株分けか挿木で殖やすが,実生も可能である。ミセバヤは18世紀末に出版された柳原紀光の《閑窓自語》によると,吉野山の法師が奥山で見つけ,和歌の師に贈ったが,その添えた詞の〈君にみせばや〉から命名されたという。
執筆者:湯浅 浩史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報