吉野山(読み)よしのやま

精選版 日本国語大辞典 「吉野山」の意味・読み・例文・類語

よしの‐やま【吉野山】

[一] 奈良県中央部の山。吉野川のほとりから大峰山に向けて高まる標高三〇〇~七〇〇メートルの尾根をいう。吉野神宮金峯山寺蔵王堂吉野宮跡吉水神社などの史跡があり、桜の名所として知られる。吉野熊野国立公園の一中心。
[二] 義経千本桜の吉野山をもとに作られた所作事の一般的な通称。

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デジタル大辞泉 「吉野山」の意味・読み・例文・類語

よしの‐やま【吉野山】

奈良県中部、大峰山脈北端の尾根の称。南朝所在地で史跡に富み、また金峰山寺きんぶせんじ(蔵王堂)があり、修験道根拠地。桜の名所で、平安中期から寄進により植えられた。平成16年(2004)「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界遺産文化遺産)に登録された。

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日本歴史地名大系 「吉野山」の解説

吉野山
よしのやま

大峰山脈の北端をなし、吉野川の左岸に位置する。青根あおねヶ峯(八五七・九メートル)から西北に続く尾根の総称。金峯山修験本宗の総本山金峯山きんぶせん寺の蔵王ざおう堂をはじめ、源義経や南朝の史跡で知られる。桜の名所としても有名で、下から順に下千本しものせんぼん・中千本・上千本、さらに奥千本という。吉野熊野国立公園に属する(→金峯山吉野町。吉野山の名の文献上の初見は、「旧事本紀」に「茅渟県大陶祇女、随糸尋人、入吉野山、留三諸山」とある。

〔吉野城跡〕

左曾さそ泉湯せんとうの二谷に挟まれ、馬の背状をなす吉野山の地形を利用し、この天険と金峯山寺一帯の寺社を城郭化した討幕軍の根拠地。

「太平記」巻六をはじめ、古老の伝承、現地地形や当時の遺構を大観すると、北は標高約一六〇メートルの吉野川河岸から南は標高八〇〇メートルの山頂愛染あいぜんまで約一〇キロにわたる山城が吉野城で、中間にある蔵王堂が大塔宮の大本陣となった。吉野川を隔てて南岸にそばだつ六田むだいちさか丹治たんじ飯貝いいがいの城塁はいずれも山頂に削平された台地があり、削崖された数メートルから一〇メートル幅の帯状土壇が巡らされて「柳の渡」と「桜の渡」を守護する格好の第一線陣地である。しかもそれぞれの山頂背後に峰伝いに吉野の本城への通路があり、本陣に直結している。

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改訂新版 世界大百科事典 「吉野山」の意味・わかりやすい解説

吉野山 (よしのやま)

奈良県吉野郡吉野町の山。大峰山脈の北端で,金峰山(きんぷせん)(青根ヶ峰)から北西方向につらなる約8kmの山稜部分を称する。大峰山の入口で,金峰山修験本宗の総本山金峯山寺(蔵王堂)があり,また源義経や南朝ゆかりの史跡や伝承地に富む。役行者(えんのぎようじや)によって蔵王権現の神木とされたという桜は,参詣者などの献木により一山を埋め,吉野神宮付近の下千本,如意輪寺付近の中千本,吉野水分(みくまり)神社付近の上千本,西行庵付近の奥千本として有名。歌枕でもあり,吉野の桜を詠む歌は《古今集》に始まるが,平安中期まではむしろ山岳信仰と結びついて雪の山として詠まれることが多かった。吉野の桜を賞した人々は西行をはじめ多数知られ,蔵王堂近くにあった金輪王(きんりんのう)寺を行宮(あんぐう)とした後醍醐天皇は〈ここにても雲居の桜咲きにけりただかりそめの宿と思ふに〉(《新葉集》巻二)と詠じている。国の史跡,名勝に指定されており,吉野熊野国立公園の北端をなし,近鉄吉野線吉野駅から吉野山駅までケーブルが通じる。
吉野
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百科事典マイペディア 「吉野山」の意味・わかりやすい解説

吉野山【よしのやま】

奈良県吉野町南部の山(史跡・名勝)。大峰山の北端が吉野川に臨む尾根で,標高350m内外。後醍醐天皇以後4代にわたる南朝の拠点となった地で,その史跡が多く,桜の名所でもある。吉野行宮跡,金峯山(きんぷせん)寺,如意輪寺,竹林院,後醍醐天皇陵吉野神宮,吉水神社,吉野水分(みくまり)神社などがあり,桜は下,中,上,奥の4ヵ所に分かれて密集し,いずれも一目千本と呼ばれ壮観。吉野熊野国立公園に属し,近鉄吉野線,ロープウェーが通じる。2004年紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産条約の文化遺産リストに登録された。
→関連項目後亀山天皇山伏吉野[町]

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国指定史跡ガイド 「吉野山」の解説

よしのやま【吉野山】


奈良県吉野郡吉野町吉野山にある山地。大峰山脈の北端に位置する吉野山は、吉野川左岸の青根ケ峰(標高857.9m)から西北に続く尾根の総称。面積は約33万m2。桜の名所として知られ、樹数の多さ、高低差による花期の相違などから多くの観光客が訪れる。遺跡としては吉野宮、南北朝時代の吉野城、修験道の中心金峯山寺(きんぷせんじ)などがあり、古代から信仰・政治上の施設が多く営まれたことから、1924年(大正13)に国の史跡および名勝に指定された。中世城郭としての吉野城は、後醍醐(ごだいご)天皇の皇子護良(もりよし)親王の吉野挙兵以来、金峯山寺の城郭化が進められ、本陣の蔵王堂周辺の大橋には空堀、勝手社前には木戸が設けられ、後方の高城山は詰め城になっていたという。近世になると1594年(文禄3)の豊臣秀吉の花見以降、松尾芭蕉、本居宣長(もとおりのりなが)などの文人墨客をはじめ、一般人の吉野詣が盛んになった。周辺の飯貝、丹治、六田(むだ)などに小規模な城郭遺構が残されているが、吉野城の支城と推定されている。2004年(平成16)には「紀伊山地の霊場と参詣道」として、世界遺産に登録された。近畿日本鉄道吉野線吉野駅からロープウェイ「吉野山」下車、蔵王堂まで徒歩約10分、高城山まで徒歩約1時間。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉野山」の意味・わかりやすい解説

吉野山
よしのやま

奈良県中部、大峰(おおみね)山脈北端の青根ヶ峰付近から吉野川左岸に至る尾根をさす。しかし、一般にはロープウェー吉野山駅付近から奥ノ千本あたりの尾根をさし、国の史跡・名勝に指定されている。修験道(しゅげんどう)の聖地、また源義経(よしつね)や南朝の史跡の地として名高く、吉野熊野国立公園の北端部を占める。金峯山(きんぷせん)修験本宗総本山の金峯山寺をはじめ、吉野神宮、村上義光(むらかみよしてる)墓、吉野朝宮跡、吉水(よしみず)神社、勝手(かって)神社、大日寺、如意輪寺、後醍醐(ごだいご)天皇塔尾陵(とうのおりょう)、吉野水分(みくまり)神社、金峯神社、西行庵(さいぎょうあん)などの寺社、史跡がある。吉野山は桜の名所としても知られる。平安中期以降、蔵王権現(ざおうごんげん)の神木として桜を寄進する者が多く、現在では十数万本を数える。下(しも)ノ千本、中ノ千本、上(かみ)ノ千本、奥ノ千本といい、4月中旬、吉野山駅付近の下ノ千本から開花していく。

[菊地一郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吉野山」の意味・わかりやすい解説

吉野山
よしのやま

奈良県中部,吉野町南部にある山で,大峰山脈の北端が吉野川南岸に延びる長さ約 8kmの山稜の総称。全山が史跡・名勝に指定されている。後醍醐天皇以下4代にわたり南朝の所在地となったところで,南朝ゆかりの地,桜の名所として有名。大峯修験宗総本山金峯山寺 (本堂,二王門は国宝) をはじめ吉野行宮跡,後醍醐天皇陵,吉野神宮,吉水神社,吉野水分 (みくまり) 神社,如意輪堂,竹林院,村上義光の墓,西行庵などがある。サクラは下,中,上,奥の4ヵ所に分れて密集し,「一目千本」といわれる。吉野熊野国立公園に属する。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「吉野山」の解説

よしのやま【吉野山】

京都の日本酒。酒名は、丹後半島の中央にある吉野山に由来。主に丹後産米を使用して丹後杜氏が仕込む。精米歩合38%以下の大吟醸酒のほか、純米酒、普通酒がある。原料米は山田錦、五百万石。仕込み水は蔵元裏の奥山の清水。蔵元の「吉岡酒造場」は寛政元年(1789)創業。所在地は京丹後市弥栄町溝谷。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「吉野山」の解説

吉野山
(通称)
よしのやま

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
幾菊蝶初音道行
初演
文化5.5(江戸・中村座)

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事典・日本の観光資源 「吉野山」の解説

吉野山

(奈良県吉野郡吉野町)
さくら名所100選」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の吉野山の言及

【大和国】より

…王朝貴族の長谷寺・金峰(きんぷ)詣や南都巡礼などにあやかって民衆の社寺詣などが漸次さかんになったためでもある。
[南北大和の対立]
 1331年(元弘1)討幕を目ざした後醍醐天皇の南都遷幸によって元弘の乱が始まり,南都に隣接する山城国笠置山(かさぎやま)落城や大塔宮護良(もりよし)親王の吉野山挙兵などが知られる。翌々33年天皇は討幕に成功し建武新政を始めたが,足利尊氏の反乱に遭い,36年(延元1∥建武3)吉野山に遷幸した。…

※「吉野山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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