ミツガシワ(英語表記)marsh trefoil
bogbean
Menyanthes trifoliata L.

改訂新版 世界大百科事典 「ミツガシワ」の意味・わかりやすい解説

ミツガシワ
marsh trefoil
bogbean
Menyanthes trifoliata L.

湿地や池沼の水辺や水中に生育するミツガシワ科多年草。長い葉柄の先に,カシワに似た小葉を3枚集まってつけるところから和名がついた。根茎は太く長く,水中を横走し,根を泥の中におろす。3出複葉の葉柄の基部には鞘があり,小葉は楕円形で,質はやや厚く,鈍頭で無柄。5~8月,葉より長い20~40cmの花柄を出し,異花柱花をつける。萼は5深裂。白色の花冠はときに淡紅彩があり,径1~1.5cm,5裂し,裂片内面に白毛を密生する。蒴果(さくか)は球形で,種子は扁球形。種子の化石は,日本では上部漸新世以降の地層から発見される。北海道九州に分布し,周極植物として北半球の北緯70°から35°付近まで広く分布する。乾燥葉は漢方で睡菜葉(すいさいよう)といい,苦味健胃薬として用いられ,ゲンチアニンgentianine,メンチアホリンmenthiafolinを含む。根は睡菜根(すいさいこん)と呼び,ロガニンloganin,メンチアホリンを含み,健胃薬のほかに高血圧に効く。

 ミツガシワ(ミツガシワ属),イワイチョウ(イワイチョウ属),アサザ(アサザ属)などは,昔はリンドウ科のミツガシワ亜科としてまとめられていた。しかし葉が互生し,花冠裂片は弁状に配列し,茎の維管束並立維管束であることにより,現在では独立の科ミツガシワ科Menyanthaceaeとして認められている。世界に5属約40種を産し,日本では3属5種が自生する。水生または湿地生の多年草または一・二年草で,ロガニンやゲンチアニンなどの苦味成分を含み,薬用植物として用いられるものが多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミツガシワ」の意味・わかりやすい解説

ミツガシワ
みつがしわ / 三柏
buckbean
[学] Menyanthes trifoliata L.

ミツガシワ科(APG分類:ミツガシワ科)の多年生水草。1属1種。地下茎は太く、横にはう。葉は3小葉からなり、多肉質で根生し、長い柄がある。4~8月、高さ20~40センチメートルの花茎に白色花を総状につける。花冠は深く5裂し、内面に毛がある。蒴果(さくか)は球形。種子は丸く、やや扁平(へんぺい)で光沢があり、水に浮かぶ。種子の化石は、日本では新第三紀鮮新世や第四紀完新世(沖積世)の地層から多く発見されている。山地から亜高山の水中に生え、北海道から九州、および北半球の周北極地方に広く分布する。名は、葉をカシワの葉に見立て、三葉のカシワの意味である。

 中国では葉を乾燥したものを睡菜(すいさい)または瞑菜(めいさい)と称し、睡眠薬とした。苦味配糖体メリアチンを含み、古来から健胃、解熱、駆虫などの薬に用いてきた。

[高橋秀男 2021年11月17日]


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百科事典マイペディア 「ミツガシワ」の意味・わかりやすい解説

ミツガシワ

ミツガシワ科の多年草。北海道,本州,九州の山地の沼や池のはたにはえ,北半球の亜寒帯に分布する。根茎は太く,根出葉は3小葉からなり,小葉は卵形で厚くつやがある。夏,高さ30cm内外の花茎を出し,白花を総状に開く。花冠は径1〜1.5cm,5裂し,裂片の内面には白毛が密生する。

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世界大百科事典(旧版)内のミツガシワの言及

【湿原】より

…池塘(ちとう)pond(ブレンケともいう。高層湿原にできる池)には,ヒツジグサ,オゼコウホネなどの浮葉植物,ミヤマホタルイなどの抽水植物,マット状に張り出したミツガシワが生育し,浮島がみられたりする。 アイルランドなどの極端に湿潤な海洋性気候下では,土壌は塩基が溶脱されて酸性となり,鉱物質基盤の上にミズゴケが直接生育できるため,ドームは形成されずに地形なりにミズゴケ類が平坦に広がったブランケット湿原blanket bogが発達する。…

※「ミツガシワ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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