くじら座のο(オミクロン)星の固有名。長周期脈動変光星(ミラ型変光星)を代表する恒星。1596年ファブリキウスによりこの星の変光が発見され、ラテン語で「不思議なもの」の意味でミラと名づけられた。最初に発見された変光星として有名。脈動周期332日で、実視等級が2.0等から10.1等まで変化する。色指数(B-V)もプラス1.42等からプラス1.61等まで変化する(天体の色を表す指標の一つで、青色B等級から実視V等級を引いたもの)。Kバンド(赤外波長帯2.2マイクロメートル)で観測した場合はマイナス2.4等と明るい。スペクトル型は平均してM7eだがM5e~M9eと変化する。進化の最終段階にある中小質量のAGB星(漸近巨星分枝星)。
2000年の天球上の位置は、赤経2時19分21秒、赤緯マイナス2度58.7分で、毎年10月25日ごろ真夜中に南中する。固有運動は240ミリ秒角/年でほぼ南の方角に動く。視差は7.8ミリ秒角で地球からの距離はおよそ420光年。星の角直経が測定されており光球の半径は太陽の500倍程度。表面温度は2350K(ケルビン)。光度は太陽の6500倍程度と推定されている。スペクトルにはつねに輝線が観測される。ミラの外層大気の形は球状ではなく楕円(だえん)体状または非対称形状を示す。観測する波長によって星の大きさは違って見える。またこの星はガスを放出しており、その量は毎年太陽質量の1000万分の3程度と推定されている。ミラは多量のガスやダスト(固体微粒子)に取り巻かれている。ガスは分子に富んでいて、電波や赤外線で一酸化炭素CO、水H2O、一酸化ケイ素SiOなどの分子スペクトルが観測されており、電波でSiOメーザー(星の外周圏の分子が熱平衡状態になく、エネルギーが高い準位にある分子数が低い準位にある分子数より多いと、誘導放出が加速度的に増幅され強力なマイクロ波が放射される)が観測されている。ダストは光球半径の2~3倍よりも外でつくられている。
ミラは実視連星系をなしており、ミラが暗くなった1923年にすぐ近くに高温の伴星ミラBが発見された。伴星は実視等級が10等~12等でスペクトル型Beの変化の激しい変光星である。主星ミラAの大気から高速で外に向かって吹き出す星風を受け活動的なのであろう。伴星も星風を出しており、主星からの星風と衝突している。伴星は公転により主星からの角距離が0.91秒角(1923)、0.61秒角(1990)と変化している。公転周期は400年以上とされる。主星ミラAの外層大気の形が楕円体状または非対称形状である原因は、近くに存在している伴星ミラBとの相互作用の結果であると考えられている。
[山崎篤磨]
『パトリック・ムーア著、岡崎彰・吉岡一男訳『星・物語――100億光年のかなたから』(1992・丸善)』▽『藤井旭著『秋の星座と星ものがたり――秋の星座と神話を楽しもう』(1993・誠文堂新光社)』
くじら座のο星。ラテン語のステラ・ミラstella mira(不思議な星の意)の,ミラだけが残った名である。この星は,約331日ほどの周期で3等程度から9等程度に変光している(周期,光度ともその振幅に変動がある)長周期変光星である。この変光は,1596年,ドイツのD.ファブリチウスによって発見された。半径の20%ほどが変光に伴って脈動している。最大直径は,太陽の500倍近いと考えられている。概略位置は赤経2h19m,赤緯-2°59′。スペクトル型はM7。距離は140光年。午後9時の南中は12月中旬。
執筆者:山田 陽志郎
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…ユリ科の宿根多年草。別名フタモジ,古名をミラ,コミラともいう。東部アジアの原産といわれ,東洋的な野菜で欧米での栽培はない。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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