日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムコ多糖」の意味・わかりやすい解説
ムコ多糖
むこたとう
mucopolysaccharide
糖のヒドロキシ基がアミノ基で置換された構造をもつアミノ糖(グルコサミンやガラクトサミンなどのヘキソサミン)を有する多糖の総称であり、グリコサミノグリカンとよばれることが多い。その多くはウロン酸や硫酸などの酸性基をもち、これらは酸性ムコ多糖とよばれる。ムコ多糖は、その糖鎖が繰り返し構造をもち、重合度が約40以上で比較的長く伸び、きわめて親水性に富むのが特徴である。代表的なものとして、軟骨の主成分であるコンドロイチン硫酸をはじめ、皮膚の結合組織中や臍帯(さいたい)(へその緒)、目の硝子体(しょうしたい)などに含まれるヒアルロン酸、血液凝固阻止物質のヘパリンのほか、ムコ多糖症に関与するデルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)、ヘパラン硫酸(動物細胞にあり、タンパク質と相互作用を示す)、ケラタン硫酸(角膜や軟骨などに存在)などが知られる。
[村松 喬]
なお、ムコ多糖症はきわめてまれであるが重篤な遺伝性疾患で、ムコ多糖の代謝をつかさどる酵素が先天的に欠損している先天性代謝異常をいう。ハーラーHurler症候群(ムコ多糖症のうちもっとも典型的な疾患であり、乳児期から強い身体奇形・知能障害がある。視力障害なども伴う)やハンターHunter症候群(骨格障害などハーラー症候群に類似するが、角膜混濁はない)などが含まれる。
[山口規容子]
『安元健編『水産学シリーズ79 海洋微生物の生物活性物質』(1990・恒星社厚生閣)』▽『石井淳監修、片山茂裕・河津捷二編『イラスト 内分泌・代謝内科』(2002・文光堂)』