改訂新版 世界大百科事典 「ムコ多糖」の意味・わかりやすい解説
ムコ多糖 (ムコたとう)
mucopolysaccharide
アミノ糖を有する多糖の総称。ウロン酸,硫酸といった酸性基をもつものが多く,これらは酸性ムコ多糖とも呼ばれる。代表的なムコ多糖はヒアルロン酸hyaluronic acid,コンドロイチン硫酸,そしてケラタン硫酸keratan sulfateであり,これらは細胞間の基質の重要成分となっている。またいま一つの代表例であるヘパリンには抗血液凝固作用がある。ムコ多糖の大きな特徴は極度に親水性に富み,分子が大きく伸び広がっていることである。へその緒が弾力性に富み,もつれないのはヒアルロン酸に富むためであるといわれる。また目の硝子体の透明な構造にもヒアルロン酸が大きく寄与している。いっぽうケラタン硫酸は角膜の重要な構成成分となっている。ムコ多糖の代謝をつかさどる酵素の遺伝的欠損に基づく病気はムコ多糖症と総称されるが,いずれも重篤な症候を示す。
執筆者:村松 喬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報