日本大百科全書(ニッポニカ) 「メバル」の意味・わかりやすい解説
メバル
めばる / 目張
Japanese stingfish
硬骨魚綱カサゴ目フサカサゴ科Scorpaenidaeに属する海水魚。メバル種群Sebastes inermis species complexの総称。メバルの名は、目が頭に比べて著しく大きいことを意味する。目は吻(ふん)より長く、その前下方に鋭い2本の棘(とげ)がある。背びれ棘(きょく)は13本。尾びれの後縁は丸いか、または上下にまっすぐである。体に5、6条の暗色の不明瞭(ふめいりょう)な横帯がある。従来は、すむ場所によって地色が赤、黒、白色などに変化し、それぞれアカメバル、クロメバル、シロメバルとよばれ、同一種の色彩変異とされていた。しかし21世紀になり、DNA解析の結果、それぞれは別種であることが判明した。これら3種は体色のほかに胸びれ鰭条(きじょう)数によって区別するが、中間のものもいて外見からは識別がむずかしい。近縁種にウスメバル、エゾメバル、ハツメ、トゴットメバル、ヤナギメバルなどがあり、メバル類として知られているが、このメバル種群はもっとも普通の種類で、釣り人の好対象魚となっている。
[尼岡邦夫]
アカメバル
和名アカメバル〔赤目張〕Sebastes inermisは、北海道南部から九州までの日本各地と朝鮮半島南部に分布する。体色は赤く、臀(しり)びれと腹びれも赤いことが多い。胸びれは長くて通常肛門(こうもん)に達し、その条数は普通15本。おもに浅海の藻場(もば)に生息する。仔魚(しぎょ)を産む卵胎生魚である。全長26センチメートルほどになる。釣り、底刺網(そこさしあみ)、延縄(はえなわ)、定置網などで漁獲される。釣りの対象魚で磯(いそ)釣り、船釣り、防波堤釣りなど愛好家が多い。煮つけ、塩焼き、鍋物(なべもの)など総菜材料として重宝がられている。
[尼岡邦夫]
クロメバル
和名クロメバル〔黒目張〕Sebastes ventricosusは、岩手県と石川県から九州、朝鮮半島南部に分布する。体色は黒っぽく、生きているときは、背びれの下の体の部分は青緑色がかっている。臀びれと腹びれは黒色。胸びれ条数は16本のものが多い。外海に開けた浅海の岩礁域に多く生息し、内湾には少ない。卵胎生魚である。全長30センチメートルほどになる。アカメバルと同様に総菜魚として利用される。
[尼岡邦夫]
シロメバル
和名シロメバル〔白目張〕Sebastes cheniは、岩手県と秋田県から九州までの各地、朝鮮半島南部に分布する。キンメバルとよばれることもある。体色は白色から淡い茶色で、臀びれと腹びれは茶色のものが多い。胸びれ鰭条数は普通17本。浅海の岩礁域に多く見られ、アカメバルやクロメバルに比べてもっとも普通に見られる。卵胎生魚である。全長32センチメートルほどになる。他の2種と同様に利用する。
[尼岡邦夫]
釣り
船、磯、堤防などから釣ることが可能で、昼釣りと夜釣りで楽しめる。地域差もあるが12月ごろから翌年3月ごろがとくにおもしろい。船釣りは細いハリスで胴付き三本鉤(ばり)、海エビの小さいものをつけ、オモリ20号前後でねらう。餌(えさ)にアオイソメを使うこともある。また、寄せ餌の籠(かご)に網を入れた片天ビンで、サビキ仕掛けの竿(さお)釣りもある。
生きたヒコイワシを胴付き二本鉤にかけ、オモリ10~15号で竿釣りすることもある。竿は軟調がよく、十分に食い込むのを待って向こう合わせで釣るのがこつである。
防波堤や磯での釣りには、餌にイソメ、モエビを使うウキ釣りやフカセ釣りなどがあり、多少寄せ餌をまくと効果がある。夜は泳層も高くなるので、乗合船や磯、堤防で日没から夜半まで釣る。潮が薄濁りで、海の静かな日が好条件である。
[松田年雄]
食品
白身の魚。晩春から夏が旬(しゅん)である。煮物が一般的で、煮つけにすると身がころりと外れる。新鮮なものは塩焼き、椀種(わんだね)にする。照焼き、から揚げもよい。
[河野友美]
『松尾義彦著『メバル釣り専科』(1994・広済堂出版)』