モエビ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モエビ」の意味・わかりやすい解説

モエビ

(1) Metapenaeus burkenroadi 軟甲綱十脚目クルマエビ科 Penaeidae。体長 12cm。甲は淡青緑色または淡黄色で,尾端が緑色。甲,腹部に不規則な浅いへこみがあり,フェルト状の毛がある。額角は水平に突出し,上縁にのみ 6~8棘をもつ。尾節にはとげがない。体長 3cmぐらいまでは干潟の砂泥底にすみ,その後アマモの群落中で生活する。産卵期は 6~9月で,泳ぎながら放卵する。東京湾伊勢湾瀬戸内海有明海のほかインドからも報告されている。打瀬網やえび漕網で漁獲し,食用のほか釣餌とする。
(2) hippolytid shrimp 軟甲綱十脚目モエビ科 Hippolytidaeに属する種類の総称。体長 2~5cmで,ほとんどの種が内湾藻場に生息する。体形は一般に細長く,体色は淡黄褐色から緑褐色で,アマモやアジモの葉の間ではそれぞれ擬態保護色となっている。第1胸脚,第2胸脚の腕節は多数の節に細分されている。アシナガモエビ Heptacarpus rectirostrisコシマガリモエビ H. geniculatus,アカシマモエビ Hippolysmata vittata,ホソモエビ Latreutes acicularis,ヒラツノモエビ L. planirostris などがごく普通に見られる。色彩が華やかなアカシマモエビやサンゴモエビ Saron neglectus,イソギンチャクモエビ Thor amboinensis などはペットとしても人気がある。(→甲殻類十脚類節足動物軟甲類

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改訂新版 世界大百科事典 「モエビ」の意味・わかりやすい解説

モエビ (藻蝦)
Metapenaeus moyebi

十脚目クルマエビ科の甲殻類。食用エビで,内湾や内海の水深20m内外の砂泥底のアマモ帯に生息するのでこの名がある。日本からインド洋まで分布し,日本では三河湾,伊勢湾,瀬戸内海,有明海,八代海などに多産する。打瀬(うたせ)網,待網,流し網,蝦こぎ網などで,他のエビ類とともに混獲される。かつては東京湾でも多かったが,近年はごく少ない。漁期は6~9月。体長13cmに達し,雌のほうが大きい。生きているときは淡青緑色ないし淡黄褐色で,尾肢(びし)の先端が緑色。甲羅大部分がなめらかであるが,頭胸部,腹部にところどころ不規則な浅いくぼみがあり,その部分に短毛がはえている。額角(がつかく)はまっすぐで,上縁に6~8本のとげがあるが,下縁にはない。産卵期は7~8月。夏に孵化(ふか)した個体は翌年の産卵期前ころになると雌雄による体長差が現れる。産卵期後の10月ころになっても大型個体が漁獲されることがあるが,その後はその年に孵化した稚エビばかりで,成体は得られない。雑食性。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モエビ」の意味・わかりやすい解説

モエビ
もえび / 藻蝦
middle shrimp
[学] Metapenaeus intermedius

節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目クルマエビ科に属するエビ。食用エビで、体長12センチメートルに達する。東京湾からインドまで分布し、内湾の砂泥底に生息するアマモの群落中に多い。甲面のところどころに不規則なへこみがあり、粗毛が生えている。額角(がっかく)は水平に突出し、上縁にのみ6~8歯ある。尾節(びせつ)に棘(とげ)はない。生時は淡青緑色ないし淡黄灰色で、尾端が緑色を帯びる。打瀬(うたせ)網やえび漕(こ)ぎ網で漁獲し、食用のほか釣り餌(え)にもする。

 なお、コエビ群に属するモエビ科のエビ類も一般にモエビとよばれる。いずれも体長5センチメートルほどまでの小形種であるが、浅海の海藻やアマモなどの海草の間に多く、魚類の餌として重要である。

[武田正倫]


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百科事典マイペディア 「モエビ」の意味・わかりやすい解説

モエビ

甲殻類クルマエビ科のエビ。体長13cmぐらいに達する。体色は淡黄褐色〜淡青緑色。額角には上縁に6〜8個のとげがあり,額角下縁や尾節側縁にはとげはない。東京湾以西インド洋までの内湾の20mぐらいの浅海の砂泥底にすみ,アマモなどのはえているところに多い。産卵期は7〜8月。食用。

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