メリスマ

デジタル大辞泉 「メリスマ」の意味・読み・例文・類語

メリスマ(〈ギリシャ〉melisma)

歌詞の一音節に多数音符を当てて装飾的に歌う声楽様式

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精選版 日本国語大辞典 「メリスマ」の意味・読み・例文・類語

メリスマ

  1. 〘 名詞 〙 ( [ギリシア語] melisma ) グレゴリオ聖歌など中世の声楽曲で、歌詞の一音節に対していくつもの音符を装飾的につけて、表情を豊かにした技法

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百科事典マイペディア 「メリスマ」の意味・わかりやすい解説

メリスマ

本来は歌を意味するギリシア語。声楽において,歌詞の1音節(シラブル)に対して複数の音をあて,装飾的に表情豊かに歌うもの。メリスマ的様式(メリスマ型)は,それに対する1音節1音符のシラビック様式(シラブル型)とともに声楽旋律上の2大類型をなす。この様式対立は,元来グレゴリオ聖歌の旋律類型に関していわれたが,今日では広く一般的に用いられる。メリスマ的様式はアジアに多く見られ,日本の歌のメリスマ的要素のうちで特定のものを〈こぶし小節)〉と呼ぶこともある。日本の民謡追分様式モンゴルオルティン・ドーにはメリスマが多く,無拍のリズムとともに重要な特徴となっている。ヨーロッパではアラビアの影響を受けたスペイン,トルコの支配を受けたギリシアなど,東欧諸国ではハンガリーの民謡などに,メリスマ的様式はよく見られる。メリスマ的様式は一般に拍のない自由なリズムで独唱されることが多く,即興性をもつことも少なくない。
→関連項目ニーグンラインドゥール

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「メリスマ」の意味・わかりやすい解説

メリスマ
めりすま
melisma ギリシア語
melisma 英語
melisma フランス語
Melisma ドイツ語

音楽用語。「歌」ないし「旋律」を意味するギリシア語に由来し、グレゴリオ聖歌以後の西洋の声楽において歌唱様式の一つをさす用語として使われてきた。一音節に対して旋律上の一音を与えるシラビック様式と対概念をなし、一音節に数個以上の音を与える装飾的な歌い方をメリスマ様式とよぶ。東方起源のアレルヤが豊かな装飾音型でもって流れるような旋律線を強調していたのがしだいに様式区分の意識を生み、さらにオルガヌムにおいて明確な対照化が達成された。両様式の中間的な存在であるネウマ型は1音節に2~3音を与えるもので、これをメリスマの一種とみなすこともできる。西洋以外の声楽にも表面的には類似した現象が多数聞かれるため、一括してメリスマという概念でくくることも比較音楽学の初期には行われていたが、一見装飾的ではあっても西洋の場合とは違って旋律の骨格をなすことが多いため、現在ではそれぞれの文化の用語を尊重するのが普通である。たとえば、日本の歌唱技法の一つコブシ(小節、子節)は、ゆったりとした旋律装飾に加えて細かなユリアタリを施すことを強調しているし、類似のことがモンゴルのチンメゲレルやインド古典のガマカといった概念にも当てはまる。しかし、細部はいずれも本質的に異なる表情を旋律線に与えている。

[山口 修]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メリスマ」の意味・わかりやすい解説

メリスマ
melisma

音楽理論用語。声楽曲で歌詞の1音節に多くの音符があてられる装飾的な旋律法。元来グレゴリオ聖歌の作曲法として用いられた。のちにグレゴリオ聖歌におけるほど多くの音符でなくても,多くの音符をあてるものをメリスマ的旋律法というようになった。これに対して1音節に1音符をあてる旋律法をシラビックといい,この2つが旋律法の基本的類型となった。声楽に主体がおかれるアジアの音楽ではメリスマ的旋律が多く,日本音楽では特に顕著である。なお,ノートル=ダム楽派のオルガヌムのなかで,クラウズラというメリスマ的旋律をもつ終止形の部分をさして用いられることもある。

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