アメリカのリンデ社の商品名で、合成ゼオライトの結晶水を除いた均一細孔をもったもので、分離剤、吸着剤として利用される。化学組成はxM2n・Al2O3・ySiO2・zH2Oで表され、Mはn価の金属であり、係数x、y、zの値によって特性が異なる。この合成ゼオライトの特徴は、その特殊な結晶構造により、細孔径が分子の大きさ程度のオングストローム(Å)単位のところにそろっており(1Åは10-10m)、結晶水を除いたあとに生じた空洞間はこの均一な細孔でつながっている。そのため、細孔を通過した分子のみが空洞に吸着され、この細孔の大きさによって分子が分離されるので、分子ふるいともいう。細孔径は構造、組成によって異なり、3A、4A、5A、13Xなどは、ほぼ3Å、4Å、5Å、10Åの細孔に相当する。この特性によって5Aでは直鎖状パラフィンと、枝分れした側鎖パラフィンの分離ができ、ガソリンからn‐パラフィンを分離して高オクタン価ガソリンの製造に利用されている。また水のような極性物質をとくに選択的に吸着するので、気体、液体の脱水に使用され、窒素分子を選択的に吸着するところから、空気の酸素濃縮に広く用いられている。
[大竹伝雄]
分子ふるい用吸着剤,触媒などに用いられるアメリカのLinde社(現UOP社)が開発した合成ゼオライトの商品名.均一細孔径をもち,その結晶構造により3A,4A,5A,10X,13Xなど多くの種類がある.ケイ素化合物とアルミニウム化合物の水溶液にアルカリ(NaやCaなど)を添加し,水熱合成法で製造される.加熱して水和水を除いた後の空洞に細孔を通じて,ガスや液体を吸着することができる.この際,細孔径が均一なため,これよりも大きな有効径をもつ分子は吸着されないという分子ふるい作用を示す.また,Alの含有量が比較的多いものは,極性化合物を選択的に吸着し,とくに水を強く吸着する.工業的には,灯油・軽油からn-アルカンの分離,ガソリンからn-アルカンを除いて高オクタン価ガソリンを製造する方法,キシレン混合物からパラ異性体を濃縮する方法,選択的に水を除去する方法などに選択的吸着剤として用いられるほか,吸湿剤,二酸化炭素,硫化水素などの吸収剤などにも用いられる.また,カチオン交換により固体酸触媒として用いられるほか,原料,反応中間体,あるいは生成物の分子形状による選択性をもつ触媒あるいは触媒担体として使われる.[別用語参照]ホージャサイト,モルデナイト
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
アメリカのリンデLinde社が製造している合成沸石の商品名。沸石はその結晶構造によっては分子の大きさとほぼ同じレベルの径の細孔をもち,この作用によって,大きさや形の異なる分子をふるい分けることができる。たとえば天然産沸石であるリョウ(菱)沸石は水やアルコールを吸着するが,エーテル,アセトン,ベンゼンなどは吸着しない。合成ゼオライトでも,フォージャサイトに属するA型,X型,Y型,またモルデン沸石,ZSM-5などは,それぞれ固有の細孔径をもち,分子ふるい作用がある。市販の商品として知られるモレキュラーシーブ5Aは,有効細孔径が5Åであり,炭素数3以上のノルマルパラフィンを吸着するが,イソパラフィンやベンゼン,トルエンなどはまったく吸着しない。この働きを利用して,高オクタン価ガソリン成分の分離,洗剤用ノルマルパラフィンの生産などに実用されている。またある種の触媒反応にこの分子ふるい効果を応用する試みも行われている。
執筆者:冨永 博夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…吸着媒の有効孔径の大きさに応じて,大きい分子と小さい分子とがふるい分けられる。顕著な分子ふるい効果を示すものとしてモレキュラーシーブmolecular sieveが有名である。これは合成沸石であり,xNa2O・yAl2O3・zSiO2・vH2Oの一般組成をもつもので,均一の孔径をもっており孔径の異なった多種類のものが市販されている。…
…乾燥剤には表中の物質のほか,金属ナトリウム,金属カリウム,金属カルシウム,水素化カルシウムCaH2,テトラヒドリドアルミン酸リチウムLi[AlH4]などの還元剤,Na2CO3,K2CO3,Na2SO4,CuSO4,MgSO4,ZnCl2などの塩類無水和物などがある。そのほかモレキュラーシーブ(分子ふるい)は,合成アルミノケイ酸アルカリで,三次元網目構造の結晶格子の空間に一定の大きさの分子のみをとりこむ物質で,水分子のみをとり出すモレキュラーシーブは精密な実験に適していることがある。またシリカゲルは活性な化学物質と違って,取扱いが容易であり,また安全性が高く,吸湿能力が低下しても加熱脱水することによって容易に再生できるので(塩化コバルトを吸着させたものは,青色のとき吸収能力があり,なくなるとピンクになる),タバコ,茶,のり(海苔)などの食品,医薬品などの防湿用に普通に用いられている。…
…この現象を積極的に利用する分離操作もある。このような分子ふるい効果を有する吸着剤としては,合成ゼオライトであるモレキュラーシーブ,または活性炭系の分子ふるいカーボンなどが開発されている。
[吸着剤の再生]
吸着はあくまでも非定常の現象であり,吸着平衡によって決まるある関係に到達すると,吸着剤はもはや吸着能力を失する。…
※「モレキュラーシーブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新