改訂新版 世界大百科事典 「ヤツガシラ」の意味・わかりやすい解説
ヤツガシラ (戴勝)
hoopoe
Upupa epops
ブッポウソウ目ヤツガシラ科Upupidaeの鳥。この科はヤツガシラ1種からなる。英名は鳴声による。ユーラシア大陸の亜寒帯以南,アフリカ,マダガスカルに広く分布している。北方で繁殖するものは南方に渡り越冬する。全長約25cm。頭頸(とうけい)部と胸は黄土色,腹は白い。翼と尾は黒と白の大きな斑紋で色分けされている。頭上には額部から後頭部に並ぶ黄土色の冠羽があり,各冠羽の先端は黒い。ふだんはこの冠羽は頭上にたたまれているが,驚いたときや,飛行中には扇形にひろげられてよく目だつ。くちばしは褐色ないし黒色で,細長く下方に湾曲している。脚は黒い。灌木の散在する荒地,農耕地や原野が近くにある疎林などに生息し,1羽かつがいで生活している。天然の樹洞,崖地の穴,岩陰,建物の隙間などに営巣する。細長い湾曲したくちばしを使って,おもに草地で地上のさまざまな小動物を見つけ出して食べている。日本には,渡りの時期に少数がまれに渡来する。しかし,1982年に,長野県の低山部の村落でひとつがいが初めて繁殖した。繁殖期には,フープ,フープ,フープと独特の声で鳴く。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報