ヤブデマリ(その他表記)Viburnum plicatum Thunb.f.tomentosum (Thunb.) Rehd.

改訂新版 世界大百科事典 「ヤブデマリ」の意味・わかりやすい解説

ヤブデマリ
Viburnum plicatum Thunb.f.tomentosum (Thunb.) Rehd.

山地谷間に普通にみられるスイカズラ科の落葉低木。花が美しいため,庭木とされる。高さ2~5m,葉は対生し,倒卵形から楕円形,星状毛があり,長さ5~12cm。花序は前年枝の葉腋ようえき)から出た短枝上に生じる集散花序で,直径5~9cm。花は5~6月に咲く。花序周辺部の装飾花は花冠が大きく,不均等に切れ込み,おしべとめしべは小さくなっている。中央部の小さい花は両性,花冠は直径5~6mm,五つに中裂する。果実は楕円形,8月に熟し,初め赤く後に黒くなる。核には深い1本の溝がある。種としては日本,朝鮮南部,中国に分布するが,変異が多い。花序全体が装飾花となったものをテマリバナf.plicatum(英名Japanese snowball)とよび,栽培される。本州中北部の日本海側のものは葉が大きく,毛が少ないためケナシヤブデマリvar.glabrum(koidz.)Haraとして区別する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤブデマリ」の意味・わかりやすい解説

ヤブデマリ
やぶでまり / 藪手毬
[学] Viburnum plicatum Thunb. var. tomentosum Miq.

スイカズラ科(APG分類:ガマズミ科)の落葉低木または小高木。高さ2~4メートル。葉は毛が多く、長さ5~12センチメートル。5~6月、径5~9センチメートルの散房花序をつくり、小花多数集めて開く。花序の縁(へり)の花は装飾花で、白色の花冠は大きい。核果は初め赤く、のちに黒くなり、核には深い溝がある。名は、藪(やぶ)に生えるテマリバナの意味である。山地の谷間に普通に生え、本州から九州、および台湾、中国に分布する。東北地方から北陸地方には毛の少ない品種ケナシヤブデマリがある。基本種のオオデマリ(テマリバナともいう)は、花序全体が装飾花となったものである。

福岡誠行 2021年12月14日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤブデマリ」の意味・わかりやすい解説

ヤブデマリ(藪手毬)
ヤブデマリ
Viburnum plicatum var. tomentosum

スイカズラ科の落葉低木。アジア東部の暖温帯に分布する。関東地方以南の暖地の谷筋や湿った林内に普通に生える。幹は高さ2~4mで若枝は星状毛が密生し褐色になる。葉は長さ6~12cmの長楕円形で対生し,鋭い鋸歯があって,若いときは下面に毛が密生している。5~6月に,水平に伸びた枝に1対の葉をつけ,その短枝の先に散房花序をつける。花序の中央部には多数の白色花 (両性花) を密につけ,外周部には白い大きな装飾花が並んで中央の両性花を囲む。この装飾花は不稔である。核果は夏に熟し,初め赤くのちに黒くなる。

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百科事典マイペディア 「ヤブデマリ」の意味・わかりやすい解説

ヤブデマリ

スイカズラ科の落葉低木。本州〜九州の山野にはえる。高さ3m内外になり,葉は対生し楕円形で,縁には鋸歯(きょし)がある。4〜6月,1対の葉のある短柄の先に散房花序を出し,多数の白色で小さい両性花をつけ,外側には大きな装飾花をつける。装飾花は白色で径2〜4cm,不同に5深裂する。果実は楕円形で,初め赤くなり,9〜10月,黒熟。

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