日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユウレイグモ」の意味・わかりやすい解説
ユウレイグモ
ゆうれいぐも / 幽霊蜘蛛
節足動物門クモ形綱真正クモ目ユウレイグモ科の総称、またはそのなかの1種。この科のクモは一般に体が小さく、脚(あし)が細くて長く、弱々しい。体色はたいていは半透明の灰色。屋内にすむものが多く、天井裏や薄暗い部屋の隅などに不規則な棚状の網を張る。形や色から、またすむ場所からユウレイグモと名づけられた。
イエユウレイグモPholcus phalangioidesは世界中の家屋にすむ。体長7、8ミリメートル。大きい棚状の網を張り、また網を張りっぱなしにするので美観を損ない、不潔感を与えるので嫌われるが、屋内害虫を捕食してくれている。映画などの古い廃屋に出てくる網はたいていこのクモの網である。身の危険を感じると体をぐるぐる回して威嚇する。同じく屋内性のもので縁の下や引出しの奥などに小形のシモンユウレイグモSpermophora senoculataがいる(世界共通種)。1982年(昭和57)の末に、インド、中国、東南アジア、日本では琉球(りゅうきゅう)諸島に分布するオダカユウレイグモCrossopriza lyoniが愛知県の人家に定着していることがわかったが、これは人為分布の結果と思われる。この種の腹部の側面は三角形である。野外にはユウレイグモPholcus crypticolens、洞窟(どうくつ)にはアケボノユウレイグモSpermophora akebonaがいる。南西諸島にはユウレイグモモドキSmeringopus pallidusやネッタイユウレイグモPhysocyclus grobosusがいる。
[八木沼健夫]