ヨウ化カリウム(読み)ようかカリウム(その他表記)potassium iodide

改訂新版 世界大百科事典 「ヨウ化カリウム」の意味・わかりやすい解説

ヨウ(沃)化カリウム (ようかカリウム)
potassium iodide

化学式KI。ヨードカリ,ヨウポツ(沃剝)と俗称される。天然には海水,かん(鹹)水などに含まれる。無色立方晶系結晶。塩化ナトリウム型構造,格子定数7.0655Å。比重3.13。融点680℃,沸点1330℃。気体におけるイオン対K⁺-I⁻の原子間距離は3.0478Å。水100gに対する溶解度127.5g(0℃),208g(100℃)。エチルアルコールメチルアルコールアセトン,グリセリンに溶け,エーテルには難溶。水溶液ヨウ素をよく溶かすが,これは直線形構造のI3⁻の生成によるもので,溶液からは深青色結晶としてKI3-H2O(単斜晶系,融点45℃,比重3.498)が得られる。結晶状態では比較的安定であるが,水溶液は分解しやすく,重金属,鉄などの不純物が存在すると分解が著しくなる。工業的には,鉄片とヨウ素とからヨウ化鉄Fe3I8(FeI2・2FeI3)をつくり,これを炭酸カリウムと反応させてヨウ化カリウムとするか,あるいは水酸化カリウム濃水溶液にヨウ素を溶かしてヨウ素酸カリウムとし,再結晶してから硫化水素で還元するなどの方法でつくられている。純粋なものは精製したヨウ化水素酸炭酸水素カリウムとを反応させてつくる。去痰薬,利尿薬,ヨードチンキなどの医薬品に,また写真用,ヨウ素化合物の原料として広い用途がある。分析試薬としてヨウ素滴定に用いられるほか,試験紙沈殿剤ともされる。毒物及び劇物取締法では劇物に指定されている。日光で分解されヨウ素を遊離し,黄変するので,密栓して冷暗所に保存する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨウ化カリウム」の意味・わかりやすい解説

ヨウ化カリウム
ようかかりうむ
potassium iodide

カリウムとヨウ素の化合物。ヨウ化水素のカリウム塩である。ヨードカリJodkaliともいわれるが正しい名称ではない。水酸化カリウム水溶液にヨウ素を溶かし、蒸発濃縮すれば得られるが、副生しているヨウ素酸カリウムKIO3を還元するために、さらに木炭を加えて加熱する方法が用いられる。

 3I2+6KOH―→5KI+KIO3+3H2O
 2KIO3+3C―→2KI+3CO2
 工業的にはヨウ素を鉄粉と反応させてヨウ化鉄Fe3I8とし、炭酸カリウムで処理する方法が行われる。無色の結晶で、水によく溶け、そのとき著しく吸熱する。水溶液は中性または微アルカリ性を呈し、ヨウ素を溶かす性質がある。ヨウ素化合物の原料となるほか、医薬として慢性関節炎、慢性リウマチ、神経痛、梅毒などの治療に用いられる。劇薬。

[鳥居泰男]


ヨウ化カリウム(データノート)
ようかかりうむでーたのーと

ヨウ化カリウム
  KI
 式量  166.0
 融点  680℃
 沸点  1330℃
 比重  3.13
 結晶系 立方
 屈折率 (n) 1.6670
 溶解度 144g/100g(水20℃)
     4g/100g(エタノール20℃)
     16.5g/100g(メタノール20℃)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨウ化カリウム」の意味・わかりやすい解説

ヨウ化カリウム
ヨウかカリウム
potassium iodide

化学式 KI。ヨウ化水素酸に炭酸水素カリウムを作用させて製造する無色の立方晶系結晶。湿った空気中ではいくぶん潮解性を示す。比重 3.12,融点 680℃,沸点 1330℃。水,アルコールに可溶。水溶液は放置すると酸素により酸化され,ヨウ素を遊離し,黄色となる。写真乳剤,分析用試薬などに用いられる。消化管,皮膚から容易に吸収され,ヨウ素イオンは甲状腺に集中する。甲状腺機能低下症の場合は機能を回復させ,バセドー病のような亢進症の場合には逆にこれを抑制する働きがある。そのほか,気管支粘膜分泌促進作用があり,去痰薬として使われたり,病的組織溶解作用のために第3期梅毒(→梅毒)の治療に使われることがある。副作用は急性中毒症状としては弱く,過敏性反応が現れる程度であるが,慢性中毒症状として眼粘膜,呼吸器粘膜などの浮腫,皮疹,体重減少,全身衰弱などがある。複方ヨードグリセリン(ルゴール液)の場合,ヨウ化カリウムはヨウ素の溶解度を増し,ヨウ素酸の変化を防ぐ目的で用いられるものであり,薬効はない。養鶏用飼料などのなかにも 10~30ppm添加することもある。

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化学辞典 第2版 「ヨウ化カリウム」の解説

ヨウ化カリウム
ヨウカカリウム
potassium iodide

KI(166.00).炭酸カリウムとヨウ化水素酸との反応により得られる.無色の等軸晶系結晶.融点723 ℃.沸点1330 ℃.密度3.13 g cm-3.水に易溶,エタノール,メタノールに可溶,アセトンに微溶,エーテルに難溶.水溶液にはヨウ素が錯イオン I3 を形成してよく溶け,I3 は気散しない.ほかのヨウ化物の原料,写真用,医薬品,飼料添加物などに用いられる.ヨウ化カリウムデンプン紙として次亜塩素酸酸化還元滴定に外部指示薬として用いられる.[CAS 7681-11-0]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「ヨウ化カリウム」の意味・わかりやすい解説

ヨウ(沃)化カリウム【ようかカリウム】

化学式はKI。比重3.13,融点680℃,沸点1330℃。俗にヨードカリ,沃剥(ようぽつ)などとも。無色の結晶。水に易溶。製法,性質は臭化カリウムと同様。医薬品,ヨウ素化合物の原料。空気中に長く放置すると分解して着色する。

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世界大百科事典(旧版)内のヨウ化カリウムの言及

【ヨウ化カリウムデンプン紙(沃化カリウム澱粉紙)】より

…酸化剤の検出に用いられる試験紙の一つ。ヨウ化カリウム3gと可溶性デンプン5gを水に溶かして1lにした溶液にろ紙を浸し,これを乾燥したもの。湿った状態で微量の酸化剤と鋭敏に反応して青色を呈する。…

※「ヨウ化カリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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