改訂新版 世界大百科事典 「ヨコエビ」の意味・わかりやすい解説
ヨコエビ (横蝦)
beach-flea
freshwater-shrimp
端脚目ヨコエビ亜目の甲殻類の総称,とくにこのうちのヨコエビ科ヨコエビ属に属するものを指すことが多い。トビムシと呼ぶ場合も多い。ヨコエビの名はこれらの動物が体を横にして水中を泳ぐことによる。ヨコエビ類Gammarideaの体は左右に扁平で,頭部,胸部7節,腹部6節と尾節とに分かれており,頭部には左右1対の複眼がある。一般に前部の4対の胸脚は前方に曲がり,後部3対は腹肢と同様後方に向いている。えらは第2~7胸脚または第3~7胸脚の底節板内面に発達する。雌ではその内側の第3~6胸脚基部より発達する覆卵葉4対が互いに重なってつくる育房中に卵をいれ,孵化(ふか)した幼生は親に似た形になるまでこの中で保護される。
海洋および汽水,淡水,洞穴や井戸などの地下水生のものから陸生のものまで,非常に多数の種類があり,約60科,4700種ほどが知られている。陸産としては,ハマトビムシ,ヒゲナガトビムシなどがよく知られ,淡水産のニホンヨコエビRivulogammarus nipponensisは体長8~12mm,本州および九州の湖沼,河川,渓流などの石の下に,アンナンデールヨコエビAnisogammarus annandaleiは体長8~16mm,北海道から九州までの湖沼,河川および沿岸の汽水域にふつうに見られる。シコクメクラヨコエビPseudocrangonyx shikokunisは体長7~9mm,無色で眼は退化してない。四国・山陽地方の石灰洞や井戸など,地下水に生息している。
海産の代表的なものに次の種類がある。モクズヨコエビHyale grandicornis(体長10~22mm)は一見ハマトビムシに似ているが,日本各地の沿岸の干潮線付近の海藻の間に,トゲメリタヨコエビMelita dentata(20mmくらい)とイソヨコエビElasmopus japonicus(約15mm)などは沿岸の干潮線付近の石の下などにふつうに見られる。ニッポンモバヨコエビAmphithoe lacertosa(5~20mm)は各地の沿岸の藻場にごくふつうに生息しており,コンブネクイムシCeinina japonica(7mmくらい)は北海道沿岸のコンブを食害する。ハワイのオアフ島北東沖の水深5304mの海底に置いた餌に集まったものを深海カメラが撮影したものでは,体長282mmもの巨大な種類が写っていた。
執筆者:蒲生 重男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報