ラテン語(読み)ラテンゴ(英語表記)Latin

翻訳|Latin

デジタル大辞泉 「ラテン語」の意味・読み・例文・類語

ラテン‐ご【ラテン語】

インド‐ヨーロッパ語族イタリック語派に属する言語。古代ローマ人の用いた言語。ローマ帝国崩壊後も、ローマ‐カトリック教会の公用語として今日まで保たれ、また、ヨーロッパの共通の文語として中世から近世の初めまで用いられた。一方、民衆の話し言葉としてのラテン語は、地域分化を経てロマンス諸語へと変わった。

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精選版 日本国語大辞典 「ラテン語」の意味・読み・例文・類語

ラテン‐ご【ラテン語】

  1. 〘 名詞 〙 インド‐ヨーロッパ語族イタリック語派に属する、古代ローマ帝国の公用語。その文語である古典ラテン語は今日でも学術・宗教の用語として用いられており、民衆の口語であった俗ラテン語は帝国各地で独自に変遷して現在のロマンス諸語となった。〔物類品隲(1763)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「ラテン語」の意味・わかりやすい解説

ラテン語 (ラテンご)
Latin

インド・ヨーロッパ語族の一分派であるイタリック語派に属する言語。この語派にはラテン語以外にオスク・ウンブリア語がふくまれるが,この二つの言語の間にははっきりとした方言差が認められる。また第2次大戦後にはベネト語もこの語派に属するとみる説が有力となっている。しかしこれらの諸言語は,ローマの政治力の拡大とともに,その言語であるラテン語に吸収されてしまった。ラテン語はローマ帝国の広大な版図で行われることとなり,そしてローマ帝国の崩壊の後も,東の東方正教のギリシア語に対する西のローマ・カトリック教会の公用語として,また中世ヨーロッパの共通の文語として使用され,近世の初めまでその伝統は変わらなかった。一方,民衆の話すラテン語(口語)は,ローマ軍の戦線とともに広がってヨーロッパの各地に定着し,長い歴史の中でいわゆる〈ロマンス諸語〉に変貌していった。今日のイタリア,フランス,スペイン,ポルトガルルーマニアなどの諸言語は,みなラテン語の後裔(こうえい)である。その意味ではラテン語は古代から現代まで継承され生き続けてきたし,現代ヨーロッパの諸言語のあらゆる面に,われわれはその古い姿をうかがうことができる。

ラテン語はその名の通り,ラティウムLatiumと呼ばれたテベレ川に接する七つの丘のあるせまい地域,つまり現在のローマの一画の住民の言語にすぎなかった。前1千年紀の後半になってもローマの北部にはエトルリアが栄え,エトルリア語が話されていた。そしてその東にはウンブリア語が,ローマの南部から西部にはオスク語が有力であった。もちろんシチリアをはじめとするイタリアの南端部一帯には,早くからギリシアの植民が盛んであったから,交易にはギリシア語が広く用いられていた。ラテン語の歴史は主として前5世紀以後にはじまる。また,これに近い方言の痕跡もこの頃のローマに近い町の碑文に認められている。それはエトルリア領でもあったファレリFaleriiと呼ばれた町の住民の言語(ファリスキ語Falisci)である(これをラテン語とあわせてラテン・ファリスキ語群とも呼ばれる)。一例として,盃に刻まれた短文と,そのラテン語訳をあげると,

foied uino pipafo cra carebo.(ファリスキ語)

hodie uinum bibam cras carebo.(ラテン語)

〈今日は・酒を・私は飲むだろう・明日は・(飲め)ないだろう。〉

 ちなみにこの文章のfoied(<fo-died)=hodieは今日のイタリア語スペイン語のoggi,hoyの基であり,フランス語のaujourd'huiのhuiの基でもある。またuino=uinum(対格形)は,同じ現代ロマンス語のvino,vino,vin,さらにはロマンス語から借入された英語,ドイツ語のwine,Weinの源の形である。

小さな田舎の言葉にすぎなかったラテン語は,広大なローマ帝国の言語となるわけであるが,これに多くの語彙を供給し,文章表現の範となり,詩型までもあたえて,その育成に力をかしたのはギリシア語である。ローマの文人はギリシア語を自由に話し,文学を学んでその文化を吸収した。そして彼らは,できる限りギリシア語をラテン語に移しかえて使おうと努めた。たとえば,現在の英語compositionの基になったラテン語のcom-positio(com-pono〈ともにおく〉の名詞形)は,本来はギリシア語のsyn-taksis(syn-tattōの名詞化)をそのまままねてつくった翻訳のラテン語である。英語のnegotiationという語は今日では〈交渉〉とか〈取引〉をあらわすが,これはラテン語のnegotiumに帰着する。これはnec否定詞とotium〈暇(ひま)〉の合成形で,〈暇がないこと〉つまり〈仕事〉である。そしてこの語の基は,ギリシア語の同じ語形成を示す語a-scholiaであった。しかし,日常の語彙から学問的なそれまで,あらゆる分野でこのようなラテン語化(ラテン語訳)の努力が続けられたにもかかわらず,一方では現代語のなかに多くのラテン語経由のギリシア語(訳されずにそのまま取り入れられたもの)の形をもっている。たとえばacademia(英語academy。以下かっこ内は関係のある英語の形をあげる。ただし同一綴りの場合は省略),chorus,gymnasium,harmonia(harmony),lyra・lyricus(lyric),machina(machine),magicus(magic),orchestra,philosophia(philosophy),rhythmus(rhythm),schola(school),theatrum(theater)などである。このようにギリシア語を学んだラテン人が,その伝統を継承して,後のヨーロッパに伝えた功績は非常に大きい。

エトルリア語もラテン語に影響をあたえている。miles〈兵士〉(military。以下かっこ内は関係のある英語の形),persona〈面〉(person),satelles〈ボディガード〉(satellite),servus〈奴隷〉(serve,service),urbs〈町〉(urban)などの普通名詞のほか,Marcus Tullius Cicero,Gaius Julius Caesarのような名-姓-あだ名という名前のつけ方とその名称,さらにはアルファベットも,エトルリア語のそれが源らしい。アルファベットに関していえば,歴史時代にも依然として用いられているC.(=Gaius),Cn.(=Gnaeus)という個人名の略号からもわかるように,ギリシア文字のΓに由来するCが[k]と[g]のいずれをもあらわしているということは,ラテン・アルファベットがギリシア人からでなくて,kとgという無声と有声の対立をもたないエトルリア語の話し手から教えられたことを暗示している。しかし,Cがkとgの共用では,ラテン語としては不便だから,後にC[k]と区別してCにIを加えてG[g]がつくられたのである。

われわれが古典ラテン語Classical Latinと呼ぶラテン語は,カエサル,キケロ,ウェルギリウス,ホラティウスら前1世紀ころから数世紀の間に活躍した作家たちの綴った文語(それ以前のラテン語にくらべると,さまざまな面での整理・純化がなされている)を範とした書き言葉のラテン語であり,その文法的な組織はきわめて整然としていて,規則的である。

ラテン語は形態論的にいえば,典型的な屈折語のタイプに属する。名詞は性(男・女・中),数(単・複),格(主・対・与・属・奪・呼)の三つの要素を常に備え,形容詞もこれに準ずる。dominus〈主人〉は,男性,単数,主格(主人は/が)をあらわし,dominae〈女主人〉は女性,単数,与格または属格,複数主格をあらわす。このように一つの形が二つ以上の数や格の機能を兼ねることがあるが,多くの場合は文脈によってそのうちの一つが選ばれるから,意味の混同のおそれはあまりない。

 動詞は人称(1・2・3),数(単・複),時制(現在・未完了・未来・完了・過去完了・未来完了),態(能動・受動。ただし,ときに能動形を欠く形あり),法(直説・命令・接続)の五つの要素を担っている。regis〈支配する〉は2人称(1人称はrego)・単数・現在・能動・直説法の形である。これだけの文法的な機能を一つの動詞形がふくむとすると,すべての差別は非常に複雑なものが予想されるが,実際にはギリシア語にくらべてもはるかに規則的で見分けやすい。動詞組織は大別して二つに分かれ,現在・未完了・未来と完了・過去完了・未来完了がそれぞれ一群をなし,おのおのに語幹一つと現在の不定法それに受動完了分詞があたえられれば,その全人称変化はすべての態,法を通じてほぼ自動的にでき上がってくる。たとえば上掲のrego(不定法regere)ならば,完了形はrexi(〈reg-s-i,語幹はrex-,-iは1人称単数の語尾)であり,amo〈愛する〉(不定法amare)ならばamavi(ama-v-i,語幹はamav-)である。現在と完了の語幹は常に異なるから,これを基に各時制の人称形は一定の規則に従って機械的に成立する。

動詞組織にとって重要なものは分詞形である。ラテン語はギリシア語と同じように能動の現在分詞をもっているが,受動のそれはなく,逆に完了の受動分詞はもつが,その能動形をもたない。つまりギリシア語より二つ形が少ない。この受動の完了形の分詞(たとえばamatus(男性・単数・主格)=英語loved)は受動の完了,過去完了,未来完了の形を合成的につくるのに不可欠のものである。のみならず,この受動の完了分詞がいわゆる分詞構文(ラテン語では奪格の絶対的用法という。〈絶対的〉というのは,その文の他の要素から切りはなされているという意)をつくるのに好んで使用される。その場合,ギリシア語のように能動の分詞があれば当然能動で表現すべきところを受動であらわさざるをえないが,それによって文全体が簡潔になり,副文章を用いずにすむ。その使い方の巧拙は文の構成そのものに影響する。たとえば〈(ローマの)町が建てられたときに〉という状況は,condita urbe(直訳すれば〈建てられた町によって〉)の2語で表現される。もちろん現在分詞も同じように用いられるが,これは能動形だから幅広く使うことができる。neque senatu interveniente et adversariis negantibus……, transiit in…… 〈元老院が(senatu)介入せず(ne interveniente),さらに敵が(adversariis)……しないという(negantibus)ので,彼は……に移動した(transiit in)〉。この分詞構文は理由をふくめたあらゆる状況の説明に自由に用いられるから,非常に活用範囲が広い。もう一つおもしろいことは,ラテン語にはギリシア語と違って英語beingに相当するto beの動詞の現在分詞がないということである。そこで〈キケロが執政官であったときに〉という状況の説明には,Cicerone consuleと二つの名詞の奪格形を並べればよく,〈私が少年のとき〉はme pueroのように,代名詞と名詞のそれの連続で表現される。これは一見無理な構文のように思われるが,ラテン語の文の〈引きしめ〉に大いに役立っている。そしてこれらが現代のヨーロッパ語の分詞構文の出発点である。できるだけ簡潔な文章のなかにできるだけ豊富な内容を,しかも明確に表現すること,これがラテン文人の理想であった。その重要な一つのポイントが,この分詞の使い方にある。この伝統はヨーロッパの教養として今日にも生きているといえよう。

こうした文語のラテン語の下には,文字を知らない民衆の話す口語のラテン語(〈俗ラテン語Vulgar Latin〉とも呼ばれる)があって,早くから変化をおこしていた。その事実は多くの碑文からうかがうことができる。墓石に文を刻む石屋は,正しい綴りを忘れてしまったのか,しばしば誤って刻んでいる。しかしそのようなまちがった綴りはしばしば彼らの発音の反映である。たとえば〈夫,妻〉をあらわすconiunxの-n-を落としてconiuxとしたり,(filio)dulcissimo〈とりわけ可愛い(息子に)〉とあるべきところをdulcismoとしている。

 のちのロマンス語では,h-は一般に正書法上のものにすぎないが,この傾向はすでに古典期のラテン語にみられ,humanus〈人間の〉をumanusと書くなどの誤りがしばしば指摘される。語末の-mの発音も非常に早くから弱まっていた。Appendix Probiという3世紀末ころのものと思われる語彙のリストは,プロブスという文法家の書物に〈付せられたもの(appendix)〉としてこの名で呼ばれるが,これは具体的にはcamera non cammara〈cammaraでなくてcamera(部屋)〉のように,誤りやすい例を教えるリストである。これをみると,音変化や音の消失による語形の変化,類推による形の規則化がかなり進んでいることがわかる。このような変化はラテン語の組織そのものに大きな影響をあたえ,伝達に支障をもたらす。たとえば語末の子音の弱まりは,rosa〈ばら(主格)〉,rosam(対格),rosae(与格・属格)などの格の区別をあいまいにし,ついには格の消失に導く。語中の母音間のbがvに変化すると(ripa〈岸〉>riba>riva。フランス語rive,rival参照),-bi-をマークとする多くの未来形と,-vi-をマークとする完了形が衝突してくる。その結果,未来形は全体的に消滅していく。

 語彙にしても,eo〈いく〉,edo〈たべる〉,do〈あたえる〉など,人称変化をする際その頻度の高い形に1音節語が多い動詞は,vado,ambulo〈いく〉,manduco〈たべる〉,dono〈あたえる〉のような形に代えられてしまった。またauris〈耳〉,genu〈膝〉のような語は,その縮小辞であるauricula,genuculumという形がロマンス語の基礎になっている。これは文字とはかかわりのない民衆の好みのあらわれである。またその好みが,地域によって異なる場合もある。ラテン語にはuxor〈妻〉,mulier〈婦人〉,femina〈女〉の三つの語彙があったが,uxorはvir〈男,夫〉とともに早くに口語から後退した。今日,ロマンス諸語で〈妻〉を意味する語は,フランス語はfeminaの系統をひくfemmeだが,イタリア語,スペイン語はmulierの後裔であるmoglie,mujerである。
ロマンス語

第2次大戦前まではラテン語はヨーロッパにおける〈教養〉の一つの象徴であった。中世はもちろん近世になっても大学ではラテン語の講義が行われていた。ラテン語は西欧文化のなかで,ある重要な位置を占めると言ってよいだろう。もしローマがケルト人の攻撃に屈してラテン語が早くに死滅していたとしたら,おそらく今日のヨーロッパの諸言語は,表現も語彙もきわめて貧弱なものになっていただろう。それは英語の語彙のなかに占めるラテン系の語彙の数や,Latinismと呼ばれる表現を思えば,おのずから明らかなことである。
ラテン語教育
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百科事典マイペディア 「ラテン語」の意味・わかりやすい解説

ラテン語【ラテンご】

インド・ヨーロッパ語族のイタリック語派に属する言語。ラティウムLatiumの方言。早くにエトルリア語の影響を受けたらしい。ローマの隆盛に伴い近隣の方言を吸収,古典ラテン語が形成され,公用語・文学用語として普及,洗練された。また2世紀後半にはその口語層が分離し(俗ラテン語),主としてローマ帝国西部に向かって浸透した結果,各地の先住民の言語をおさえて後のロマンス語に発展する。古典ラテン語は,近代諸語が文語として確立するまではカトリック教会,学術上の共通語として使用されたが現在は死語。西洋では古典語といえばギリシア語とラテン語をさす。→ローマ字
→関連項目アルバニア語ウンブリア語コイネー死語スペイン語ラテン人ローマ[古代]

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世界の主要言語がわかる事典 「ラテン語」の解説

ラテンご【ラテン語】

インドヨーロッパ語族イタリック語派に属する言語。現在は死語だが、学術用語やバチカン市国の公用語などで使われている。もとはローマ周辺のラティウム地方の言語だったが、ローマの勢力拡大とともにイタリア全土に、さらにローマ帝国の公用語として当時のヨーロッパ世界に広がった。ギリシア語の影響下で豊かな表現力をそなえた言語で、前1世紀の作家たちの文語が標準的な古典ラテン語とされる。各地方に定着した口語はその後分化してロマンス諸語となり、現在のフランス語イタリア語スペイン語ポルトガル語、ルーマニア語などへと発達した。一方文語は中世以降近代に至るまでヨーロッパの知識層の共通の学術用語、カトリック教会の公用語として使われ、教育では必修科目とされていた。屈折型の言語(屈折語)で、文中の語順はきわめて自由。名詞・形容詞は性・数・格の3要素、動詞は人称・数・時制・態・法の5要素をもつ。◇英語でLatin。

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大学事典 「ラテン語」の解説

ラテン語
ラテンご

大学の教育言語として最も古く長い伝統を持つ。中世大学ではテキストも講義もラテン語であったため,その読み書き会話が勉学の必須条件であった。ヨーロッパ全域から学生を集めた中世大学の普遍性は,汎ヨーロッパ的言語であったラテン語によって支えられていた。そのため,ラテン語の文法学校が各地に隆盛した。人文主義の興隆とともに古代ギリシア語・ラテン語が人文的教養となり,教科としての古典語は,近代までヨーロッパの後期中等教育の根幹をなした。大学では古典的な法学,神学,医学が受け継がれていたし,ローマ教会はむろんのこと,法曹界,外交,行政組織もラテン語を使い続けたため,大学での教育言語として長く使用された。しかし,近代科学や外国語が大学の教育内容に取り込まれ,母国語の力が強まるにつれ,その地位は徐々に低下した。すでに16世紀から特定の講座で現地語を使用する例が散見されるが,18世紀には,トマジウスに代表されるように教授が個人的に母国語を使用し,フランスの学寮でも母国語が使用されはじめ,母国語を教育言語とするドイツ大学が次第に増加した。大学の教育言語の母国語化は,近代国民国家の統一的アイデンティティの形成に深く関連している。
著者: 児玉善仁

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ラテン語」の解説

ラテン語(ラテンご)
Latin

インド・ヨーロッパ語族に属し,もとイタリアのラティウムラテン人の使用した言語。この言葉を使用した古代ローマ人(ラテン人の一派)が,地中海世界をおおう大帝国を建てたため西欧の共通語となった。中世には知識階級の公用語,今日ではカトリック教会の公用語および学術語として残る。イタリア語,スペイン語,フランス語,ルーマニア語はラテン語から転訛したもの。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ラテン語」の解説

ラテン語
ラテンご
Latin

元来イタリアのティベル川南部の平野部で使用された言語で,インド−ヨーロッパ語族に属す
この地域を本拠地としておこった古代のローマ人(ラテン人の一派)が大帝国を建設したため,その後西ヨーロッパで優勢となった。中世には聖職者の公用語となり,今日でもローマ−カトリックの公用語や学術語として用いられている。

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世界大百科事典(旧版)内のラテン語の言及

【イタリア語】より

ロマンス語に属する言語。その源は古代ローマ人の用いたラテン語にさかのぼる。
[分布と方言]
 イタリア語はイタリア共和国(人口5744万)の公用語であり,またサンマリノ共和国,バチカン市国,スイスのティチノ州,コルシカ島,ユーゴスラビアのイストラ半島およびダルマツィア地方の一部でも話されている。…

【イタリック語派】より

…通常オスク・ウンブリア語群Osco‐Umbrianとラテン・ファリスキ語群Latin‐Faliscanとに大別される。いずれも前1千年紀のイタリアで行われていた言語であるが,後者に属するラテン語が,その話し手たるローマ人の台頭とともに勢力を伸ばし,他のイタリック諸語を消滅へと追いやった。オスク・ウンブリア語群はオスク語,ウンブリア語,その他の群小方言から成り立つ。…

【インド・ヨーロッパ語族】より

… しかし印欧語族のなかには,歴史時代に分化をとげた言語がある。それはラテン語である。ラテン語はイタリック語派に属する一言語であったが,ローマ帝国の繁栄とともにまず周辺に話されていたエトルリア語やオスク・ウンブリア語などを吸収した。…

【英語】より

…8,9世紀ごろノーサンブリアおよびマーシアには学芸が興隆し,一時は全欧に冠たる地位を占めたが,たび重なる北欧の侵略者デーン人(バイキング)による僧院の略奪と破壊に遭い,これら方言による文献はおおかた失われた。後世に伝わるOEの文献はWSによるもので,これはアルフレッド大王(在位871‐899)が果敢な反撃によりデーン人から自領を守り,協定を結んで彼らとイングランド内に平和に共存する一方,自らラテン語の哲学・宗教書をWSに訳し,年代記を編ませるなど,宗教と学芸の興隆に意を用いたことによる。大陸時代以来の口碑,他方言による文学もWSで書きとどめられ,あるいは転写されて残った。…

【スペイン語】より

…この原初イベリア語のなごりが,現在バスク地方で話されるバスク語であるともいわれる。このような原初イベリア語という言語的素地の上に,前3世紀末に始まるローマ人の侵入・植民によって口語のラテン語(口語のラテン語はその当時すでに文語のラテン語とは著しくかけはなれていた。ふつう前者を〈俗ラテン語〉,後者を〈古典ラテン語〉と呼んでいる)がかぶさることになる。…

【ドイツ語】より

…ドイツでは6世紀ころより,フランク族による諸部族の征服と統合が行われるが,8世紀中ごろ帝位についたカロリング朝のカール大帝は,最終的に征服し終えた諸部族をキリスト教の理念によって統一することを目ざした。そのために,彼は教会制度など種々の制度改革を行ったが,その一環として,聖職者がラテン語ではなく民衆の言葉で説教し教義を教えることを命じた。そこで,ラテン語で書かれたキリスト教文献の翻訳を主とした文学活動が各地の修道院を中心にして盛んになり,〈主の祈り〉〈信仰箇条〉〈受洗の誓い〉が各地でドイツ語に翻訳された。…

【母音変化】より

…母音変化には,(1)質の変化と,(2)量(長さ)の変化とがある。古典ラテン語には短母音/a,e,i,o,u/と長母音/ā,ē,ī,ō,ū/の計10個の母音があった。これらが俗ラテン語では/a,ɛ,e,i,o,ɔ,u/の七つに減少している。…

【ラテン語教育】より

…ラテン語はもともと古代ラテン人の一地方言語であったが,ローマ人の政治支配によって広い通用力をもつことになった。しかし,自己の言語についての原理上,および教授法上の考察は,先進のギリシア文化の影響をうけて開始され,その際にはいわゆるアレクサンドリア学派の言語理論がモデルとなった。…

【ロマンス語】より

…ロマン語ともいう。古代ローマ帝国の共通語であったラテン語が長期間にわたって変化し,地域的な分化を遂げることによって,おそらく8世紀ころまでに形成された諸言語の総称。ロマンス語は今日ヨーロッパおよびアメリカ大陸を中心に,全世界で5億人にのぼるとも推定される人々の日常語として広く使用されている。…

※「ラテン語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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