ペトロニウス(英語表記)Gaius Petronius

デジタル大辞泉 「ペトロニウス」の意味・読み・例文・類語

ペトロニウス(Gaius Petronius)

[?~66]古代ローマ作家。別名アルビテル(Arbiter)。ネロ帝に寵愛されたが、のちに陰謀疑いで死を命じられた。断片が残る悪漢小説サテュリコン」の作者とされる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ペトロニウス」の意味・わかりやすい解説

ペトロニウス
Gaius Petronius
生没年:?-55か66

紀元後1世紀のローマの文人。その生涯を伝える正確な資料はほとんど残されていないが,小アジアのビテュニア総督として赴任し,またコンスル執政官)の職についたこともあったらしい。官吏としては職務に熱心であったと伝えられるが,昼間は眠っていて夜を仕事と快楽に過ごしたぜいたくな通人として知られていた。皇帝ネロ宮廷にあって〈優雅判官arbiter elegantiae〉として,皇帝も彼の意に従って行動するほどの信任を受けた。しかしながら他人のねたみを買い,反逆罪の疑いをかけられ自殺した。その最期は,血管を切ったうえ静かに友人と談笑しながら眠るように死についたといわれ,有名になっている。現在断片が残っている小説《サテュリコン》の作者はこのペトロニウスであると一般にみなされている。同一人物であるとすれば,宮廷人でありながら,同時に文学史上特異な作品を残した文才豊かな作家でもあったといえよう。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペトロニウス」の意味・わかりやすい解説

ペトロニウス
Petronius Arbiter, Gaius

[生]?
[没]66
ローマの政治家,作家。本名 Titus Petronius Niger。コンスル(執政官)やビチュニア総督としても有能だったが,それ以上に快楽の追求に特殊才能をもち,皇帝ネロの宮廷の「優雅の審判官」arbiter elegantiaeと呼ばれた。しかし皇帝の不興を買って,自殺を命じられ,最後の数時間を愉悦のうちに過ごして優雅に死んだという。その死の模様はヘンリク・シェンケーウィチの『クオ・バディス』に美しく描かれている。ペトロニウスの作とされる『サチュリコン』Satyriconは,散文に韻文が交じったいわゆるメニッポス風サトゥラの形式で書かれた一種悪者小説で,西ヨーロッパで最初の小説といわれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペトロニウス」の意味・わかりやすい解説

ペトロニウス
ぺとろにうす
Gaius Petronius
(?―66)

古代ローマの詩人。タキトゥスによれば、ビティニアの総督を務めた有能な人物で、快楽主義者として聞こえ、皇帝ネロから「雅趣の判定者」arbiter elegantiaeとよばれたという。晩年、ネロの寵遇(ちょうぐう)を得て歓楽と遊興のうちに過ごしたが、反逆罪の嫌疑を受けて自殺を命じられた。この話はシェンキェビッチの小説『クオ・バディス』で名高い。西洋最初の小説ともいわれる長編悪漢小説『サチュリコン』の作者とされるのがこのペトロニウスである。

[松本克己]

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百科事典マイペディア 「ペトロニウス」の意味・わかりやすい解説

ペトロニウス

ローマの作家,政治家。ネロの寵臣(ちょうしん)で,〈優雅の判官〉のあだ名があったが,寵を失って自殺した。悪者小説《サテュリコン》は彼の作とされている。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ペトロニウス」の解説

ペトロニウス
Petronius Arbiter (本名 Gaius Petronius)

?~66

ローマ皇帝ネロの廷臣。その著に悪漢小説『サテュリコン』があり,現存するが,当時の社会を知る好史料となっている。なかでも「トリマルキオの饗宴」の部分は有名。

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世界大百科事典(旧版)内のペトロニウスの言及

【サテュリコン】より

…紀元後1世紀にペトロニウスによって書かれたと伝えられるローマの小説。もとは全16巻から成る長編小説だったらしいが,現在はそのうち最後の3巻からの抜粋が残っているにすぎない。…

【ラテン文学】より

…ほかにウェレイウス・パテルクルスVelleius Paterculus,クルティウス・ルフスCurtius Rufus,フロルスなどの歴史家の名がみられる。またそのほかの散文作家には,小説《サテュリコン》の作者ペトロニウス,百科全書《博物誌》の著者の大プリニウス,《書簡集》を残した雄弁家の小プリニウス,農学書を残したコルメラ,2世紀に入って,《皇帝伝》と《名士伝》を著した伝記作家スエトニウス,哲学者で小説《黄金のろば(転身物語)》の作者アプレイウス,《アッティカ夜話》の著者ゲリウスなどがいる。 詩の分野ではセネカの悲劇のほかに,叙事詩ではルカヌスの《内乱(ファルサリア)》,シリウス・イタリクスの《プニカ》,ウァレリウス・フラックスの《アルゴナウティカ》,スタティウスの《テバイス》と《アキレイス》など,叙事詩以外ではマニリウスの教訓詩《天文譜》,ファエドルスの《寓話》,カルプルニウスCalpurniusの《牧歌》,マルティアリスの《エピグランマ》,それにペルシウスとユウェナリスそれぞれの《風刺詩》などがみられる。…

※「ペトロニウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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