紀元後1世紀のローマの文人。その生涯を伝える正確な資料はほとんど残されていないが,小アジアのビテュニアに総督として赴任し,またコンスル(執政官)の職についたこともあったらしい。官吏としては職務に熱心であったと伝えられるが,昼間は眠っていて夜を仕事と快楽に過ごしたぜいたくな通人として知られていた。皇帝ネロの宮廷にあって〈優雅の判官arbiter elegantiae〉として,皇帝も彼の意に従って行動するほどの信任を受けた。しかしながら他人のねたみを買い,反逆罪の疑いをかけられ自殺した。その最期は,血管を切ったうえ静かに友人と談笑しながら眠るように死についたといわれ,有名になっている。現在断片が残っている小説《サテュリコン》の作者はこのペトロニウスであると一般にみなされている。同一人物であるとすれば,宮廷人でありながら,同時に文学史上特異な作品を残した文才豊かな作家でもあったといえよう。
執筆者:引地 正俊
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ローマ皇帝ネロの廷臣。その著に悪漢小説『サテュリコン』があり,現存するが,当時の社会を知る好史料となっている。なかでも「トリマルキオの饗宴」の部分は有名。
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…ほかにウェレイウス・パテルクルスVelleius Paterculus,クルティウス・ルフスCurtius Rufus,フロルスなどの歴史家の名がみられる。またそのほかの散文作家には,小説《サテュリコン》の作者ペトロニウス,百科全書《博物誌》の著者の大プリニウス,《書簡集》を残した雄弁家の小プリニウス,農学書を残したコルメラ,2世紀に入って,《皇帝伝》と《名士伝》を著した伝記作家スエトニウス,哲学者で小説《黄金のろば(転身物語)》の作者アプレイウス,《アッティカ夜話》の著者ゲリウスなどがいる。 詩の分野ではセネカの悲劇のほかに,叙事詩ではルカヌスの《内乱(ファルサリア)》,シリウス・イタリクスの《プニカ》,ウァレリウス・フラックスの《アルゴナウティカ》,スタティウスの《テバイス》と《アキレイス》など,叙事詩以外ではマニリウスの教訓詩《天文譜》,ファエドルスの《寓話》,カルプルニウスCalpurniusの《牧歌》,マルティアリスの《エピグランマ》,それにペルシウスとユウェナリスそれぞれの《風刺詩》などがみられる。…
※「ペトロニウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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