ラバーブ

デジタル大辞泉 「ラバーブ」の意味・読み・例文・類語

ラバーブ(〈アラビア〉rabāb)

アラビア起源とし、北アフリカから東南アジアまで広く分布する擦弦楽器。弦は1~3本で弓で奏する。撥弦はつげん式のものもある。

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百科事典マイペディア 「ラバーブ」の意味・わかりやすい解説

ラバーブ

アジア,アフリカのイスラム文化圏およびその影響圏で,さまざまに異なった種類の弦楽器に使われるアラビア語の名称。元来弓奏リュートを指す語であったが,撥弦楽器も含む。弓奏リュートとしては,棹と胴がつながった木製の洋梨形のフィドルと,長い棹が胴を突き抜けているスパイク・フィドル(いわゆる胡弓)の二つに大きく分けられる。前者には,北アフリカやトルコのラバーブなどがあり(トルコでは今日ではケメンチェ),インドのサロード(ラボーブrabob,ルバーブrubabとも呼ばれ,撥弦楽器でもある)もこのタイプの楽器である。スパイク・フィドルはさらに,木枠の両面に皮膜を張った共鳴胴をもつもの(これは元来撥弦楽器であった)と,皮膜を張った木や瓢箪などでできた半球形の共鳴胴をもつもの(インドネシアのルバブrebabなど)とに分かれ,北アフリカから東南アジア,東アジアまで極めて広範囲に分布している。一般に膝の上に載せ,上体に斜めにもたせかけるか垂直に立てて弓で弾く。撥弦楽器としては,棹の短いタイプ(アフガニスタンルバーブなど)と長いタイプ(カシュガル・ルバーブなど)がある。
→関連項目カマーンチェ

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改訂新版 世界大百科事典 「ラバーブ」の意味・わかりやすい解説

ラバーブ
rabāb[アラビア]

アジア・アフリカのイスラム文化圏で用いられるリュート型弦楽器の名。この名およびルバーブ,レワーブロバーブなどその変形で呼ばれる弦楽器は構造上1種類に限定されず,地方によってさまざまであるが,共通していえることは,共鳴胴の腹面に動物の革が張られていること,そして大部分が弓奏楽器であることである。第1のタイプは,日本の胡弓のように,長い棹が四辺形または円形の共鳴胴を横から貫通しているもので,アラブベドウィンが用いる1弦のラバーブ・アッシャーイルrabāb al-sha`ir(詩人の胡弓)はその代表的なものである。またココヤシの殻や,ふくべを利用した半球形の共鳴胴をもつ2弦の胡弓はラバーブ・アルムガンニーrabāb al-mughanni(楽師の胡弓)と呼ばれる。後者と同じ構造をもつインドネシアの胡弓はルバーブrebābと呼ばれている。第2のタイプは,北アフリカのアラブの間で行われるアンダルス音楽で用いられるラバーブで,異なる構造をもち,棹は短く胴は舟底形で2弦の弓奏楽器である。撥弦楽器のラバーブもあり,中央アジアから中国の新疆ウイグル自治区にかけて椀形の共鳴胴に羊または蛇皮を張った長い棹のリュートがやはりこの名で呼ばれている。カシュガル・ルバーブ,シュグナン・ルバーブ,パミール・ルバーブがそれであり,中国語では〈熱瓦普〉〈熱布卜〉などと表記される。これらはみな撥弦楽器である。もう一つの撥弦楽器はアフガニスタンに見られロバーブrobābまたはルバーブrubābと呼ばれるが,これは舟底形の共鳴胴をもったリュートである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラバーブ」の意味・わかりやすい解説

ラバーブ
らばーぶ
rabāb アラビア語

イスラム諸国を中心に広範囲に分布するリュート属弦鳴楽器の総称。弓奏ラバーブと撥弦(はつげん)ラバーブとに大別される。

 弓奏ラバーブの代表は、長い棹(さお)が胴を貫いて脚棒として下に突き出したスパイク・フィドル型で、北アフリカ、西アジア、東南アジアにみられる。木、ヒョウタンヤシの殻などでつくられる共鳴胴の形は長方形、半球形、逆三角形とさまざまで、表面には羊や水牛の皮膜が張られる。弦(おもに金属製)の数は1~3本で、奏者は脚棒を膝(ひざ)や床の上に置いて垂直に構え、馬の尾毛などを張った弓で擦弦する。また北アフリカには、木製舟形胴をもつ短い棹の弓奏ラバーブ(2本の羊腸弦)もみられる。

 撥弦ラバーブには、中央アジアの突起胴で長い棹をもつタイプと、アフガニスタンや南アジアのくびれ胴で短い棹をもつタイプとがある。前者には5~6本の旋律弦、後者には3~6本の旋律弦、2~4本の持続弦、10本前後の共鳴弦が張られ、どのタイプも小さな木製プレクトラム(義甲)で撥弦される。

[山田陽一]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラバーブ」の意味・わかりやすい解説

ラバーブ
rabāb

アラブ語で擦弦楽器一般を意味する。イスラム圏の各地のいろいろな形の弓奏楽器がこの名で呼ばれているが,特に次の楽器が代表的。 (1) 舟の形で皮張りの胴と,それと一続きの太い棹をもつ短い2弦のもの。マグレブのアンダルース音楽の合奏で重要な楽器。 (2) 平たく浅い胴の両面に皮を張り,細長い棹を貫き通した形の弓奏楽器。胴が矩形で1~2弦のものは古くからベドウィン人の間で使われていた。胴が丸く1弦のものは北アフリカのベルベル人の間でよく使われる。 (3) 椀形の胴に皮を張った2弦のもの。西アジアでカマンチェと呼ばれるもの。 (4) インドネシアのガムランで使われるもの。普通ルバーブと呼ばれる。なお,アフガニスタン,中央アジア,インドのカシミール地方で,舟形でくびれのある皮張りの胴に短い棹をもつ撥弦楽器がこの名で呼ばれることがあるが,正確にはルバーブまたはロバーブと呼び,擦弦楽器のラバーブとは区別すべきである。

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世界大百科事典(旧版)内のラバーブの言及

【カマーンチェ】より

…奏者は棹の先端(中子先(なかごさき))を左膝上につけて楽器を支え,中国や日本の胡弓のごとく,右手の掌を上向きにして弓を持ち毛の張力を加減しながら左右にこする。これとほぼ同形の楽器がまた地方によって別名で呼ばれることもあり,ギチャク(アフガニスタン),ジョーザ(イラク),ウクルグ(トルコ),ラバーブ(エジプト)などがその代表的なもの。 トルコのケメンチェはカマーンチェのトルコ語形であるが,楽器の形態はいちじるしく異なり,西洋梨を縦割りにしたような形のネック型リュートである。…

※「ラバーブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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