改訂新版 世界大百科事典 「ランドー」の意味・わかりやすい解説
ランドー
Walter Savage Landor
生没年:1775-1864
イギリスの詩人,散文家。学校当局と衝突してオックスフォード大学を中退。旧家の出で財産があったため職につかず,後半生はイタリアのフィレンツェで送った。深い古典の教養の持主であったが貴族趣味で気難しく,多くの知友とけんか別れをする一方,その一徹で誇り高い気質で尊敬もされた。詩人としてはロマン的な長詩や歴史劇の大作があるが現在では忘れられ,むしろ整った形式と高雅な語法を用いたいくつかの短詩によって記憶されるにすぎない。しかし散文家としては一代の名匠であり,その代表作《空想対話編》5巻(1824-29),《ギリシア・ローマ対話編》(1853)は,ペリクレスとアスパシア,ダンテとベアトリーチェからカルバン,ルイ14世にいたる古今の有名人の対話をみごとな文章で創作したもの。政治的・哲学的内容よりもそれらの対話の場面を想像させる手腕のさえによって味わいが深い。
執筆者:海老根 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報