翻訳|ribosome
細胞質中にあり、粗面小胞体の膜の表面に付着した小さな顆粒(かりゅう)をいう。リボソームともよぶ。この顆粒は直径が約150オングストローム、リボ核酸(RNA)とタンパクとからなるリボ核タンパク(RNP)で、発見者のアメリカの細胞生物学者、パラーデの名を冠してパラーデの顆粒ともよばれた。リボゾームには、膜に付着したものと、膜から遊離したものとがある。粗面小胞体のリボゾームは主として分泌タンパク(消化酵素やタンパク性ホルモンなど)を合成し、遊離のリボゾームは細胞の構成に必要な構造タンパクを合成する。分裂の盛んな胎生期の未分化細胞には遊離のリボゾームが多い。リボゾームは数個が集まって螺旋(らせん)状に配列し、リボゾームの集合体をつくることが多く、これをポリゾームとよぶ。リボゾームは大亜粒子と小亜粒子が重なり、だるまのような形をしている。核DNAの情報を担った細い糸状の伝令RNAが、リボゾームを通り抜けるとき、その情報に従い細胞に特有なタンパクを合成する。
[小林靖夫]
細胞分画法でミクロゾーム画分に含まれ、界面活性剤処理により、遊離のモノゾームまたは複数のモノゾームがメッセンジャーRNA(mRNA)と結合したポリゾームとして分離される。リボゾームは高度に特殊化した複雑な構造を有する。もっともよく研究された大腸菌の場合、総分子量約250万、沈降定数70Sであり、マグネシウムイオン(Mg++)を除くと、2個の扁平(へんぺい)な亜粒子(サブユニット)50Sと30Sとに解離する。これら大小の亜粒子は、さらに成分RNAとタンパク質に分けられる。50S亜粒子は約31種のタンパク質と2種のRNA分子(23Sおよび5SリボゾームRNA)を含み、30S亜粒子は21種のタンパク質と16SリボゾームRNAを含む。総重量の60~70%をRNAが占める。動物の細胞では、遊離のリボゾーム(可溶性画分)と粗面小胞体とよぶ膜状構造に結合したものとがある。粒子も細菌のものよりやや大きく80Sであり、解離した亜粒子は大小それぞれ60Sと40Sである。
タンパク質合成工場としてのリボゾームでは小粒子側でmRNAと結合し、大粒子側に結合するアミノアシル化された転移RNA(tRNA)と呼応してmRNA上に組み込まれた遺伝情報を忠実に翻訳translationしてポリペプチド鎖につないでいく。このように、リボゾームは細胞にとって不可欠かつ主要な細胞小器官(オルガネラorganelle)であり、ちなみに細菌細胞1個は約2万個のリボゾーム粒子をもつという。すなわち、細菌の全タンパク質量の約10%を占め、RNAについてみると、リボゾームRNA(rRNA)は全RNAの80%にも達するわけである。
単離したリボゾームをさらに個々のRNAとタンパク質成分に解離後、これらを混ぜて再構成することが可能である。1968年(昭和43)野村真康(1927― )らは、大腸菌30S亜粒子について、16SRNAと21種の成分タンパク質を混ぜ、それらが自発的に再集合して完全な活性をもつ30S亜粒子となることを発見した。この実験は、リボゾーム(あるいは一般に細胞内の複雑なオルガネラ)を正しく構築するのに必要な情報はすべてその成分の構造自体に含まれていて、他の因子とかエネルギーとかを必要としない自己集合過程であることを示した点できわめて意義深い。
[入江伸吉]
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