リンパ球(読み)リンパキュウ

デジタル大辞泉 「リンパ球」の意味・読み・例文・類語

リンパ‐きゅう〔‐キウ〕【リンパ球】

白血球の一。骨髄で生成され、リンパ節胸腺などで分化成熟・増殖し、免疫を担当する。B細胞Bリンパ球)・T細胞Tリンパ球)がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リンパ球」の意味・わかりやすい解説

リンパ球
りんぱきゅう

血球一種で、免疫能を担当する細胞ギムザ染色では、好中球よりやや小形の円い細胞で、原形質は薄青色、核周辺は明るい。核は濃く染まるが、細く鋭い切れ込みがあるものが多い。小リンパ球、大リンパ球の別があるが、顆粒(かりゅう)球のようにペルオキシダーゼは含有しない。運動能は白血球のうちでいちばん弱く、貪食(どんしょく)能力は通常はみられない。血液1立方ミリメートル中に1500~2500個ある。

 リンパ球は骨髄内で造血幹細胞からつくられてリンパ芽球となり、成熟して一部は胸腺(きょうせん)を通ってTリンパ球となり、胸腺とリンパ節の傍皮質領域に分布する。また一部はブルザ相当器官(おそらく腸管リンパ節)を通ってBリンパ球となり、リンパ節では濾胞(ろほう)、髄質に分布する。血液中ではTリンパ球が75%で、ヒツジ赤血球ロゼットを形成するところから判別される。残りの25%はBリンパ球で、抗原レセプターの存在から判別される。また、どちらの性格ももたないものはナルNull細胞といい、免疫学的に機能のない幼若リンパ球である。Bリンパ球は必要に応じて形質細胞などの分泌細胞に変化して免疫グロブリン抗体グロブリン)を分泌して侵入する抗原に立ち向かう(体液性免疫)。Tリンパ球は、ツベルクリン反応のような遅延型アレルギー反応、移植免疫、目標となる細胞を攻撃する作用などをもち、かつBリンパ球の機能を調節する働きももつ(細胞性免疫)。生体にとって有害な抗原物質が侵入すると、リンパ球は分裂して数を増しながらTリンパ球とBリンパ球が協力して抗原物質を無害なものにする。これに顆粒球、単球(マクロファージ)も貪食能をもって協力しあっている。

[伊藤健次郎]

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百科事典マイペディア 「リンパ球」の意味・わかりやすい解説

リンパ球【リンパきゅう】

生体の免疫反応を担う一群の血球の総称。リンパ液の主要な有形成分をなす。脊椎動物では胸腺で成熟するT細胞と骨髄(鳥類ではファブリキウス嚢)で成熟し,抗体を産生するB細胞に大別される。T細胞はさらに,免疫応答を調節するヘルパーT細胞と,ウイルスに感染した細胞などを排除するキラー(細胞傷害性)T細胞に分かれる。T細胞,B細胞のどちらにも属さないナチュラルキラー細胞もリンパ球の一種と考えられている。→キラー細胞
→関連項目アデノシンデアミナーゼ拒絶反応サイトカイン細胞性免疫多田富雄白血球無輸血手術リンパ系リンパ節

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世界大百科事典 第2版 「リンパ球」の意味・わかりやすい解説

リンパきゅう【リンパ球 lymphocyte】

ガラスやプラスチック面を遊走するとき,細胞小器官のなかで核を先頭にして移動するという運動形態学的共通性を備えた血液中の細胞群の総称で,免疫過程において重要な役割をはたす。脊椎動物では,胸腺由来のT細胞thymus derived cell(Tリンパ球),および鳥類のファブリキウス囊bursa fabriciiないし骨髄bone marrow由来のB細胞(Bリンパ球)に大別される。また大きさから,小リンパ球(直径6~8μm,成熟リンパ球)と大リンパ球(直径8~16μm,小リンパ球の幼若型あるいは若返り型)に分類される。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リンパ球」の意味・わかりやすい解説

リンパ球
リンパきゅう
lymphocyte

直径が7~12μmの球形の細胞で,リンパ組織のおもな構成分である。大リンパ球と小リンパ球がある。末梢血白血球に占めるリンパ球は約 30%,リンパ液の場合はほとんどリンパ球で占められている。小型の丸い核をもち,細胞質は少い。細胞質は透明で好塩基性は認められないが,アズール顆粒をもつ。能動的な運動性を示し,食作用を行うリンパ球もある。リンパ球は生体防御にあずかる重要な細胞で,大きく分けて,骨髄由来で液性免疫に関与するB細胞 (Bリンパ球) と,胸腺由来で細胞性免疫に関与するT細胞 (Tリンパ球) とがある。

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栄養・生化学辞典 「リンパ球」の解説

リンパ球

 免疫細胞ともいう.白血球の大部分を占める細胞で,リンパ節,脾臓,胸腺,消化管壁,骨髄などに存在.

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世界大百科事典内のリンパ球の言及

【白血球】より

…骨髄で産生され,独特の運動性をもち,貪食能も強い。(3)リンパ球lymphocyte 血液1mm3あたり1500~4000個あって,白血球の約35%を占める。大きさに大中小があり,骨髄のほかリンパ節や脾臓でも産生される。…

【胸腺】より

…最下等の脊椎動物である無顎類(円口類)では,明確な胸腺は認められない。無顎類のうち,ヤツメウナギの幼生では,鰓囊上皮域にリンパ球の小集団があるが,これが原始胸腺であるとは断定できない。【村松 繁】
[ヒトの胸腺]
 ヒトの胸腺は胸骨の直後,心臓の前上方に位置する扁平な器官で,左右両葉に分かれるが,正中線でたがいに癒着している。…

【血球】より

…無脊椎動物の血球は一定の細胞回転をとらずランダムに産生されるが,一部の進化した動物群では脊椎動物の造血に類似した細胞回転のあることが知られている。鳥類までの脊椎動物の血球は,最も未分化な円口目メクラウナギ類を除き,赤血球,リンパ球と顆粒(かりゆう)球(この二つを合わせて白血球ともいう)および栓球の4種類が区別される。形態学的に,これらの動物では赤血球と栓球はともに有核細胞で,ともに血管内で産生される。…

【抗原認識】より

抗原が生体に侵入すると,免疫系の中心をなす種々のリンパ球が刺激されて増殖し,種々の機能を現すようになり,免疫が成立する。抗原刺激に対するこのような免疫応答は,その抗原に特異的であり,ひとつひとつの抗原に対しては,それぞれきわめて限定された少数のリンパ球のみが反応する。…

【白血球】より

…無脊椎動物の白血球には,ホシムシ類の壺状体,環形動物の含糸細胞,甲殻類の爆発細胞,棘皮(きよくひ)動物の結晶構造など,きわめて特徴的な形態を示すものがある。脊椎動物の広義の白血球は,顆粒球,単球,リンパ球,形質球など,赤血球と血小板を除いた血中成分をいうが,狭義には顆粒球と単球をいう。ともに血管外の造血器(組織)内の幼若細胞より作られ,比較的幼若型で血管内に入り,全身に散布される。…

【免疫細胞系】より

…免疫応答に関与する細胞の総称。抗原の特異性に対応した,いわゆる特異的免疫を分担しているのはリンパ球であるが,非特異的免疫はおもにマクロファージとナチュラルキラー細胞の役割である。これらの細胞系は独立に働くこともあるが,相互作用によって機能を発現することが多い。…

※「リンパ球」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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