動脈は生活環境の変化に応じて、拡張や収縮を繰り返しています。動脈の収縮が過剰に起こると、発作的に手足の指先の血流が減少し、冷感を感じたり皮膚の色調に変化が生じます。これをレイノー現象といいます。そのなかで原因となる疾患がないものがレイノー病です。
40歳以前の女性に多くみられ、一般的に予後は良好であり、緊急処置を要することはありません。
寒冷刺激や精神的ストレスで、四肢末端の小動脈に発作的に起こるけいれん(れん縮、スパスム)が原因です。なぜ小動脈に過度のけいれん発作が生じるのかは不明ですが、交感神経の刺激や副交感神経中枢の異常によると考えられています。
症状は秋から冬に多くみられ、症状が左右対称に起こります。
皮膚症状は、末梢循環障害が現れてから回復に至るまでに三相性の変化を示します。突発的に手指が蒼白になり、次いで紫色に変色し、通常10~30分の経過で赤色になり正常に回復します。なかには蒼白のみを示したり、しびれ感や疼痛などを訴える場合もあります。
まれですが、重症な場合は指先の潰瘍や変形を起こすことがあります。
医師は症状からレイノー現象を考えます。次いで、血液検査や血管造影などにより
左右対称に突然皮膚の色調の変化が生じ、ほかに原因と考えられる疾患がない時にレイノー病と診断します。
軽症の場合には、防寒、禁煙、十分な睡眠などの予防が中心となります。治療は対症療法が基本で、軽い鎮静薬や、さまざまな種類の血管拡張薬が用いられます。
重症の場合には、交感神経切除術が行われます。
発作時以外には臨床的な問題はありませんが、症状の繰り返しを避けるための予防に努めます。
手袋を着用するなど十分な防寒を行い、精神的なストレスを避け、禁煙を心がけます。抗ヒスタミン薬やカフェインは症状を悪化させるので注意が必要です。
原因となる基礎疾患があるレイノー症候群との区別が重要ですが、当初は基礎疾患が不明であっても、数年後に膠原病などの病気が明らかになることがあります。主治医と相談しながら、経過を追っていくことが必要です。
丹羽 明博
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
レイノー症候群のうち、基礎疾患が認められず、四肢の小動脈の機能的な収縮によっておこるものをいい、一次性レイノー症候群ともいう。
若い女性に多く、男性の約4~5倍で、20歳前後の発症例が過半数を占めている。徐々に発症し、初めは指先だけにおこるが、やがて指全体に広がる。多くの場合、手の指に発症するが、ときには足の指にもみられる。両手足に対称性に出現し、皮膚の色調が蒼白(そうはく)、チアノーゼ、あるいは紅潮などに変化し、同時にしびれ感、疼痛(とうつう)、灼熱(しゃくねつ)感を伴うことが多い。寒冷になる季節や環境、また情緒刺激で症状が悪化し、月経時に増悪することもある。長期間経過した症例では、皮膚の肥厚や手足の指の先端に潰瘍(かいよう)を生ずることがまれにある。
治療法としては、誘因となる寒冷刺激を避けるような日常生活の管理や、症状の変化に対する不安感を取り除くことがたいせつで、必要があれば鎮静剤を投与する。薬物療法としては血管拡張剤が使用されるが、効果は一時的である。進行性潰瘍の形成が認められる症例に対しては、交感神経切除術が行われることもある。
[木村和文]
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