翻訳|reggae
ジャマイカのポピュラー音楽およびダンスのスタイルの一種。二拍子系で後拍にアクセントがあるリズムと、社会への不満やラスタファリ運動(アフリカ回帰をスローガンとする宗教的性格の強い運動)への共感が織り込まれている、メッセージ性に富んだ歌詞をもつことに特色がある。初期にはアコースティック・ギターと打楽器類が中心であったが、近年では電気ギターやキーボードなどの電気楽器が多用される。その起源は、同地にもともとあった二拍子系の舞曲メントmentoなどが、アメリカ合衆国南部の黒人音楽の影響を受けたものといわれている。それが1960年代にはスカskaに、さらに70年前後からレゲエにと発展し、またこのころからジャマイカ以外にも知られるようになった。当時、アメリカなどを中心とするポピュラー音楽界では、単に技巧に走った音楽が多かったため、メッセージ性をもったレゲエの登場は大きな衝撃を与えた。以後ニューヨーク、ロンドンなどを中心に、世界のポピュラー音楽に影響を与え続けている。代表的な音楽家にボブ・マーリィBob Marley(1945―81)、ジミー・クリフJimmy Cliff(1948― )、グループにサード・ワールド(1973結成)らがいる。
[田井竜一]
『田川律・菅原光博著『レゲエ・ジャマイカの風と光』(1985・音楽之友社)』▽『スティーヴン・ディヴィス著、大橋悦子訳『ボブ・マーリー』(1986・晶文社)』▽『レナート・E・バレット著、山田祐康訳『ラスタファリアンズ』(1996・平凡社)』▽『ブライアン・ジャーン著、谷田博幸訳『レゲエ・アイランド』(1996・平凡社)』
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カリブ海のジャマイカで興った新しい大衆音楽。伝統的な黒人のダンス音楽に,アメリカのソウル・ミュージックなどの影響が加わって,1960年代後半に形成された。ボブ・マーリーBob Marley(1945-81)を中心としたザ・ウェーラーズThe Wailers(のちにボブ・マーリー・アンド・ザ・ウェーラーズ)のアルバム《キャッチ・ア・ファイアCatch A Fire》が作られた72年をもって,レゲエが一定の音楽的成熟に達した年とみてよいだろう。そのころにはアメリカのポピュラー音楽にもレゲエの影響を取り入れたものが現れ始め,イギリスのロック・ギター奏者エリック・クラプトンEric Clapton(1945- )がマーリーの作品《アイ・ショット・ザ・シェリフI Shot The Sheriff》を取り上げたのがきっかけとなって,アメリカとヨーロッパでのマーリーの人気が急上昇し,レゲエは国際的に注目されるようになった。ロンドンにジャマイカ人移民が増加したこともあって,70年代後半からイギリスを本拠とするレゲエ・ミュージシャンも続出した。80年代に入ると,トーストtoastもしくはDJと呼ばれる,風刺性に富んだ,メロディのない早口言葉のようなボーカル・スタイル,ラバーズ・ロックlovers rockと称するラブ・バラッド的なものなど多様化し,世界のポピュラー音楽に広範な影響を及ぼしている。
レゲエの背景として,エチオピアの皇帝ハイレ・セラシエを救世主とみる一種のメシア信仰,ラスタファリ思想Rastafarianismが存在する。これはアフリカ回帰を基調とした民族主義だが,精神主義的傾向の強い特異な体質をもったものである。
執筆者:中村 とうよう
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