通常,発音しにくい文句,せりふ,俗謡などをまちがえずに早口でいって遊ぶ言語遊戯の一つ。またその文句をいい,〈早口〉〈早口そそり〉〈早言(はやこと)〉〈早ことば〉などとも称する。ただし,舌をかみそうなことばを続けていうものをとくに〈舌もじり〉,必ずしも発音は難しくないがもっぱら早く唱えることに主眼を置くものを〈早口ことば〉として区別することもある。〈赤巻紙黄巻紙〉〈生麦生米生卵〉〈隣の客はよく柿食う客〉〈蛙ぴょこぴょこ三ぴょこぴょこあわせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ〉などが最もポピュラーな例で,m音,g音,k音,p音などの繰返し,ないしはそれらの重複による発音の困難さを利用したものが多いことがわかる。日本に限らず外国にもあり,英語のtongue twister,jawbreakerがそれにあたる。マザーグースには〈Shall she sell seashells on the seashore?〉ほか,3回唱えるとしゃっくりがとまるという次のような呪文めいたものがある。〈Peter Piper picked a peck of pickled pepper……〉。近くはアナウンサーの訓練に採り入れられているように,古来洋の東西を問わず子どもの発音練習としても早口ことばは少なからぬ効用をもったものと思われるが,これが日本では芸能化されて,早物語,外郎(ういろう)売の口上などとして受け継がれてきたことは注目に価する。なお,早口ことばのバリエーションには,早口でいっているうちに意味が違って聞こえてしまうことを楽しむものがあり,〈扇に玉子〉(早く唱えると〈大きんたま〉になる)などがその代表例であり,こっけいな内容のものが多い。
執筆者:松宮 由洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
正確に発音しにくかったり、語呂(ごろ)がよくておもしろい一連の決まり文句を、間違えずに早口にいう言語遊戯、また、その文句。「早口」「早言(はやごと)」「早口そそり」ともいい、遊びのほか、アナウンサーの訓練など発音練習にも利用される。発音が混乱しやすい「舌もじり」と、早口で唱えることが主眼の「早口言葉」とに区別することもある。「生麦生米生卵(なまむぎなまごめなまたまご)」「青巻紙赤巻紙黄巻紙(あおまきがみあかまきがみきまきがみ)」「書写山(しょしゃざん)の社僧正(しゃそうじょう)」「隣の客はよく柿(かき)食う客だ」など類音が連続・接近して発音しにくいものや、「李(すもも)も桃(もも)ももう売れた」「瓜(うり)売りが瓜売りにきて瓜売れず売り売り帰る瓜売りの声」などの同音反復・畳語(じょうご)の類、「神田鍛冶町(かんだかじちょう)角の乾物屋で買った勝栗(かちぐり)堅くて噛(か)めない返して帰ろう」のように類音の語句を並べて楽しむものなどがある。なお、「扇に玉」のように、早口でいうと別の滑稽(こっけい)な言葉に聞こえる変種もある。
同趣の言語遊戯は、イギリスのtongue twisterや中国の「早口令」など諸外国にもある。日本では、古くから畳語を用いた歌謡や「早歌(はやうた)」「早物語(はやものがたり)」など早口で言い立てる芸能があり、とくに江戸時代には歌舞伎(かぶき)『外郎売(ういろううり)』の口上や端唄(はうた)、落語、黄表紙、狂歌などにより流行した。
[清水康行]
『綿谷雪著『言語遊戯の系譜』(1964・青蛙房)』▽『鈴木棠三著『ことば遊び』(中公新書)』
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