翻訳|Lepcha
シッキムの最古の住民といわれるレプチャ族の言語。シッキムのほか西ブータン,東ネパール,ダージリンなどでも話される。自称はロン語Rong。チベット・ビルマ系の言語(チベット・ビルマ語派)と認められるが,詳しい所属関係はまだ決定されていない。単音節を主体とするS-O-V(Sは主語,Oは客語(目的語),Vは動詞)型言語で,kǎ-,tǎ-,pǎ-,sǎ-などの接頭詞が使われる。例:sǎ-tsǔk(太陽),sǎ-ar(山羊)。動詞は人称・数では変化しない。命令形には-oをつける。例:dí-o(来い)。動詞にはa-を,形容詞にはa-と-mをつけて名詞を構成する手順がある。例:thí(到着する)-a-thít(到着),tí(大きい)-a-tim(大)。また形容詞は名詞の後に置かれる。例:白馬ou a-dum(馬←白)。数詞は二十進法である。チベット語に近い語形が多く含まれるが,それらは借用語と考えられ,ほかにチベット・ビルマ系言語とかけ離れた単語形式をもつところから,モン・クメール語の基層を主張する人もいる。18世紀初頭以来,チベット文字を改変したレプチャ文字が使われている。
執筆者:西田 龍雄
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シッキムを中心に東ネパール、西ブータンなどで話される言語。ロン語ともいう。19世紀に文法書・辞典がつくられているが、その所属系統に諸説があり、ヒマラヤ語系、北ナガ語系に入れたり、テングサ語に近いとする。また、基層言語として、モン・クメール諸言語をあてる場合もある。単音節語を主体とし、主語・目的語・動詞の順に並べられ、名詞に格助詞がつき、形容詞は名詞のあとに置かれる。「白い馬」は、馬←白い、「よい人」は、人←よいとなる。語彙(ごい)には古いチベット語からの借用語を多く含む。18世紀初頭につくられたレプチャ文字は、チベット文字より複雑な字形をもつが、通説では、その起源はチベット文字(無頭字)に求められる。
[西田龍雄]
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…ネパールの東端からインドのダージリン,シッキム州にかけて居住するモンゴロイド系民族。推定人口6万。彼らは現居住地域の原住民とされ,とくにシッキムの山や川の名にはレプチャ語に由来するものが多い。しかし17世紀のボーティア(チベット)人の侵入によるシッキム王国の樹立以後,彼らに服属することになり,宗教もラマ教(紅帽派)を奉じ,生活様式もチベット化した。さらに18世紀以降のネパール人の東方進出によって,ますます少数民族と化していった。…
※「レプチャ語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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