ロージー(読み)ろーじー(その他表記)Joseph Losey

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロージー」の意味・わかりやすい解説

ロージー
ろーじー
Joseph Losey
(1909―1984)

アメリカ出身のイギリスの映画監督。ウィスコンシン州に生まれる。劇評家、舞台演出家、記録映画監督を経て、1949年RKOと契約、『緑色の髪の少年』(1948)、『暴力の街』(1950)などを発表。その社会的関心、分析的興味から一部の注目を集めるが、「赤狩り」の災いを被り、1953年イギリスに亡命。劇作家ハロルド・ピンターの脚本による『召使』(1963)、『できごと』(1967)、『恋』(1971)で国際的な名声を獲得、イギリス中産階級の退廃を描きながら、冷たく厳しいスタイルで人間の弱点を容赦なくとらえた。ほかに『エヴァの匂(にお)い』(1962)、『銃殺』(1964)、『暗殺者のメロディ』(1972)など。

[宮本高晴]

資料 監督作品一覧

緑色の髪の少年 The Boy with Green Hair(1948)
暴力の街 The Lawless(1950)
不審者 The Prowler(1951)
大いなる夜 The Big Night(1951)
拳銃を売る男 Stranger on the Prowl(1953)
二つの顔をもつ男 A Man on the Beach(1955)
非情の時 Time Without Pity(1957)
狙われた男 Blind Date(1959)
コンクリート・ジャングル The Criminal(1960)
エヴァの匂い Eva(1962)
呪われた者たち The Damned(1963)
召使 The Servant(1963)
銃殺 King & Country(1964)
唇からナイフ Modesty Blaise(1966)
できごと Accident(1967)
夕なぎ Boom(1968)
秘密の儀式 Secret Ceremony(1968)
雪崩 Figures in a Landscape(1970)
恋 The Go-Between(1971)
暗殺者のメロディ The Assassination of Trotsky(1972)
人形の家 A Doll's House(1973)
愛と哀しみのエリザベス The Romantic Englishwoman(1975)
パリの灯は遠く Mr. Klein(1976)
ドン・ジョヴァンニ Don Giovanni(1979)
鱒(ます) La truite(1982)
スチームバス 女たちの夢 Steaming(1985)

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改訂新版 世界大百科事典 「ロージー」の意味・わかりやすい解説

ロージー
Joseph Losey
生没年:1909-84

アメリカの映画監督。テレビと赤狩りによって崩壊したハリウッドの一時代を象徴する映画作家であり,第2次世界大戦後にデビューした大学出身のインテリ監督の第一世代として知られる。しかし1930年代のロシア旅行や労働者演劇の推進,また東ドイツへ帰国したブレヒト親友といった〈共産主義的な過去〉ゆえに,非米活動委員会のブラック・リストにのせられてヨーロッパに亡命,初期の意欲作《緑色の髪の少年》(1948)ほか4本をハリウッドに残したのみで,以後はついに1本もアメリカ映画を撮らなかった。亡命初期はイタリアやイギリスでアンドレア・フォルサーノなどの匿名での映画づくりを余儀なくされたが,硬質の犯罪映画《コンクリート・ジャングル》(1960,イギリス)などで注目を集め,《エヴァの匂い》(1962,フランス),《召使》(1963,イギリス),《できごと》(1967,イギリス),《恋》(1971,イギリス)など,おもにハロルド・ピンターの脚本を得て60年代の世界映画をリードし,偽善,裏切り,罪の意識などを鋭く描き出した。70年に入っての《パリの灯は遠く》(1976)はアラン・ドロンの最良の演技の一つとして記憶される。遺作となった《鱒》(1981)の撮影のため来日もしている。
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百科事典マイペディア 「ロージー」の意味・わかりやすい解説

ロージー

米国の映画監督。ウィスコンシン州生れ。《緑色の髪の少年》(1948年)でデビューするが,ソ連訪問やB.ブレヒトとの交遊などを問われて非米活動委員会のリストに上り,4作を残したのみで英国に亡命。《エバの匂い》(1962年),T.ウィリアムズの同名戯曲を映画化した《夕なぎ》,トロツキーの暗殺を描いた《暗殺のメロディ》(1972年)などを発表した。優れた心理描写で知られる。《できごと》(1967年)でカンヌ映画祭審査員特別賞,国際批評家連盟賞を受賞。
→関連項目シュナイダードロンドン・ジョバンニ

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世界大百科事典(旧版)内のロージーの言及

【M】より

…S.クラカウアーは《M》を分裂した自我の象徴として《プラーグの大学生》(1913,26),《カリガリ博士》(1919)の系譜に位置づけ,病的な衝動に服従する主人公に,当時台頭しつつあったナチズムを迎え入れるドイツ人の内面的なパターンを見いだした。翌年ラングはヒトラーの迫害を逃れてパリに亡命するが,51年,マッカーシイズム旋風の中でJ.ロージーがヨーロッパへの亡命を余儀なくされる直前に,《M》を再映画化しているのは偶然の符合にしても興味深い。【高崎 俊夫】。…

※「ロージー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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