モーツァルトが1787年に作曲した全2幕のオペラ・ブッファ(K.527)。同年10月プラハの国民劇場においてモーツァルト自身の指揮で初演された。ドン・フアン伝説を素材にしたダ・ポンテLorenzo da Ponte(1749-1838)のイタリア語の台本による。ドン・ジョバンニが,オッタビオの許婚者ドンナ・アンナや村の娘ツェルリーナを誘惑しようとして失敗,ついには,決闘で刺殺した騎士長(ドンナ・アンナの父)の石像によって地獄におとされる,という筋書からなる。モーツァルトのオペラの中でも最も劇的な作品であり,ブッファと名づけられていても喜劇ではなく,またドン・ジョバンニの死をもって終わるといえども悲劇でもなく,きわめて特異な性格をもつ。全曲の中でも序曲,従者レポレロの《カタログの歌》,ドン・ジョバンニの《セレナード》,ツェルリーナのアリア《ぶってよ,マゼット》などがとくに親しまれている。日本初演は1948年に帝国劇場で,藤原歌劇団,M.グルリットの指揮で行われた。なお,モーツァルトの作品のほかに,ドン・フアン伝説に基づいた音楽作品としては,R.G.シュトラウスの交響詩《ドン・フアンDon Juan》(1888)が名高い。シュレジアの詩人N.レーナウの未完の詩《ドン・フアン》に基づき,理想の追求,女性の美と愛などをテーマとした詩の内容を自由な幻想曲の形式で表現した作品。
執筆者:国安 洋
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モーツァルト作曲のオペラ(K527)。二幕26曲。スペインのドン・ファン伝説をもとに、ロレンツォ・ダ・ポンテがイタリア語台本を作成、1787年、作曲者自身の指揮でプラハで初演された。会う女性をことごとく誘惑しては捨ててきた主人公ドン・ジョバンニが最後に天罰を受ける物語で、いちおう「喜劇」Dramma giocosoと銘打たれてはいるが、素朴な筋書きのなかに人間性に対する深い洞察がみられる。ドンナ・アンナ、ドンナ・エルビーラ、そしてツェルリーナという3人の女性をはじめ、従者レポレロ、ドン・オッタービオ、そしてマゼットという3人の男性に至るまで、個々の性格とドン・ジョバンニに対する異なる反応ぶりがみごとに描き分けられている。そればかりでなく、モーツァルトの音楽は、夜の墓地の情景や石像が話をしたり歩いたりする超自然的な雰囲気までも、緊迫感をもって鮮やかに浮かび上がらせている。『コシ・ファン・トゥッテ』『フィガロの結婚』『魔笛(まてき)』とともにモーツァルトの四大オペラの一つに数えられているが、この作品では重唱が独唱とほとんど同等の比率を占めているところが特色といえよう。日本初演は1948年(昭和23)藤原歌劇団。
[三宅幸夫]
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