アメリカの化学者。オハイオ州デラウェアに生まれる。1943年16歳で高校を卒業しオハイオ・ウェスレヤン大学に入学。第二次世界大戦中であったため、14か月間の海軍生活を挟み、1948年に卒業。シカゴ大学に進学し、W・リビー(1960年にノーベル化学賞を受賞)のもとで「サイクロトロンで生成された放射性臭素原子の化学的状態」を研究し、1952年に博士号を取得。同年、プリンストン大学講師に就任。1956年カンザス大学助教授、1964年にカリフォルニア大学アーバイン校教授となる。
1970年ころから環境問題に興味をもち始め、フロンの大気に対する影響の研究に着手。1973年にレーザー化学が専門のM・モリーナが研究室に参入して共同研究を始め、1974年に冷媒体などとして用いられるフロンガスが成層圏のオゾン層を破壊している可能性を発表した。この報告を機に、フロンガスの全廃が進んだ。この功績により、モリーナ、P・クルッツェンとともに1995年のノーベル化学賞を受賞した。大気圏におけるメタンガスの濃度上昇が地球温暖化の原因の一つであることも示し、炭水化物やハロゲン化炭素の影響などの研究に取り組んだ。
[馬場錬成 2018年12月13日]
『富永健、巻出義紘、F・S・ローランド著『フロン 地球を蝕む物質』(1990・東京大学出版会)』
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アメリカの物理化学者.シカゴ大学で学位を取得して,プリンストン大学,カンザス大学を経て,1964年カリフォルニア大学アーバイン校の化学教授となる.原子力委員会の後援などを受けながら,核反応によって生じる原子の化学的挙動に関する研究を進めていたが,1973年にはクロロフルオロカーボン(フロンガス,CFC)に関する研究にも,M. Molina(モリーナ)とともに着手し,その年の末には,CFCからの塩素がオゾン層を破壊するという結論に達し,1974年Nature誌にそれを発表した.これが,その後のCFC規制への出発点となった.1985年南極オゾンホールが確認されると,Molinaらとともにその成因を解明し,CFCの影響を明らかにした.これらオゾン層の生成と分解に関する研究によって,1995年Molina,P. Crutzen(クルッツェン)とともにノーベル化学賞を受賞した.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
イギリス,スコットランド中部の低地帯。スコットランド北部のハイランドに対する呼称で,スコットランド低地Scottish Lowlandsともいう。広義にはクライド川河口のダンバートンと北海沿岸のストーンヘブンを結ぶ線より南東側のスコットランド中部・南部全体を指すこともあるが,一般にはダンバー~ガーバン以南の南部高地を省いた地溝帯のみに用いられる。おもにデボン紀砂岩と石炭紀石灰岩から構成され,一部に火山岩や石炭層が露出する。フォース川とクライド川によって潤される平野は酪農が盛んで,また炭田を背景に鉄鋼,造船などの近代工業も立地する。グラスゴー,エジンバラをはじめ都市化が進み,スコットランドの核心地域を形成している。
執筆者:長谷川 孝治
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