改訂新版 世界大百科事典 「ワクモ」の意味・わかりやすい解説
ワクモ (鶏蜱)
Dermanyssus gallinae
ワクモ科のダニ。ニワトリや野鳥に寄生するほか,ヒトを激しく襲ってかゆみを伴った皮膚炎を起こす。世界に広く分布し,日本でも全国的に見られる。体長は0.7mmほどで未吸血時は灰白色ないし褐色であるが,吸血後は1mm以上にもなり,赤褐色から黒色に変ずる。雌によって1日10個ほど産卵された卵は2~3日で孵化(ふか)し,5日間ほどで幼ダニ,第1,2若ダニを経て親ダニとなる。卵と幼ダニ期以外は吸血する。吸血は夜間に行われ,昼間は鶏舎の壁などの隙間や,野鳥の巣内に潜む。動物は刺咬吸血による皮膚炎のほか,貧血,栄養障害ならびに夜間の吸血による不眠などの精神的な障害も大きい。ヒトも吸血の被害を受けるほか,セントルイス脳炎を伝播(でんぱ)されることがある。近似種としてイエダニOrnithonyssus bacoti,トリサシダニO.sylviarumがあり,本種と混同しやすい。
執筆者:金子 清俊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報