一将功成りて万骨枯る(読み)イッショウコウナリテバンコツカル

  • いっしょう
  • 一将
  • 一将(いっしょう)功(こう)成(な)りて万骨(ばんこつ)枯(か)る
  • 功(こう)成(な)りて万骨(ばんこつ)枯(か)る

大辞林 第三版の解説

唐の曹松の詩己亥歳の一節から
一人の大将の功名は、多くの兵士が戦死して骨を戦場にさらした結果である。一人の成功者の陰で、多くの犠牲者が忘れられがちなのを戒めていう。

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精選版 日本国語大辞典の解説

(晩唐の曹松の「己亥歳詩」の「憑君莫話封侯事、一将功成万骨枯」の一句) 一人の将軍が輝かしい功名を立てるかげには、しかばねを戦場にさらす多くの兵士のいたましい犠牲がある。功名をいたずらに将軍や指導者だけのものとするのを怒っていうことば。〔譬喩尽(1786)〕

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ことわざを知る辞典の解説

一人の将軍が手柄を立て功名を上げる陰には、戦場でおびただしい数の無名の兵士が犠牲となり、が朽ちていく。また、一人が功績を上げる陰で、多くの部下が報われず、犠牲となることのたとえとしても使われる。

[使用例] 三つの戦争は、そのときどきの英雄大将を生みつつ一方では日本の街頭廃兵の薬売りの姿を現出し、一将功なって万骨枯る、の思いを与えた[宮本百合子*平和への荷役|1952]

[解説] 中国の曹松の「己亥歳」の一節。この詩は「三体詩」に収録され、江戸時代の知識人に広く知られていました。

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故事成語を知る辞典の解説

一人が功績を上げる陰で、多くの人が犠牲となること。

[使用例] 一将功成りて万骨枯るという古言があります、ひとりの殿様がお城をきずくに、万人の百姓を苦しめました[佐藤紅緑*ああ玉杯に花うけて|1927~28]

[使用例] 三つの戦争は、そのときどきの英雄大将を生みつつ一方では日本の街頭に廃兵の薬売りの姿を現出し、一将功なって万骨枯る、の思いを与えた[宮本百合子*平和への荷役|1952]

[由来] 唐王朝末期の詩人そうしょうの漢詩「がいの歳」の一節。戦乱に苦しめられる庶民の暮らしを心配した上で、「君にたのむ、かたかれほうこうの事を、一将功成りて万骨枯る(お願いだから、軍功を挙げて高い地位を得たいなどと言わないでくれ。一人の将軍が功名を上げる陰で、おびただしい数の人骨が朽ちていくのだから)」とうたっています。

[解説] ❶詩題の「己亥の歳」とは、西暦八七九年。七世紀の初めから約三〇〇年間続き、文明のを誇った唐王朝も、このころには衰退し、各地で反乱が起こっていました。この後、わずか三〇年足らずで、唐王朝は滅亡してしまいます。そんな大混乱の時代、本当に求められているのは人々を困窮から救ってくれる人材なのに、将軍たちは自分の手柄しか考えていない。詩人の熱い義憤が込められた作品だからこそ、人々に愛唱されて、故事成語となったのでしょう。❷元の詩では、犠牲になるのは庶民ですが、現在の日本では、多くは成功者とその部下や協力者の関係を指して使われます。また、曹松の批判精神を受け継ぎ、部下や協力者の存在を忘れて、成功者だけが手柄を独占していることを非難する意味合いで用いられるのがふつうです。

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