一色田(読み)イッシキデン

デジタル大辞泉 「一色田」の意味・読み・例文・類語

いっしき‐でん【一色田】

中世荘園耕地うち公事くじを免除され、年貢のみを上納する田地

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精選版 日本国語大辞典 「一色田」の意味・読み・例文・類語

いっしき‐でん【一色田】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「一色」は一種類の意 ) 荘園内で、年貢だけを朝廷幕府または領主負担して、公事などの負担を免除される田地。一色地。一色不輸田。
    1. [初出の実例]「一色田三十二町九反五代」(出典:金沢文庫古文書‐嘉暦四年(1329)五月日・加賀国軽海郷田数得分等注文(七・五三六五))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「一色田」の意味・わかりやすい解説

一色田
いっしきでん

名田(みょうでん)、給免田(きゅうめんでん)などとともに荘園(しょうえん)を構成する耕地の一種。荘園領主の直属地で、毎年春の勧農のとき農民に割り当てられたので散田(さんでん)ともいわれた。古代以来の公田系譜を引く名田が年貢、雑公事(ぞうくじ)双方を賦課されたのに対し、一色(1種類)の課役(かやく)(おもに年貢)だけを負担すればよかったのでこの名がついた。しかし、斗代(とだい)は名田よりも高かった。後世地名化することが多く、足利(あしかが)氏の一族一色氏は三河国(愛知県)吉良庄(きらのしょう)一色からおこった。

[木村茂光]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一色田」の意味・わかりやすい解説

一色田
いっしきでん

荘園制下,人身的な公事 (くじ) ,諸役を免除されて年貢のみを賦課される田地をいう。一色 (1種類) の物だけを出す田という意味。雑役免田ともいう。一色田はのちに各地で地名化し,一色を家名とする土豪も出現した。室町時代の足利氏の一族である一色氏などはその例である。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「一色田」の解説

一色田
いっしきでん

荘園の地種の一つ。荘園内の耕地は,名田(みょうでん),荘官・寺社などの給免田,一色田からなる。一色田は荘園領主の直属地で,勧農の際に耕作が農民に割り当てられたため,散田ともいった。一色とは一種類の課役の意。名田が年貢・公事(くじ)をともに負担する地種なのに対し,一色田には年貢のみが課されたため,名田に比べて通例斗代(とだい)が高い。一色田のみを耕作する農民は一色百姓ともよばれた。

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世界大百科事典(旧版)内の一色田の言及

【一色】より

…たとえば,一色別納,一色別符といえば,荘園領主あるいは国に対しては年貢(官物)のみを納め,雑公事を免除されていることをいう。また,一色田は,荘園の耕地のうちの荘園領主直属地という意味で用いられることが多いが,これは,名田が年貢・雑公事の双方を負担するのに対して,直属地は年貢のみを負担することに由来する。【中野 栄夫】。…

【免田】より

…この種の免田には所領経営上の職務に対する報酬として,領内寺社,荘官などの下級領主,手工業者などに支給された〈仏神田〉や〈人給(にんきゆう)免〉のほかに,灌漑用水維持のために設置された〈井料免〉や〈高樋免〉などがあった。また公事のみ免除された田地もあり,〈雑役免田〉とか,〈一色(いつしき)田〉と呼ばれた。荘官や郡郷司に与えられた〈給名(きゆうみよう)〉はこの種の免田である。…

※「一色田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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