保険金額が保険契約の目的の価額(保険価額)を下回る損害保険契約をいう。保険価額は,保険契約の目的物件が所在する地におけるそのときの価額である。一部保険は,保険契約者が保険料節約のため保険価額いっぱいに保険金額を設定しないことにより生ずることが多いが,物価上昇により保険価額が増す結果自然と一部保険になることもある。一部保険であった物件が罹災して保険事故が発生した場合,保険者の負担は保険金額の保険価額に対する割合で削減されて定められ(商法636条),この方式は〈比例塡補(てんぽ)〉と呼ばれる。たとえば,保険価額100万円の物件に保険金額60万円の損害保険契約が締結されていて,保険事故が発生した事例では,損害額100万円の全損であった場合でも60万円,また損害額が50万円の分損であったときは,特約がないかぎり,が保険金となる。
これに対して,保険金額と保険価額との関係で,保険金額と保険価額とが等しい損害保険契約である場合を全部保険といい,保険金額が保険価額を超えるときを超過保険という。超過保険においては,保険価額を超過した部分は無効とされ(商法631条),保険契約の一部無効とされた部分については,保険契約者および被保険者が善意でかつ重過失がないときに限り,超過部分の割合に応じて保険料の一部の返還を求めることができる(商法643条)。たとえば,保険価額200万円の物件について250万円の保険金額を設定した契約が全損事故になっても,200万円の保険金が支払われるにとどまり,保険事故により被保険者が不当の利得を得られないことにしている。
執筆者:高木 秀卓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
損害保険において、保険価額(事故発生によって被るおそれのある損害の最高限度の額)以下の保険金額で保険をつけた場合、言い換えれば、約定保険金額が保険価額の一部にとどまる場合をいう。一部保険が生ずるのは、保険料を節約する場合や、あるいは保険契約締結後に保険価額が騰貴した場合などである。一部保険では、保険事故が発生したとき、保険者(保険会社)の填補(てんぽ)責任は、原則として保険金額の保険価額に対する割合によって定まる。すなわち保険者は、発生した損害額に保険金額の保険価額に対する割合を乗じた金額――損害額×(保険金額÷保険価額)――を支払うこととなり、損害額の残額は被保険者の負担となる。保険者の負担額の決定に際しては、保険事故発生の時および場所における保険価額と、保険金額とを比較して定めるのを原則とする。なお、定額保険である生命保険では、一部保険ということはない。
[金子卓治]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 自動車保険・医療保険のソニー損保損害保険用語集について 情報
…なお,保険金額が保険価額を超えた場合,これを超過保険といい,超過部分は無効となる。また,保険金額と保険価額が一致している場合を全部保険,保険金額が保険価額を下回る場合を一部保険という。保険価額の評価は,社会通念による客観的な判断を基準とすべきであり,商法は,保険会社が塡補すべき損害の額を,原則として,損害が生じた地におけるそのときの保険価額に基づいて算出することとしている(638条)。…
※「一部保険」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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