被保険利益の評価額。損害保険において、保険の目的について保険事故が発生することにより被保険者が経済上の損害を被るおそれのある場合に、被保険者は被保険利益を有するという。損害保険契約では原則として、被保険者が保険事故の発生に際し保険金を受け取ることによって利得してはならない、という要請が認められる。これを利得禁止の原則という。このため、保険価額は保険事故の発生に際して支払われるべき金額の最高限度を示す。したがって保険契約で当事者の約定する保険金額は、この保険価額を超えてはならない。もしも保険金額が保険価額を超えていれば、超過保険としてその超過額については保険金は支払われない。損害保険は、保険事故によって生じた損害を填補(てんぽ)することを目的とする保険であって、被保険者に利得を与えてはならない。保険価額の評価は社会通念による客観的な判断を基準とすべきで、事故発生時における損害額算定のためには、事故発生の地および時における価額によるべきとされるが、市場価額の変動や価値の付加や減価償却などで保険期間中に絶えず変動するため、通常は保険価額可変の原則によっている。しかし、保険価額の事後的な算定が実際上困難な場合が少なくない。そこで商法では、保険期間が比較的短く、その間における保険価額の変動が少ないような保険については、評価の容易な時点における保険価額を標準とし、これを全保険期間を通ずる保険価額として問題を処理すべき旨を定めている(商法818条・819条)。これを保険価額不変更主義という。また、保険契約締結の際に保険会社と保険契約者の間で保険価額を約定しておくことができるようになっている。当事者が約定した保険価額を約定保険価額といい、約定保険価額を定め、保険価額不変更主義によることにしている保険契約を評価済保険という。評価済保険では、保険会社の填補すべき損害の額は、あらかじめ約定された約定保険価額によって定める(保険法18条2項)。評価済保険でない保険を未評価保険という。
[金子卓治・坂口光男]
損害保険契約において被保険利益を金銭に評価した額のこと。保険事故の発生によって被保険者が被る可能性のある損害の最高限度額を意味する。保険会社と保険契約者は,契約締結の際,保険会社が塡補(てんぽ)金(保険金)として支払う金額の最高限度を定める。これを保険金額というが,被保険者は保険価額を超える額の損害を被ることはありえないことから,保険金額は保険価額の範囲内で決めなければならない。なお,保険金額が保険価額を超えた場合,これを超過保険といい,超過部分は無効となる。また,保険金額と保険価額が一致している場合を全部保険,保険金額が保険価額を下回る場合を一部保険という。保険価額の評価は,社会通念による客観的な判断を基準とすべきであり,商法は,保険会社が塡補すべき損害の額を,原則として,損害が生じた地におけるそのときの保険価額に基づいて算出することとしている(638条)。ただし,運送保険では発送時,船舶保険では保険会社の責任開始時,貨物海上保険では船積み時の価額をもって保険価額とし,この保険価額は保険期間中変わらないものとしている(商法670,818,819,820条)。保険の目的がたえず移動し,事故発生の地および時における価額の決定が困難で,紛争を生じやすいためである。なお,評価の困難性に伴う争いを防止するため,商法は,契約締結の際,当事者が保険価額を協定することも認めており(639条),こうして定められた保険価額を協定保険価額といい,協定保険価額を定めた保険契約を評価済保険という。
執筆者:高木 秀卓
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