三河物語(読み)ミカワモノガタリ

デジタル大辞泉 「三河物語」の意味・読み・例文・類語

みかわものがたり〔みかはものがたり〕【三河物語】

江戸前期の自伝。3巻。大久保彦左衛門忠教ただたか著。元和8年(1622)成立。主家徳川氏大久保一族来歴を、子孫への教戒のために覚書ふうに記したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「三河物語」の意味・読み・例文・類語

みかわものがたりみかはものがたり【三河物語】

  1. 江戸前期の自叙伝。三巻。大久保彦左衛門忠教著。寛永三年(一六二六)頃成立。主家徳川氏代々の事績、天下統一に至る歴史と、大久保一族の功績を述べ、自己の体験と子孫への教戒を記す。著者独特の表記・文体で記され、当時の表記法を知ることができる。

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改訂新版 世界大百科事典 「三河物語」の意味・わかりやすい解説

三河物語 (みかわものがたり)

江戸幕府の旗本大久保彦左衛門忠教が子孫に書き残した自伝。上中下の3巻から成る。松平氏の発祥から徳川家康天下をとり東照権現としてまつられるまでの過程で,大久保一族の忠勤と自身の活躍を述べたもの。とくに彦左衛門16歳の初陣以降の叙述は,名文ではないが具体的で臨場感にあふれている。本家大久保忠隣(ただちか)の改易以来,主君から冷遇されていた大久保一族の不遇をなげきながらも,将軍への忠勤を子孫に説くなど,当時の武士の思想や世界観を知る上での好史料である。また当時の口語が頻繁に使用されている点で,国語学上でも貴重な資料である。成立は1626年(寛永3)と考えられるが,《三河記》《大久保忠教自記》《大久保彦左衛門筆記》などの別称で早くから写本が広く流布した。一心太助の登場する実録《大久保武蔵鐙(むさしあぶみ)》は,内容的には本書とはまったく無関係であるが,そこに見られる彦左衛門像は,本書に示された彦左衛門の性格から由来したものである。
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日本歴史地名大系 「三河物語」の解説

三河物語
みかわものがたり

三巻四冊 大久保忠教著

成立 元和八年

分類 記録

写本 蓬左文庫(江戸初期・中期・末期の三部)

解説 上巻徳川氏始祖の系譜から広忠の死去、中巻今川家の安祥攻めから信長の比叡山焼討、下巻家康の遠州征伐から海内統一に至る。著者が主家ならびに自家の経歴を記して子孫に示したもの。

活字本 「三河物語」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三河物語」の意味・わかりやすい解説

三河物語
みかわものがたり

江戸前期の旗本大久保忠教(ただたか)(彦左衛門)の自伝。三巻三冊。『大久保彦左衛門筆記』『参州記』などともいう。1622年(元和8)に草稿が成立。上巻は家康の父広忠(ひろただ)までの徳川氏の事績、中巻・下巻は家康が三河、遠江(とおとうみ)、駿河(するが)、甲斐(かい)、信濃(しなの)の五か国大名となる過程と、大久保氏の功績が述べられている。下巻には子孫への教訓が記されており、そのなかで、徳川氏創業に功労のあった譜代(ふだい)家臣が重んじられていないと批判している。『武士道全集八』『家康史料集――戦国史料叢書(そうしょ)』『日本思想大系26』に所収。

[煎本増夫]

『斎木一馬他編『日本思想大系26 三河物語・葉隠』(1974・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三河物語」の意味・わかりやすい解説

三河物語
みかわものがたり

江戸時代初期の徳川氏譜代武士団の生活思想を示す文献。大久保彦左衛門著。3巻。元和8 (1622) 年頃成立。子孫への教訓のために書き残したもの。文体はかな交り文。不遇に対する不満をこめて,主家と自家の歴史を記し,一族の武功を語っている。上巻は徳川氏の出自,初代親氏から8代広忠までを記し,中巻は元康 (家康) の登場,下巻は武田信玄戦,武田勝頼戦,甲斐信濃の平定,豊臣秀吉との交渉,関ヶ原陣と大坂陣の旗奉行の行動に対する大久保の意見,大久保家子孫への教訓が記され,各巻の終りに門外不出と追記されている。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「三河物語」の解説

三河物語
みかわものがたり

徳川氏創業の物語。武士道の書。3巻。大久保彦左衛門忠教(ただたか)著。自筆稿本には1622年(元和8)とあるが,最終的には25~26年(寛永2~3)に成立。徳川家康の先祖である松平氏8代の事績,家康の前半生,武田・豊臣氏らとの抗争などを叙述,巻尾に譜代大久保一族の主家への忠勤と忠教の述懐,子孫への教訓が記される。戦国末期の武士の生き方と戦国大名としての徳川氏の歴史が描写される。使用されている言葉遣いは国語史の資料となる。「日本思想大系」所収。

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百科事典マイペディア 「三河物語」の意味・わかりやすい解説

三河物語【みかわものがたり】

《大久保彦左衛門筆記》《大久保忠教自記》《三河記》とも。徳川家康・秀忠・家光の3代に仕えた大久保彦左衛門忠教が子孫に書き残した著。3巻。1622年成立と考えられる。徳川家代々の事跡と大久保家の武功などを記す。

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旺文社日本史事典 三訂版 「三河物語」の解説

三河物語
みかわものがたり

江戸初期,大久保彦左衛門忠教 (ただたか) の著書
1622年頃成立。徳川氏累代の仁政や譜代の功績,それに自己の体験を記した自伝の3巻よりなる。徳川氏の興起や当時の武士生活を知る重要史料。

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世界大百科事典(旧版)内の三河物語の言及

【覚書】より

…戦国時代や安土桃山・江戸時代初期に多く記録されている。聞書,留書,置文,書上などの形をとることが多いが(《渡辺勘兵衛武功覚書》など),現在はむしろ文学作品として扱われている覚書も多い(《信長公記》《三河物語》など)。筆者には,文筆に秀でた御伽衆(おとぎしゆう)などの武士が多い。…

※「三河物語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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