正称は名古屋市蓬左文庫。〈蓬左〉は名古屋の別名。尾張徳川家の文庫の後身で,好学の大名として知られる初代義直により,元和年間(1615-24)名古屋城二ノ丸に創設された。明治以後は大曾根(現,名古屋市東区徳川町)の徳川家別邸内に保存,1934年には東京都豊島区の同家本邸構内に移されたが,50年名古屋市に譲渡,旧別邸の跡地にもどり,翌年から公開された。蔵書数は約8万点(1984),大部分は和漢の古書で,蘭書や古絵図(国絵図,城絵図など)も少なくない。古代から明治初年にいたる史籍や地誌,文学・芸術・医学書など種類がきわめて多く,また,義直の父家康旧蔵の〈駿河御譲本(おゆずりぼん)〉をほかよりも最も大量に伝え,印刷史上重要な朝鮮の古刊本や尾張史料に富む。代表的な蔵書は金沢文庫本の《続日本紀》《源氏物語》《斉民要術》,朝鮮古活字本《高麗史節要》など。特殊集書に,江戸庶民文学の宝庫といわれる尾崎久弥コレクションなどがある。
執筆者:織茂 三郎
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…また家康は林羅山に命じて駿府(すんぷ)城内に文庫をつくらせた(駿河文庫)。のちにこの蔵書は3分されて尾張の蓬左(ほうさ)文庫,水戸の彰考館文庫,紀州の南葵(なんき)文庫となる。なお家康は江戸城内にも,1602年(慶長7),富士見亭文庫なるものをつくらせているが,のち場所を移して紅葉山(もみじやま)文庫となった。…
※「蓬左文庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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