能の種別の名。五番立分類(江戸時代の1日の番組編成基準に基づく分類法)で第3番目に置かれる能。1日の演能の中心をなす幽玄味の濃い曲で,舞歌の要素を主体とする。現行曲中約40曲ある。主人公は著名な美女の霊(《井筒》《野宮》《夕顔》《東北》《楊貴妃》),美女姿の植物の精(《杜若(かきつばた)》《芭蕉》),天人(《羽衣》《吉野天人》),老女の霊(《檜垣(ひがき)》《姨捨(おばすて)》)などの霊的存在で,夢幻能の形式をとることが多いが,現実の女性が登場する現在能の《熊野(ゆや)》《千手》《草子洗》《関寺小町》等もある。《源氏供養》《大原御幸(おはらごこう)》以外はすべて主人公が舞を舞い,舞事の中でも最も優美で典雅な〈序ノ舞〉を持つ曲の多くが三番目物に含まれる。女性を主人公とする曲が多いため,三番目物を〈鬘物(かつらもの)〉と呼ぶこともあるが,貴人の男性(《小塩》《雲林院》)や老人姿をとる樹木の精(《西行桜》《遊行柳(ゆぎようやなぎ)》)が登場する曲も三番目物に含まれるから,あまり適当な名称ではない。
執筆者:小田 幸子
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…曲籍は,番組編成の指針であると同時に,演目の分類ともなっているし,また演出の大まかなめどともなる。すなわち,脇能物はよどみなくさわやかに,二番目物はきびきびと勇壮に,三番目物は優美にしっとりと,四番目物は変化を尽くして面白く,五番目物は手強く足取り速くというのがおよその演じかたである。むろん個々の演目で違いの幅は大きいが,一応の基準にはなるのである。…
※「三番目物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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