能の種別の名称。〈かづらもの〉ともいう。主人公(シテ)の人体からみた分類で,鬘をかぶる役,すなわち女性を主人公にする能をさすが,一般に〈鬘物〉という場合は,美女の霊または現実の美女,あるいは草木の精などが女姿となって登場し,優雅な舞を舞うところに焦点を合わせた能をいう。主人公が狂女とか強い執心を抱く女性として登場するものはこの中には入れない。鬘物が〈三番目物〉ともいわれるのは,いわゆる五番立(ごばんだて)の演能番組では3番目に置かれる能だからである。能が長年にわたって追求し続け,身につけてきた〈幽玄美〉を基調とする鬘物は,もっとも能らしい能だといわれ,現在の能の中心をなしている。本格的な鬘物の作品として,《井筒》《野宮(ののみや)》《半蔀(はじとみ)》《夕顔》《松風》《江口》などがあげられる。これらの作品には戯曲的な筋らしい筋はないが,昔の姿で旅人(ワキ)の前に現れた美女の霊が生前のことを語り,往時をしのんで舞を舞うという形をとり,〈夢幻能〉の典型でもある。女姿の草木の精などが主人公となる夢幻能には《杜若(かきつばた)》《芭蕉》《藤》《胡蝶》などがある。これに対して,現実の女性が主人公になる現在鬘物ともいうべき作品には《熊野(ゆや)》《草子洗(そうしあらい)》《千手》などがあり,内容はかなり劇的で,構成は〈四番目物〉的である。
執筆者:片桐 登
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