世界的な自然保護団体で、前身は世界野生生物基金World Wildlife Fund(略称WWF)。本部はスイスのグランにある。名誉総裁はイギリスのエジンバラ公フィリップ。略称WWF。
1960年代初頭、アフリカでは多くの国々が独立し、ある国では動物たちが無益に殺された。このままでは遠からずアフリカから動物たちが姿を消してしまうという強い危惧(きぐ)から、1961年、人々が共通の責任で野生生物を保護するための資金を世界的規模で集めることを目的とした世界野生生物基金が発足した。ジャイアントパンダをシンボルマークに選び、スイスのレマン湖畔に事務局を置き「モルジュ宣言」を採択。世界の科学者の集合体である国際自然保護連合(IUCN)と携えて、絶滅の危機にある動物(トラ、サイ、アラビアオリックスなど)や植物の種を守る保護運動を開始した。また、種の緊急的な保護を進める一方、その生息地全体の保全を目ざし、開発途上の国々に国立公園や自然保護区を開くなど、野生生物種の保護活動や、財政支援なども行った。
WWFはその後発展を遂げ、世界各地の500万人以上の人々に支持される世界最大の自然保護団体となった。1986年その活動の重点を、それまでの個々の絶滅の危機に瀕(ひん)している動植物種の保護から、熱帯林(ジャングル)・湿地・サンゴ礁などの生態系の保全、その持続的利用にまで拡大させ、名称も現在のものに改めた。これを受け、1971年(昭和46)に発足した世界野生生物日本委員会も、1988年世界自然保護基金日本委員会(WWF Japan)と改称した。
WWFは、生物種の多様性を守るためには生物圏の保護が優先するという立場から、その生物圏の保全のために
(1)世界の生物多様性を守る
(2)再生可能な自然資源の持続可能な利用が確実に行われるようにする
(3)環境汚染と浪費的な消費の削減を進める
という三つの使命を掲げ世界の自然を守る運動を展開している。
1980年には国連環境計画(UNEP)、IUCNとともに世界の自然保護の指針とするための「世界保全戦略」を作成、1991年にはその具体的行動を提唱した「新世界環境保全戦略」を発表した。
[加瀬信雄]
『ピーター・デントン著、乾侑美子訳『世界を救う国際組織5 世界自然保護基金』(1996・偕成社)』▽『沼田真著『自然保護という思想』(岩波新書)』
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旧称は世界野生生物基金。略称WWF。世界の野生生物およびその生息域を守るための国際的基金。1961年9月,ロンドンで設立宣言がなされ,初代の総裁にはオランダのユリアナ女王の夫君ベルンハルトが就任した。現在の名誉総裁はイギリスのエリザベス女王の夫君エジンバラ公フィリップである。シンボル・マークはジャイアントパンダ。
日本でも68年野生生物保護基金日本委員会が結成され,71年に財団法人としての認可を受け,世界野生生物基金日本委員会,通称WWFJとなった(名誉総裁は秋篠宮殿下)。86年現名に改称した。
執筆者:編集部
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(最上敏樹 国際基督教大学教授 / 2007年)
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