中宿(読み)ナカヤド

デジタル大辞泉 「中宿」の意味・読み・例文・類語

なか‐やど【中宿】

目的地までの途中で宿をとること。また、その宿。
江戸時代宿元のない奉公人の身元引受人となり、出替わりや宿下がりのときに仮に滞在させた宿。奉公人宿
江戸時代、男女を密会させた宿。出合茶屋。
江戸時代、上方で、引き手茶屋の称。

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精選版 日本国語大辞典 「中宿」の意味・読み・例文・類語

なか‐やど【中宿】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 目的地に至るまでの中間の宿、または休息所。また、そこにとどまること。
    1. [初出の実例]「郭公杜の木ずゑのみわたしに中宿しむる松の一村」(出典:関西大学蔵本拾玉集(1346)二)
    2. 「秀吉公いつも御参内の時、御束めしかへらるる御中やど施薬院にて」(出典随筆戴恩記(1644頃)上)
  3. 江戸時代、一季・半季の奉公人で宿元のない者のために、身元引受人となり、出替り、宿下りの時などに滞在するようにした家。奉公人宿。
    1. [初出の実例]「やうやう御断を申て、せめて死ぬうちにとおそろしく中宿(ナカヤド)へ人におはれて帰りぬ」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)五)
  4. 江戸時代、男女の密会に場所を提供した家。出合茶屋。小宿。
    1. [初出の実例]「世にいやしげなるろくしゃく風情を中宿(ナカヤト)としてふかくかたらふ」(出典:評判記・難波物語(1655))
  5. 江戸時代、上方で、引手茶屋などの称。のち、広く遊里に通う者が途中休み場所とするための家を称した。着替えや変装、または遊女との連絡場所などにあてられた。
    1. [初出の実例]「おろせがいそげばなかやどの、かしあみがさのめつけもん丸のうちに二つぼし」(出典:浄瑠璃・暦(1685)二)
  6. 婚礼のときに、花嫁婚家にはいる前、一たんはいって休息する家。

なか‐やどり【中宿】

  1. 〘 名詞 〙 外出旅行の際、途中で、休息または宿泊すること。また、そのところ
    1. [初出の実例]「六条わたりの御忍びありきのころ、内裏よりまかで給ふなかやどりに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中宿」の意味・わかりやすい解説

中宿
なかやど

村内婚と村外婚とを問わず、嫁が直接婿の家に入らないで、途中休息をしたり、着替えをするための家をいう。仲宿とも書く。コヤド、オチツキなどの名称もある。仲人(なこうど)の家や婿方の親戚(しんせき)ないしは村の大家親方の家を使用する。嫁ばかりでなく荷物の受け渡しを行うこともあり、簡単な酒宴が催されるのが普通である。嫁はそこで正式な式服に着替え、仲人の指導によって婿の家に伴われる。簡略といえるかどうかわからないが、中宿をたてないで直接婿の家に入る地方もある。そのために一室を用意するが、それをオチツキという。ときには婿の家の近隣の親しい家をそれに使用することもある。結婚式は、昔は重要視されたものであるが、今日では特定の結婚式場を用いるようになったので、ほとんどこうした慣例はなくなった。なおこの場合でも、仲人が中宿へ行ってから、婿方から三度の出迎えの使者を出し、四度目には途中で出会うようにする風習を残す地方もある。

[竹内芳太郎]

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普及版 字通 「中宿」の読み・字形・画数・意味

【中宿】ちゆうしゆく

二泊。

字通「中」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の中宿の言及

【待合】より

…原則として待合は,芸者などの芸人を招いて客に遊興させる店で,調理設備をもたず飲食物は他から取り寄せることとし,貸席料のほかに飲食代や芸者の玉代(ぎよくだい)および売春料の一部をはねて収入とする。なお,江戸時代の売春仲介貸席業としては,中宿(なかやど),盆屋(ぼんや),船宿などがあった。【原島 陽一】。…

※「中宿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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