中村又五郎(読み)ナカムラ マタゴロウ

新撰 芸能人物事典 明治~平成 「中村又五郎」の解説

中村 又五郎(2代目)
ナカムラ マタゴロウ


職業
歌舞伎俳優

肩書
国立劇場歌舞伎俳優研修所主任講師 重要無形文化財保持者(歌舞伎脇役)〔平成9年〕

本名
中村 幸雄(ナカムラ ユキオ)

屋号
播磨屋

生年月日
大正3年 7月21日

出生地
東京都 港区赤坂

学歴
高小卒

経歴
初代中村又五郎の長男で、祖父・中村紫琴は上方の女形。祖先に初代中村歌六がいる。大正9年5歳で父を亡くし、父のいとこにあたる初代中村吉右衛門が親代わりとなり、歌舞伎の道に入る。10年2代目又五郎を名乗り、市村座「腕の喜三郎」の喜之松で初舞台。初代吉右衛門と、その好敵手である6代目尾上菊五郎にかわいがられ、名子役として名を馳せた。特に「盛綱陣屋」の小四郎は1000回以上演じたという。昭和9年名題となり、吉右衛門一座の中堅として活躍。29年吉右衛門没後はその女婿である8代目松本幸四郎(初代松本白鸚)の一門となり、36年幸四郎に従って東宝に移籍。晩年は松竹に復帰した。立役・女形、二枚目・老け役を問わず端正な芸を披露し、主役の芸風に合わせて芝居を引き立てる名脇役として活躍。当たり役に「逆櫓」の権四郎、「髪結新三」の家主、「盛綱陣屋」の微妙、「双蝶々曲輪日記(引窓)」のお幸、「佐倉義民伝」の甚兵衛、「熊谷陣屋」の弥陀六、「新舞台いろは書初」の宝井其角などがある。海外でも活躍し、35年歌舞伎初の海外公演に参加。43年ニューヨーク演劇研究所で歌舞伎指導、47年ハワイ大学で「鳴神」を指導した。また、45年国立劇場の歌舞伎俳優養成事業が開始されて以来、主任講師として一般公募の研修生の指導にあたり、その技芸を後進に伝えた。50年紫綬褒章、平成8年日本芸術院賞恩賜賞を受賞。9年歌舞伎脇役として2人目の人間国宝に認定された。90歳を過ぎてなお舞台に立ち、歌舞伎界の最長老・生き字引として尊敬を集めた。平成18年4月歌舞伎座での「六世中村歌右衛門五年祭追善口上」が最後の舞台出演となった。小説家・池波正太郎はその人柄と芸を愛し、エッセイ「又五郎の春秋」を執筆。また、池波の代表作の一つ「剣客商売」の主人・秋山小兵衛は又五郎をモデルとしており、商業演劇の舞台で又五郎が小兵衛を演じたこともあった。

受賞
日本芸術院賞恩賜賞(第52回 平7年度)〔平成8年〕 紫綬褒章〔昭和50年〕,勲四等旭日小綬章〔昭和59年〕 芸術祭賞奨励賞〔昭和28年〕,大谷竹次郎賞〔昭和29年〕,テアトロン賞〔昭和30年〕,菊田一夫演劇賞(特別賞)〔昭和60年〕,伝統文化ポーラ賞(特賞 第5回)〔昭和60年〕,名古屋演劇ペンクラブ年間賞〔平成2年〕,松尾芸能賞(特別賞 第14回)〔平成5年〕,菊池寛賞(第47回)〔平成11年〕

没年月日
平成21年 2月21日 (2009年)

家族
父=中村 又五郎(初代)

伝記
聞き書き 中村又五郎歌舞伎ばなし 郡司 道子 著(発行元 講談社 ’95発行)


中村 又五郎(初代)
ナカムラ マタゴロウ


職業
歌舞伎俳優

本名
中村 庄次郎

別名
初名=中村 正太郎

屋号
播磨屋

生年月日
明治18年 1月1日

出生地
京都府 先斗町

経歴
明治23年5歳のとき、中村紫琴の養子となり、中村正太郎の名で大阪朝日座で初舞台。31年に又五郎と改名後、新富座で子供芝居座頭をつとめ、名子役といわれる。39年に名題となり、のち市川左団次一座に参加。大正6年に東京の浅草公園劇場の座頭になってからも、優れた容姿と演技で将来を嘱望されたが、夭折した。

没年月日
大正9年 3月19日 (1920年)

家族
養父=中村 紫琴,長男=中村 又五郎(2代目)

出典 日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)新撰 芸能人物事典 明治~平成について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「中村又五郎」の意味・わかりやすい解説

中村又五郎
なかむらまたごろう

歌舞伎(かぶき)俳優。屋号播磨(はりま)屋。

[服部幸雄 2018年5月21日]

初世

(1885―1920)京都生まれ。1890年(明治23)中村正太郎の芸名で初舞台。1898年中村又五郎と改名して東京・新富(しんとみ)座の子供芝居の座頭(ざがしら)を勤め、初世中村吉右衛門(きちえもん)と並んで人気をとる。1917年(大正6)以後は浅草の公園劇場に移り、小芝居の花形俳優として活躍したが、1920年に早世した。容姿に優れ、とくに和事(わごと)に適した。

[服部幸雄 2018年5月21日]

2世

(1914―2009)本名中村幸雄。初世の長男。東京生まれ。6歳で父を失い、翌1921年(大正10)2世又五郎の名で初舞台。名子役と評判された。長じては中村吉右衛門劇団の中堅幹部として立役(たちやく)から女方(おんながた)まで幅広い役柄で活躍。1961年(昭和36)から、8世松本幸四郎(後の白鸚(はくおう))らとともに東宝に移籍。国立劇場の俳優養成の主任講師としても情熱的に指導にあたった。1997年(平成9)、脇役(わきやく)として重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。

[服部幸雄 2018年5月21日]

『池波正太郎著『又五郎の春秋』(中公文庫)』『中村又五郎・山田五十鈴著『芝居万華鏡』(1982・中央公論社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「中村又五郎」の意味・わかりやすい解説

中村又五郎 (なかむらまたごろう)

歌舞伎俳優。屋号播磨屋。(1)初世(1885-1920・明治18-大正9) 本名中村庄次郎。京都に生まれ,1889年中村正太郎の名で初舞台。98年中村又五郎と改名。東京の子供芝居の座頭格で,初世中村吉右衛門と人気を分かった。1906年名題昇進。その後2世市川左団次一座に加わる。1917年浅草公園劇場に移ってからは小芝居のスターだったが,若くして世を去った。容姿がすぐれ,和事がよく,新作でも評判が高かった。(2)2世(1914-2009・大正3-平成21)本名中村幸雄。初世の長男。6歳で父を失い,翌年,又五郎の名で初舞台。名子役とうたわれた。吉右衛門劇団にあって,立役,女方,敵役,老け役,すべてをこなす幅の広さを持っている。1961年からは,8世松本幸四郎(のちの白鸚)とともに東宝入りし,多くの新作で活躍する。国立劇場の俳優養成の指導にも意欲的であった。
執筆者:

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20世紀日本人名事典 「中村又五郎」の解説

中村 又五郎(1代目)
ナカムラ マタゴロウ

明治・大正期の歌舞伎俳優



生年
明治18(1885)年1月1日

没年
大正9(1920)年3月19日

出生地
京都・先斗町

本名
中村 庄次郎

別名
初名=中村 正太郎

屋号
播磨屋

経歴
明治23年5歳のとき、中村紫琴の養子となり、中村正太郎の名で大阪朝日座で初舞台。31年に又五郎と改名後、新富座で子供芝居の座頭をつとめ、名子役といわれる。39年に名題となり、のち市川左団次一座に参加。大正6年に東京の浅草公園劇場の座頭になってからも、優れた容姿と演技で将来を嘱望されたが、夭折した。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

朝日日本歴史人物事典 「中村又五郎」の解説

中村又五郎(初代)

没年:大正9.3.19(1920)
生年:明治18.1.1(1885)
歌舞伎役者。屋号播磨屋。本名中村庄次郎。京都先斗町に生まれる。中村紫琴の養子となり,5歳で初舞台。初名中村正太郎。明治31(1898)年,上京して新富座の子供芝居の座長となり,又五郎と改名。成人ののちは2代目市川左団次の一座に加わり,大正6(1917)年から浅草の公園劇場の座長となった。本領は古典作品の柔和な二枚目役だが,新作にも意欲を燃やし,浅草という大衆的娯楽街で文芸作品や翻訳劇を演じたのは特筆に値する。2代目は,名子役として評判をとった長男が大正10年に襲名。<参考文献>「中村又五郎追悼録」(『演芸画報』1920年5月号),阿部優蔵『東京の小芝居』

(石橋健一郎)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「中村又五郎」の解説

中村又五郎(2代) なかむら-またごろう

1914-2009 大正-平成時代の歌舞伎役者。
大正3年7月21日生まれ。初代中村又五郎の長男。大正10年2代を襲名して東京市村座で初舞台をふみ,子役として活躍。初代中村吉右衛門に師事し,6代尾上菊五郎にもまなぶ。昭和45年国立劇場の歌舞伎俳優研修所の教師となった。平成8年芸術院恩賜賞,9年人間国宝。平成21年2月21日死去。94歳。東京出身。本名は幸雄。俳名は紫琴。屋号は播磨屋。

中村又五郎(初代) なかむら-またごろう

1885-1920 明治-大正時代の歌舞伎役者。
明治18年1月1日生まれ。中村紫琴の養子となり,明治23年中村正太郎の名で大阪で初舞台。子供芝居の座頭をつとめる。31年又五郎と改名。東京にうつり,2代市川左団次一座にくわわる。大正6年から浅草の小芝居の座頭として活躍した。大正9年3月19日死去。36歳。京都出身。本名は庄次郎。俳名は紫琴。屋号は播磨屋。

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百科事典マイペディア 「中村又五郎」の意味・わかりやすい解説

中村又五郎【なかむらまたごろう】

歌舞伎俳優。二代目。屋号播磨屋。父の初代又五郎が早く没したため,初代中村吉右衛門に預けられ,芸の指導を受けた。脇役に徹して,時代物,世話物を問わず女形から若衆,老役,婆役まで多彩な芸域を持ち,軽妙洒脱な役から重厚な役どころまで当代随一の名脇役の名をほしいままにした。後進の指導にも意欲的に取り組み続け,歌舞伎史にもくわしく,読書家として知られた。1997年重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定された。

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367日誕生日大事典 「中村又五郎」の解説

中村 又五郎(初代) (なかむら またごろう)

生年月日:1885年1月1日
明治時代;大正時代の歌舞伎役者
1920年没

中村 又五郎(2代目) (なかむら またごろう)

生年月日:1914年7月21日
昭和時代;平成時代の歌舞伎俳優

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

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