福岡県太宰府(だざいふ)市石坂にある博物館。
九州国立博物館(以下「九博」と略称)は、東京、奈良、京都に次ぐ4番目の国立博物館として、2005年(平成17)10月に開館した。施設は、福岡県太宰府市の太宰府天満宮に隣接する旧天満宮社有地に建設され、敷地面積は約17万平方メートル。建物の延床面積は約3万平方メートル。そのうち、展示室の面積は、4階の文化交流展示室が約3900平方メートル、3階の企画展示室が約1500平方メートル、1階のアジア文化体験エリア(通称あじっぱ)が約400平方メートル、合計約5800平方メートルと、国内では東京国立博物館に次ぐ大規模な展示施設となっている。なお、九博は国、福岡県、九州国立博物館振興財団の三者の共同出資によって建てられており、開館後は、独立行政法人国立文化財機構(2007年3月までは独立行政法人国立博物館)と福岡県立アジア文化交流センターとが一体となって運営にあたっている。
既存の国立博物館3館が100年以上の歴史をもった美術系博物館であるのに対し、九博は「日本文化の形成をアジア史的観点からとらえる」という基本理念をもつ歴史系博物館である。日本の文化が主としてアジア諸地域との交流によって築かれてきたことをふまえて、全国的な視野に立っての展示を構築し、また九州諸地域に関わりのあるテーマも積極的に取り上げている。さらに作品の保存や修復、展示環境の整備などを目的とした博物館科学の充実、アジア諸地域の博物館との交流なども、館の事業の主要な柱である。なお、主要な収蔵作品には、室町時代を代表する画家狩野正信(かのうまさのぶ)の傑作『周茂叔愛蓮図(しゅうもしゅくあいれんず)』、わが国最初の歴史物語である『栄華(えいが)(栄花)物語』、名工来国光(らいくにみつ)の代表作で、明治天皇のお手元刀でもあった『太刀(たち) 銘(めい)来国光』(いずれも国宝)などがある。
[小松大秀]
1階には、博物館訪問の起点となるエントランスホール、講堂(ミュージアムホール)、ミュージアムショップ、アジア文化体験エリア、ティーラウンジなどがあり、エスカレーターで3階に上がると、特別展に供される大、中、小三つの企画展示室がある。4階の「文化交流展示室」は、いわゆる常設展に使われる展示室群である。全体のテーマを「海の道 アジアの路」として、日本文化の形成を国内の視点からだけでなく、アジア史的観点からとらえた幅広い展示を目ざしている。中央の大空間(約1600平方メートル)を縄文時代から江戸時代に至るまでの交流の歴史をたどる基本展示室とし、その周囲に11の関連展示室を配して、テーマのさらなる深化を図る。また、展示関連施設から隔たった2階には、中央に大きく収蔵庫スペースをとり、それを囲むように学芸研究室、博物館科学研究室、文化財修復室、図書収蔵庫などを配する。なお、収蔵施設、展示室がある1階から4階にかけては、できるだけ薬剤に頼らず、人の目と手による日常の点検や清掃などで、虫やカビなどの有害生物を防ぐ予防中心の方法IPM(総合的有害生物管理)で管理されており、また、建物自体に、最新の免震設備を組み込むなど、環境・安全面での万全の対策がほどこされている。
[小松大秀]
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福岡県太宰府市の太宰府天満宮近くに2005年開館した日本で4館目の国立博物館。東京国立博物館,奈良国立博物館,京都国立博物館とともに独立行政法人国立博物館に属する。古代から九州はアジア文化との交流の窓口であったから,このテーマで常設展示を行う文化交流展示室を設け,〈日本文化の形成をアジア史的観点からとらえる〉ことを運営の基本理念とする。
執筆者:編集部
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