日本大百科全書(ニッポニカ) 「乞食オペラ」の意味・わかりやすい解説
乞食オペラ
こじきおぺら
The Beggar's Opera
イギリスの劇作家ジョン・ゲイ作、ヨハン・クリストフ・ペープシュ作曲のバラッド・オペラ。3幕。1728年ロンドン初演。追いはぎの首領マクヒースの女出入りに盗品売買業者、典獄、娼婦(しょうふ)らの物欲を絡ませた物語で、ロンドンの暗黒街を描くとみせて、実は当時の首相ロバート・ウォルポールの女性関係や政界の腐敗を風刺している。芸術的にはイタリア・オペラを庶民の側から批判したもので、英雄や神ではない人物を登場させ、だれにでもわかる英語を使った点が重要である。レチタティーボ(叙唱)を廃して語られる台詞(せりふ)を多用し、歌の曲には原則として既存の俗謡(バラッド)のものを選んで新たに詞をつけた。この作品の大成功によってバラッド・オペラという新しいジャンルが成立し、ゲイ自身も『ポリー』(1729)という続編を書いている。『乞食オペラ』をドイツの劇作家ブレヒトが改作し、クルト・ワイルが曲をつけたものが有名な『三文オペラ』(1928)である。
[喜志哲雄]