乱る(読み)ミダル

デジタル大辞泉 「乱る」の意味・読み・例文・類語

みだ・る【乱る/×紊る】

[動ラ五(四)]《「乱す」に先行して用いられたが、中世以降「乱す」にしだいに移行した》
秩序をなくすようにする。整っているものを崩す。
議場を―・らんと企てしが」〈竜渓経国美談
ばらばらにする。散乱させる。
滝つ瀬に誰白玉を―・りけむ拾ふとせしに袖はひぢにき」〈後撰・雑三〉
平静さをなくすようにする。
御物の怪などの…人の御心―・らむとて」〈御法
[動ラ下二]みだれる」の文語形

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「乱る」の意味・読み・例文・類語

みだ・る【乱・紊】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 ( 古く、「みだす(乱)」と同じに用いられた形 )
    1. 入りまじるようにする。錯綜させる。
      1. [初出の実例]「み吉野の水隈(みぐま)が菅(すげ)を編まなくに刈りのみ刈りて乱(みだり)てむとや」(出典:万葉集(8C後)一一・二八三七)
    2. 散乱させる。ばらばらにさせる。
      1. [初出の実例]「ぬきみだる人こそあるらし白玉のまなくも散るか袖のせばきに〈在原業平〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑上・九二三)
    3. 秩序だったものを混乱させる。
      1. [初出の実例]「塗に轍(あと)を乱(ミダル)といふこと無し」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)一)
    4. 平常でないようにする。平穏さをなくさせる。
      1. [初出の実例]「さし歩み給へる姿、指貫の裾まで、あまり人の心をみだるべきつまとなり給へるも」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)二)
    5. ( 「国を乱る」「世を乱る」の意で ) 騒動を起こす。平穏を破る。
      1. [初出の実例]「近習の人々、此一門をほろぼして天下をみたらんとする企あり」(出典:平家物語(13C前)二)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙
    1. 秩序だったものが混乱する。
      1. [初出の実例]「帰らむといふ心有りて、崩騰(ミタリかへ)たり」(出典:石山寺本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
    2. 平静でなくなる。正体を失う。動揺する。
      1. [初出の実例]「かかるすさび事にぞ心はみだらましとうち泣き給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)竹河)
    3. (風や雨、雪が)激しく吹いたり、降ったりする。
      1. [初出の実例]「雨うちみだる暮にて」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  3. [ 3 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙みだれる(乱)

乱るの語誌

( 1 )[ 一 ]のように他動詞としては四段に活用したが、中世以降、「みだす」(四段活用)にとってかわられた。しかし、漢文訓読体や和漢混交文では、四段活用の「みだる」が残った。
( 2 )中世では、他動詞として「みだらす」「みだらかす」なども用いられたほか、近世では、髪、糸などについては、他動詞「みだく」(四段活用)、自動詞「みだける」(下一段活用)も用いられた。
( 3 )自動詞としては下二段に活用したが、[ 二 ]のように四段に活用した例も平安時代にはかなり見られる。そのため、「みだる」を含む複合語においては、「みだり足」「みだれ足」、「みだり心地」「みだれ心地」、「みだりがはし」「みだれがはし」(ただし、「新撰字鏡」「観智院本名義抄」などにおいてはすべて「みだりがはし」)のように、両方に活用したものが多い。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android