争点証拠整理手続(読み)そうてんしょうこせいりてつづき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「争点証拠整理手続」の意味・わかりやすい解説

争点証拠整理手続
そうてんしょうこせいりてつづき

裁判早期の段階で事件の争点および証拠の整理を図るための手続。準備的口頭弁論(民事訴訟法164条~167条)、弁論準備手続(同法168条~174条)、書面による準備手続(同法175条~178条)がある。これら制度は個別の事件の態様(事件の複雑さ・難易度、当事者の準備の程度など)に応じて使い分けられることになる。「争点及び証拠の整理」とは、審判の対象に関して、当事者の提示した主要事実、間接事実、補助事実は何かなどを確定し、それらの事実に関連する証拠をあげ、書証については認否(の予定)を相互に確認したうえで、相手方が争う事実と、争わない事実とを区別し、証拠調べの対象を限定する作業をいう。主要な争点を明確にすることによって、口頭弁論を活性化し、審理の促進に役だつように、1998年(平成10)1月に施行された新民事訴訟法で設けられた手続である。

[加藤哲夫]

準備的口頭弁論

準備的口頭弁論とは、口頭弁論の一種であり、公開の法廷で行われる争点整理のための手続である。多数当事者訴訟、あるいは多数の傍聴人が予想される労働関係訴訟などが準備的口頭弁論による争点整理に適するものと考えられている。

 裁判所は、争点および証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、準備的口頭弁論を行うことができる(同法164条)。当事者が準備的口頭弁論の期日に出頭せず、あるいは所定の期間内(同法162条)に準備書面提出または証拠の申し出をしないときは、裁判所は、準備的口頭弁論を終了させることができる(同法166条)。当事者双方が出頭しない場合には、準備的口頭弁論を終了し、審理の現状に基づいて判決をすることができる(同法244条)。準備的口頭弁論の終了後に攻撃または防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、準備的口頭弁論の終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない(同法167条、民事訴訟規則87条)。

[加藤哲夫]

弁論準備手続

弁論準備手続とは、弁論を準備するための手続であり、争点および証拠の整理手続として新設されたものである。裁判所は、争点および証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を弁論準備手続に付することができる(民事訴訟法168条。その決定の取消しについては同法172条)。弁論準備手続は、当事者双方が立ち会うことができる期日で行う(同法169条1項)。非公開が原則であるが、裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる(同法169条2項本文)。ただし、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認めるときは、許可しないことができる(同法169条2項但書)。

 弁論準備手続を主宰するのは受訴裁判所であるが、裁判所は受命裁判官に弁論準備手続を行わせることができる(同法171条1項)。弁論準備手続の期日においては、証拠の申し出に関する裁判その他の口頭弁論期日外においてすることができる裁判および文書(同法231条に規定する物件を含む)の証拠調べが可能である(同法170条2項)。当事者が遠隔地に居住しているとき、その他相当と認められるときは、電話会議システムを利用して、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる(同法170条3項本文)。このように期日に出頭しないで手続に関与した者は、期日に出頭したものとみなされる(同法170条4項)。

 弁論準備手続は口頭弁論期日外の手続であるため、直接主義、口頭主義、公開主義の要請から、当事者は、口頭弁論において、弁論準備手続の結果を陳述しなければならない(弁論上程。同法173条、民事訴訟規則89条)。弁論準備手続の終了後に攻撃防御方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、弁論準備手続の終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない(同法174条、167条、民事訴訟規則90条、87条)。

[加藤哲夫]

書面による準備手続

書面による準備手続とは、裁判所へ出頭することなく、準備書面の提出などにより、争点および証拠の整理をする手続をいう。当事者が遠隔地に居住すること、その他相当な理由が認められるときは、裁判所は、当事者の意見を聴いて、事件を書面による準備手続に付することができる(民事訴訟法175条)。この手続は、裁判長がこれを行うが(同法176条1項本文)、高等裁判所では受命裁判官にこれを行わせることができる(同法176条1項但書)。裁判長または高等裁判所における受命裁判官は、準備書面の提出または特定の事項についての、証拠申し出の期間を定めなければならない(同法176条2項)。必要があると認められるときは、裁判所および当事者双方が電話会議システムによって協議することができる(同法176条3項前段、民事訴訟規則91条)。

 裁判所は、書面による準備手続の終結後の口頭弁論の期日において、その後の証拠調べによって証明すべき事実を、当事者との間で確認する(同法177条、民事訴訟規則93条)。争点および証拠の整理の結果を要約した書面の提出があり、かかる要約書面が口頭弁論期日において陳述された後、あるいは書面による準備手続の終結後の口頭弁論の期日において要証事実の確認がなされた後、提出される攻撃防御方法については、提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、かかる陳述または事実の確認の前に提出することができなかった理由を説明しなければならない(同法178条)。

[加藤哲夫]

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