裁判において集中審理を可能にするため,口頭弁論または公判の準備として争点・証拠の整理などを行う手続。
旧民事訴訟法上の準備手続は,争点や証拠の整理に関する事項について,口頭弁論の前にあらかじめ当事者が協議するための手続であった(旧民事訴訟規則20条)。訴えが提起された場合に,その事件を準備手続に付すか否かは,事件の繁雑性をみて裁判所が決める。準備手続を開くとしてもただちにこれを開くか口頭弁論の途中から準備手続に移すかも,裁判所が決める。準備手続は受訴裁判所(その事件を担当する裁判所)の指定した準備手続裁判官が主宰して行う。準備手続裁判官は受訴裁判所を構成する裁判官でなくても,同一の官署としての裁判所に所属していなければならない。準備手続裁判官は,準備手続期日を定め両当事者を呼び出し,争点と証拠を整理する。整理するとは,どの点とどの点を徹底的に争うか,そのためにどのような証拠を出すか,また,どの点は争わないことにするか,をはっきりさせることをいう。準備手続は口頭弁論ではないから公開しなくてよい。争点と証拠の整理の結果は準備手続調書に記載する。準備手続が終われば,口頭弁論に移行する。準備手続を経た口頭弁論においては,当事者は,準備手続で述べなかった主張や証拠を新たに提出することは原則として許されない(旧民事訴訟法255条)。
以上のような旧法が定めている口頭弁論,準備的口頭弁論および準備手続についてはさまざまな問題があって,実務上十分に機能しているとはいえなかった。そこで新民事訴訟法(1996公布,98施行)では,(1)準備的口頭弁論(164条以下),(2)弁論準備手続(168条以下),(3)書面による準備手続(175条以下)という3種類の手続を設けて,審理の促進と充実を図るための規定を整備した。
執筆者:青山 善充+黒田 満
刑事訴訟上は,複雑な事件について,公判の審理を迅速かつ継続的に行うために,裁判所が,第1回公判期日後,公判期日外で,当事者の協力を得て,事件の争点および証拠を整理して,公判期日に備える手続をいう(刑訴規則194条)。第1回公判期日前にも,同様の目的から,訴訟関係人の間で一定の準備行為が行われることがあるが(事前準備--同規則178条の2以下),その場合には,予断防止の意味から,裁判所の関与は,両当事者(検察官および被告人・弁護人)間の連絡を図ったり,準備の進展を促し,または,その状況を問い合わせたりすること(いずれも,その事務は裁判所書記官が行う)や,予断が生じるおそれのない範囲で公判期日の指定その他訴訟の進行に関し必要な事項について当事者と打合せをすることなど,形式的なものにとどまる。これに対し,準備手続においては,第1回公判期日後のことでもはや予断防止の必要がないため,裁判所がより積極的なイニシアティブを行使し,原則として両当事者の出頭を得て,訴因・罰条の明確化,争点整理,計算その他繁雑な事項等の釈明,証拠調べの請求とそれに対する決定等かなり広範な準備的活動が行われる。準備手続には,原則として裁判所書記官が立ち合い,調書を作成する。そして,後の公判期日においては,その調書の朗読または要旨の告知という形で,準備手続の結果が公判廷に明らかにされることになっている。
執筆者:井上 正仁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…他方,被告人・弁護人と検察官,つまり当事者側では,証拠の収集・整理をするとともに,相互に協議して争点を明確にするなどして,審理が迅速かつ適正に行われるように事前の準備を進める(事前準備)。 なお,事件が複雑な場合には,事件の争点および証拠を整理するため,裁判所および両当事者が期日外に会合して協議することもできる(準備手続)。ただし,裁判所が事件の実体にふれることになるので,予断排除の見地から,この協議は第1回公判期日の前には許されない。…
※「準備手続」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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