江戸時代,大坂において菱垣(ひがき)廻船による大坂・江戸間の商品輸送を独占した買次問屋で,大坂二十四組問屋,二十四組江戸積問屋とか,大坂表買次問屋,二十四組買次問屋などともいった。江戸十組(とくみ)問屋の注文に応じて,大坂で江戸積商品を集荷し,この仕入荷物を運送にあたる大坂菱垣廻船問屋に託することを業務とした。その発端は,1694年(元禄7)に江戸の大坂屋伊兵衛が発起人となって江戸の菱垣廻船積合荷主が協議し,江戸十組問屋を結成したが,それに対応して,大坂においても十組問屋が成立した。それが正式に24組からなる江戸積買次問屋として,株仲間を結成したのが,1784年(天明4)である。このとき〈二十四組江戸積問屋定法帳〉を作成し,巻首に株仲間成立の由来を述べ,ついで仲間定法25条を列記して,株仲間として公認された。24組は綿買次積問屋,油問屋,内店組などの問屋からなり,その取扱商品は米,酒をのぞく綿,油,紙,塗物,木綿,薬種,蠟などの菱垣積荷物であった。荷主である江戸十組問屋から3分ないし1割5分の口銭を受け取るほか,出帆前に船頭に運賃の立替払いをする報償として,別に船歩銀と称し,運賃銀10匁につき8分を受け取って運営された。
1841年(天保12)の株仲間の解散によって,全面的に従来の積荷仕法が廃止され,積荷は菱垣,樽両廻船に荷主相対(あいたい)のうえ,便利な廻船に積み込まれることになった。したがってこれまでの廻船仲間や荷主仲間の申合せ,規約も無効となり,海運上の仕法が根本から廃棄された。翌42年に海難事故が起こり,海損仕法を規定したが,従来の大坂二十四組問屋なる荷主仲間機関がないため,その効力と適用に十分な成果をあげることができなかった。そこで46年(弘化3)に,二十四組問屋に代わる九店(くたな)仲間が結成された。九店とは,旧二十四組問屋のなかの綿,油,紙,木綿,薬種,砂糖,鉄,蠟,鰹節の9品を取り扱う問屋商人が連合したもので,残りの荒荷(雑貨類)を取り扱う商人は十三店を結成し,九店仲間に付属することになった。江戸においても旧十組問屋のなかから,大坂に対応して江戸九店が結成され,互いに連絡をとりあっていわゆる九店差配船をその専用船として掌握した。九店差配船は,従来の菱垣廻船問屋と新たに樽廻船問屋によっても仕立てられる廻船で,菱垣,樽両廻船の区別もなくなり,完全に樽廻船が九店差配船として,江戸・大坂間の海運の主力となった。ただし,樽廻船仕立ての場合は,酒荷のほかに荒荷をも積むことができたが,九店仲間差配の場合は,たとえ樽廻船であっても,酒荷の積入れは禁止され,また難破船の海損処理は,九店積合仲間の世話番がこれに当たった。このように,従来の二十四組問屋の機能は,株仲間解散後はこの九店仲間に引き継がれ,その延長上に,1851年(嘉永4)の株仲間再興が発令されたが,依然として樽廻船が仮菱垣,荒菱垣建てと称して,菱垣積荷物を独占していった。
執筆者:柚木 学
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江戸―大坂間の商品輸送において、江戸側の十組(とくみ)問屋と対応しその注文に応じて菱垣廻船(ひがきかいせん)で荷物を送った大坂側の江戸積問屋仲間。1694年(元禄7)10組で組織されたが、のち増加して享保(きょうほう)(1716~36)ごろには24組になった。綿買次積問屋、油問屋、鉄釘(てつくぎ)積問屋、江戸組毛綿仕入積問屋、一番組紙店、二番組紙店、表店、塗物店、内店組、明神(みょうじん)講、通町組、瀬戸物店、薬種店、堀留組、乾物店、安永(あんえい)一番組~安永九番組である。1784年(天明4)株仲間として公認され、取締方、惣行事(そうぎょうじ)、大行事、通路人などの役人を置き、仲間人数は347人にのぼった。江戸―大坂間の取引では、二十四組側がつねに貸勘定で、1841年(天保12)にはその額16万4400両にも達した。このため江戸送り商品は減少し、二十四組問屋も衰えた。
[村井益男]
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近世,大坂における問屋仲間の連合体。江戸向け商品を買い継ぎ,菱垣(ひがき)廻船でこれを積み送る問屋商人によるもので,注文主である江戸問屋の十組(とくみ)問屋結成に対応して1694年(元禄7)10組で結成(大坂表十組問屋)。18世紀以降の拡大により安永年間には24組の構成が確定した。当初は内仲間だったが,1784年(天明4)二十四組江戸積問屋仲間として347株が公認された。1841年(天保12)の株仲間解散令により解散したが,これに代わり海損処理を行うものとして46年(弘化3)に九店(くたな)仲間が設定された。51年(嘉永4)の株仲間再興時に復活,明治初期まで廻漕社・東京積合社などとして存続した。
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