日本の農業の特徴の一つに分散圃場,すなわち同一経営に属する圃場が数ヵ所に分散している状況がある。分散圃場は合理的な農業経営という観点から大きなデメリットになる。しかも今日では農業機械化がいちじるしく進んでいるため,大型機械の稼働能率が低下し,スケール・メリットを十分に発揮することはできないなど,分散圃場のもつ問題はさらに深刻である。こういう状況で,1戸当り経営面積の拡大とともに,圃場区画を大きくし,分散圃場を集団化させることが日本農業の生産力を飛躍的に高める鍵とみなされているが,分散圃場の集団化の手段に交換分合がある。これは各農家が互いに分散圃場を交換し,また必要に応じて農地の合併を行うことによって,土地の利用の合理化をはかるものであるが,面積,土質等の違いから困難を伴うことが多い。日本における最初の交換分合は1835年(天保6)に大原幽学によって下総国香取郡中和村八石(現,千葉県旭市八石)で実施されたものである。現在は,土地改良法(1949公布)によって,土地改良区,農業委員会,農業協同組合などが実施主体となって行えることになっている。土地改良事業を行う際に農地の集団化率が達成課題としてあげられ,政策的に推進されようとしている。
→土地改良
執筆者:岡部 守
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…一定の計画に従い,公共施設の配置を定めるとともに,土地の区画を整理し形質に変更を加え,換地を割り当て,既存の建物を換地に移転したうえで,従前の土地の権利関係になんらの変更を加えることなく,そのまま換地上に移行させる過程をいう。土地の合理的な利用を増進するために,一定地区内の土地の区画,形質を変更し,権利者の意思にかかわりなく,土地の所有権を強制的に交換分合することを内容とする一種の公用負担である。土地区画整理法(1954公布)に基づく土地区画整理事業や,土地改良法(1949公布)に基づく土地改良事業がこの手法によって行われている。…
…公用収用は,公共事業の用に供するために,特定の財産権を強制的に取得するもので,土地収用がその中心である。公用権利変換は,土地の合理的な利用を増進するために,一定地区内の土地の区画,形質を変更し,権利者の意思にかかわらず土地の所有権を強制的に交換分合する手法である。これには,土地区画整理事業にみられるような公用換地と都市再開発事業の場合の権利変換がある。…
…したがってそこに充当された農業資本はより生産的になる。第2の形態は,区画形状の変更による大区画圃場の造成,交換分合による圃場の集団化,農道の整備等により,高性能の農業機械の導入を容易にする土地改良で,これにより農業労働時間は節減され,労働生産性も向上する。この形態の土地改良は,第1の形態とは異なり,農業技術の進歩と結びつくことによって,はじめてその投資効果が期待できる。…
※「交換分合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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