交替式(読み)こうたいしき

精選版 日本国語大辞典 「交替式」の意味・読み・例文・類語

こうたい‐しき カウタイ‥【交替式】

〘名〙 令制で、中央地方官吏交替事務監査に必要な諸規則を集成したもの。「延暦交替式」(八〇三)「貞観交替式」(八六八)「延喜交替式」(九一一‐九二一)などがあり、「新訂増補国史大系」に所収。一般に、式は律令施行細則であるが、交替式の内容には格をふくみ、交替事務管掌の勘解由使一職司の執務内容に限られている。

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デジタル大辞泉 「交替式」の意味・読み・例文・類語

こうたい‐しき〔カウタイ‐〕【交替式】

律令制下、官吏交替の際の諸規則などを集成した法令集延暦交替式・貞観交替式・延喜交替式の3種がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「交替式」の意味・わかりやすい解説

交替式 (こうたいしき)

平安時代初期,内外官の交替に関する規則を集成した法規集。《延暦交替式》《貞観交替式》《延喜交替式》の3種があり,いずれも勘解由使(かげゆし)によって編纂された。奈良時代には,外官(地方官)たる国司の交替に際し,後任の国司が前任の国司から事務引継ぎを受けるに当たって,一種の会計監査を行い,前任国司は解由(げゆ)という監査済の証明書をもらって都に帰任するしくみになっていた。この解由制がしだいに強化されると,国司の交替に際して種々の紛糾を生じ,交替の円滑を欠くようになった。そこで769年(神護景雲3)に国司の監察と争訴の受理とを主たる職掌とする勘解由使という令外官(りようげのかん)が設置されたが,この勘解由使が国司交替の際の事務引継ぎに関する疑義をなくし,勘解由使の勘判の基準を定めるために803年(延暦22)に撰進したのが,《延暦交替式》正確には《撰定諸国司交替式》1巻である。その内容は国司の交替に関する格,勅をそのままの形で引載し,いわば〈格〉的な体裁をとっている。その施行の時期は明らかでないが,時を移さず施行されたと見てよい。その後809年(大同4)に解由の制度は内官(京官)にも拡充され,867年(貞観9)には《貞観交替式》正確には《新定内外官交替式》2巻が撰進され,翌868年に施行された。

 これは先行の《延暦交替式》を土台として,これに追加,加筆する方法で編纂された。上巻は亡失し,下巻のみが現存する。ついで911年にさらに交替式改訂の作業がはじまり,921年(延喜21)に《延喜交替式》正確には《内外官交替式》1巻が撰進された。

 この交替式は体裁も大いに整備され,〈律〉〈令〉〈式〉と同様に〈凡〉字を冠した条文構成をとったものであるが,その施行の年月も明らかでなく,10世紀初頭という時代では,《延喜式》などとともに,どの程度の実効力を有したかは疑問である。《貞観交替式》上巻を除く3交替式は《新訂増補国史大系》に所収。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「交替式」の意味・わかりやすい解説

交替式
こうたいしき

律令制(りつりょうせい)下において官人や役僧の交替に際し、事務引継ぎ・責任規定などを集成したもので、『延暦(えんりゃく)交替式』『貞観(じょうがん)交替式』『延喜(えんぎ)交替式』の三つがある。『延暦交替式』は正式には『諸国司交替式』と称し、国司が交替する際の疑義をなくすること、勘解由使(かげゆし)の勘判の基準を定めることの二つを目的として、勘解由使によって撰定(せんてい)された。編纂(へんさん)者は菅野真道(すがののまみち)、和気広世(わけのひろよ)、讃岐千継(さぬきのちつぐ)、賀茂立長(かものたつなが)らで、803年(延暦22)の成立。41か条からなる。式と称するが実際には格(きゃく)の体裁をとり、国司の交替に関係のある格を分類配列しており、条文に問題のある部分には「今案」を付して法として明確にしている。『貞観交替式』は正式には『新定内外官(ないげかん)交替式』という。もとは上下2巻であったが、下巻のみが現存している。上巻を欠くので編纂者や成立年代は明らかではないが、同じく勘解由使官人によって編纂されたもので、その中心となったのは南淵年名(みなぶちのとしな)、家原氏主(いえはらのうじぬし)らで、867年(貞観9)の成立と考えられる。内容は『延暦交替式』を増補したもので、内外官の交替に関係のある格を分類配列し、『延暦交替式』の「今案」に対して「新案」を付す。『延喜交替式』は『内外官交替式』と称し、921年(延喜21)の成立。橘澄清(たちばなのすみきよ)、平伊望(これもち)らの勘解由使官人が中心となって編纂。これも『貞観交替式』を増補したものであるが、前の2交替式と異なり、格の体裁を改め、条文化して192条としている。また新たに役僧の交替に関する規定が設けられた。

[福井俊彦]

『早川庄八著「延暦交替式・貞観交替式・延喜交替式」(『国史大系書目解題 上巻』所収・1971・吉川弘文館)』『福井俊彦著『交替式の研究』(1978・吉川弘文館)』

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百科事典マイペディア 「交替式」の意味・わかりやすい解説

交替式【こうたいしき】

平安時代初期,外官(げかん)(地方官)・内官(ないかん)(京官)の交替に関わる法令などを集成した法規集。国司の交替時の監察等に当たる勘解由使(かげゆし)により編纂され,〈延暦交替式(えんりゃくこうたいしき)〉〈貞観交替式(じょうがんこうたいしき)〉〈延喜交替式(えんぎこうたいしき)〉がある。〈延暦交替式〉(正式名称は撰定諸国国司交替式)1巻は803年の撰進。国司の交替に関係する格(きゃく)などをそのまま収める。〈貞観交替式〉(正式名称は新定内外官交替式)2巻は867年撰進,868年施行。〈延暦交替式〉に追加する形で編纂され,在京諸司についても扱う。上巻は散逸し下巻のみ残る。〈延喜交替式〉(正式名称は内外官交替式)1巻は911年編纂開始,921年撰進。内容は192条の〈凡〉で始まる条文に改められている。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「交替式」の解説

交替式
こうたいしき

律令制下において,官人の交替に際しての規定を定めた法令集。「延暦交替式」巻末の奏文によれば,奈良時代にすでに国司の交替に関する勅書・官符・省例・問答などを集めた交替式という私撰の書があったという。官撰のものとしては「延暦交替式」が最初で,以後「貞観交替式」「延喜交替式」が撰定された。延暦の式は国司のみの,貞観・延喜の式は京官・外官の交替に関する法令集となっている。

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