魚介類のすみ場となる海中構造物のことで,大きく分けて海底に構造物を設置する沈設型のものと,海中に構造物を係留する浮き魚礁型のものがある。沈設型の魚礁には,コンクリートブロック魚礁,投石魚礁のように単体礁を海中に投入して積み上げる形のものと,コンクリート板や鋼材,FRP(強化プラスチック),ポリエチレン,古タイヤなどを一定の形状に構成(成型)する組立魚礁および沈船魚礁,古車魚礁がある。浮き魚礁には浮体を鋼材などでつくり,これを1点または多点係留するものがあるが,試用段階にある。これまでの人工魚礁は,集魚を目的とした施設,つまり副漁具的な性格が強く,一本釣漁法を主体に利用されてきたが,近年は刺網などの網漁業にも使われるようになっている。また漁獲強度の強い底引網や巻網からの漁場の保護の手段として使われる場合や,産卵場の造成など育成礁としての役割をもたせる場合もある。
魚の魚礁利用の形態は次のように分類される。(1)A型 表・中層などで魚礁の上部に滞留するもの。アジ類,ブリ類,カマス類,ボラ,スズキ,サバなど。(2)B型 魚礁にごく接近または内部に入るもの。イサキ,ベラ類,カワハギ類,イシダイ,メバル,クロダイ,メジナ,カサゴ,アイナメ,ハタ類,イボダイ類,ウナギ,アナゴ,ウツボ,ギンポなど。(3)C型 魚礁付近の海底または海底近くにいるもの。マダイ,カレイ類,ヒラメなど。つまり,魚は魚礁があれば,それに対してなんらかの定位行動をとる。魚礁に集まる理由としては,魚礁の陰影効果,餌料効果,渦流効果,逃避場効果などがあげられる。
人工魚礁の始まりは,1795年(寛政7)ころに淡路島の漁師が沈船のある場所で網を引きコショウダイを大漁したが,その後7~8年経って魚がとれなくなったので,木枠をつくり土俵を入れ,樹木などをつけて沈めたところ,以前の数倍の漁獲をあげたという故事に端を発したとされている。人工魚礁が国の補助対象となったのは,1952年に瀬戸内海の底引網の減船対策として築磯(つきいそ)事業が実施されたことに始まる。54年には,この築磯事業は魚類を対象とする人工魚礁と魚類以外を対象とする築磯に分けられ,初めて人工魚礁という用語が公式に誕生した。その後,沿岸漁業振興総合事業,第1次および第2次沿岸漁業構造改善事業の中でこの事業が進められてきたが,76年からは主として沿岸漁場整備開発事業の中で公共事業として行われることになった。この事業による人工魚礁設置事業は,並型,大型および人工礁漁場造成事業の三つに大別される。並型は共同漁業権漁場の区域内に設置されるもので,規模はおおむね400m3となっている。大型は,原則としては共同漁業権漁場の区域の外側に設置され,規模はおおむね2500m3である。並型および大型は天然礁および既存漁場の補完・拡充を目的としている。これに対し人工礁は,天然礁に準ずる礁を設けて,新しい漁場を造成しようとするもので,規模はおおむね5万m3で,水深50~150mの未利用の沿岸深部水域に設置されている。なお,近年外国でも関心がもたれはじめている。
執筆者:本間 昭郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
水生生物の生育場所をつくる目的で、各種の資材を海底に沈めてつくった隆起部をいう。これは、海底から隆起した堆(たい)や岩礁などの天然礁に魚が集まる性質に着目し、生産性の低い砂泥質の海底に、自然石、廃船やコンクリートブロック、その他の資材を沈めて人工的に魚礁をつくり(築磯(つきいそ)ともいう)魚介類の生育を図ることを目的としたものである。
[吉原喜好]
…大和堆(やまとたい),北大和堆という二大魚礁を含む数列の構造性魚礁が日本海には北海道から朝鮮海峡にかけて分布するが,太平洋岸では構造性魚礁の分布は局地的に散在する。 なお人工的に資材を投入して海底隆起をつくることもあり,これを人工魚礁という。【清水 誠】。…
…(4)岩面造成 岩面にコンクリートを塗って凹凸をなくしたり,藻類の着生しやすい岩を岩面に固定したりして,イワノリやフノリなどの有用藻類の着生しやすい環境を人工的に造る。(5)人工魚礁 沈没船の周囲に魚などが集まって新しい漁場ができることは漁民が古くから気づいていたことで,これを積極的に行ったものが人工魚礁であり,その歴史は古い。人工魚礁の素材は土俵,岩石,廃船,コンクリート工作物などさまざまである。…
※「人工魚礁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新